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「どうする空き家」(くらし☆解説)

清永 聡  解説委員

全国で空き家が増え続けています。2033年には住宅のおよそ3割が空き家になるという予測を民間の研究所がまとめました。
増え続ける空き家をどうすればいいのか。新たな法律やNPOの活動から必要な取り組みを考えます。

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【将来は3軒に1軒は空き家に】
全国の空き家は30年前の2、5倍に増加し、現在の空き家率は13、5%に上っています。「野村総合研究所」が行った予測では、今後活用や解体が進まなければ2033年には2166万戸とさらに2倍以上になり、住宅の30、4%が空き家になる計算です。

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空き家率3割というのは、自分の暮らす家の両隣はどちらかが空き家ということです。
これだけ空き家が増えるのは、子供が実家を出て都市部に新しく自宅を作ることや、自宅を残したままマンションや施設などに入る高齢者が多いことなどが主な理由です。

【空き家法で強制的に撤去も】
Q:実家などを空き家にしている人は少なくないと思いますが、そのまま放っておくとどうなるのですか。

A:一昨年、新しい法律が全面的にスタートしました。放置されて危険な空き家などを市町村が「特定空き家」と判断します。自治体から撤去や修繕を求める「勧告」を受ければその不動産は固定資産税が引き上げの対象となるほか、従わなければ強制的に撤去される可能性もあります。
5月には群馬県下仁田町で空き家の強制撤去が行われました。代執行を宣言して住宅を取り壊します。自治体による代執行での取り壊しは、所有者が判明すれば、撤去にかかった費用がその人に請求されます。

【撤去には自治体も消極的】
Q:空き家を持っている人からすると、一方的に壊せと言われても困る人もいると思います。

A:持ち主からすれば、まず、多額の撤去費用がかかります。しかし、更地にしてもそれだけでは使い道がありません。しかも建物がなくなればやはり、固定資産税が高くなります。つまり壊すことのメリットが見いだせないと考える人もいるでしょう。
一方で自治体からすれば、景観を損なうほか、倒壊や火災など、防災上の問題も大きくなっています。さらに、相続登記がされないままで、所有者が分からない不動産が増えていることも、自治体を悩ませています。

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今年3月までに1700を超える市町村などのうち、固定資産税引き上げの対象となる「勧告」を行った自治体は5%。「略式代執行」を行った自治体はおよそ2%でした。法律はできても実績はまだ広がっていません。
日弁連が去年、自治体に代執行を躊躇する理由をアンケート調査しています。「費用回収の見込みが低いこと」や「経験がないこと」、そして「後からトラブルになるのを心配している」ことなどが理由だったということです。
ただし、今後、対策を進めていくとしている自治体もありますから、指導や勧告、そして代執行の件数は増えていくと見られます。

【空き家は活用を】
Q:「特定空き家」にならないためにはどうすればいいのですか。

A:売却しないなら、まずは近所の迷惑にならないよう、定期的に管理をして、建物を危険な状態にしない、そして衛生的に問題がないようにすることなどが大切です。
その上で、使える空き家はできる限り、活用すべきです。今、古い空き家を次々と再生し、全国的にも注目されている取り組みがあります。

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広島県尾道市は人口およそ14万人。坂のある歴史的な町並みが有名です。一方で車が入れない場所も多く、空き家の割合は18%と全国平均を超えています。

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ここでは、NPOの「尾道空き家再生プロジェクト」が古い建物の魅力を伝える活動を進めています。代表理事の豊田雅子さんたちは空き家をよみがえらせる取り組みを続けています。こちらはかつて洋品店でした。今はNPOの事務局と雑貨店に生まれ変わりました。

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こちらは大正時代に別荘として作られた建物です。NPOのメンバーや市民、そして支援する人たちが大規模な修復作業を行い、去年「みはらし亭」として再生しました。建物は有形登録文化財で、1階はカフェ、2階はゲストハウスになっています。
市内を一望できる趣ある建物に安い価格で宿泊できるのが魅力で、特に外国人観光客の人気を集めています。
古い建物の再生は今も続いています。駅の裏にあった旅館の50畳の大広間をイベント会場にする計画です。猛暑の中、NPOのメンバーが作業をしていました。

【空き家バンクと生活支援】
豊田さんたちは、もともとは尾道市が始めていた「尾道市空き家バンク」を市と共同で再スタートさせました。

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空き家を持っている人がバンクに登録して、NPOと尾道市が仲立ちします。これまでに83世帯で契約が成立したということです。およそ半分が20代と30代の若者です。お店を始める人も多く、それが町に新たな魅力を生んでいました。

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「尾道空き家再生プロジェクト」のメンバーで漫画家のつるけんたろうさんが作った「手引き書」です。イラストの入ったカルタのようになっていて「虫が出ること」や「階段が多く不便なこと」など空き家や生活のデメリットも知らせた上で、「地域の活動にできるだけ参加すること」などを呼びかけています。NPOは定期的に生活や移住の相談会も開いています。こうした、きめ細かな支援と地域を一緒に支えるという意識が、地元の協力を得ることにもつながっていると思います。

Q:空き家を持っている人の中には、家財道具が残っている、とか、人に貸すにはリフォームが必要だという人もいると思います。

A:お金をかければその分を家賃などで回収する必要が生じます。このため、豊田さんたちは家財道具がそのまま、あるいは建物が壊れていても、自分たちで片付けやリフォームも行っています。初期費用をかけない分、家賃や譲渡価格を安くしてもらうそうです。

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持ち主のほとんどが、若い人が入って生まれ変わった家を見て喜んでくれるそうです。豊田さんは「空き家は資産です。できるだけ活用してほしい」と話していました。

【新築重視から既存の活用へ】
Q:こうした取り組みは尾道という歴史的な街だからできるんじゃないでしょうか。

A:確かに、街の魅力も若い人を呼ぶ理由です。ただ、それだけでは人は集まりません。成果を上げている最大の理由はやはり、豊田さんたちNPOによる積極的な取り組みと、尾道市によるサポートだと思います。
空き家を再生させようという取り組みは今、全国各地で行われています。また「空き家バンク」を設ける自治体も全国で増えています。
ただ、特に過疎化が深刻な地域や、かつては新興住宅地でも都市部から離れて交通の便が極端に悪いところなどは、新しい人を呼び込むことがなかなか難しくなっています。増え続ける空き家に歯止めをかけられないことが課題です。

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Q:空き家を持っていてこれからどうすべきか迷っている人は、どうしたらいいでしょうか。

A:多くの都道府県や市町村に、空き家に関する相談窓口が設けられています。貸し出すか、解体するか、あるいは今のまま維持管理すべきか、売却するか。まずは相談してみるといいと思います。

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戦後、日本の住宅政策は長い間、土地を切り開いて、新しい家を建てることに重点が置かれていました。
しかし、これからは高齢化と人口の減少が続きます。「まちづくり」という視点を大切にして、今ある住宅をできるだけ活用することにも、積極的に取り組む必要があると思います。

(清永 聡 解説委員)

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