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「ロボカップ20年 ロボットは社会をどう変える?」(くらし☆解説)

土屋 敏之  解説委員

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◆7月27日~30日まで名古屋市で開かれたロボカップ2017。世界の研究者によるロボットと人工知能技術の国際競技会。二足歩行やタイヤで動くロボットがサッカー競技などを行った。

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ロボカップはサッカーだけでなく現在は大きく5つの競技部門に広がっていますが、元々はサッカーのワールドカップになぞらえたもので、「2050年までに人間のW杯チャンピオンチームに勝てる、人型ロボットチームを作る」という目標を掲げて始まりました。そのロボットも人が操作するのではなく、自分で判断して動く自律型ロボットというのがポイントです。ロボカップは日本の研究者たちが発案しました。
   
◆なぜサッカーなのか?

第1回大会は1997年に同じ名古屋で開かれましたが、この年、チェスの世界チャンピオンに人工知能が勝利しました。当時、人工知能研究は何を次に目ざすべきか専門家の間で議論になっていて、同じ頭脳ゲームの将棋や囲碁も挙がりましたが、他に挙げられたチャレンジが人工知能でロボットという言わば体を動かして行う、集団スポーツでした。
特にサッカーは世界的に人気がありますし、世界チャンピオンに勝てるようなロボットを作るには、素早い動きや正確な状況判断、他のロボットとの連係など多様な技術的要素が必要です。それを実現できればサッカーに留まらず社会の様々なニーズに応えるロボットができる、ということで技術の進歩のバロメーターになると考えられました。
     
◆当時のロボットのレベルと現在のロボットのレベルは?
    (VTR)
20年前は人型ロボットはほとんど実用化されていなかったため、サッカー競技は事実上車両型に限られていました。両チームともロボットが動けなくなって試合が展開しない、といったこともありました。
これに対して、20年後の今大会の決勝戦(*サッカー中型)では、中国とオランダの研究チームが対戦し、見事な動きを見せました。オランダのチームは巧みにパスをつなぐサッカー。対する中国のチームは相手ボールの時は2台のロボットが連携して守り、ボールを奪ったら素早くシュートにつなげていました。しかもこうしたロボットを人間が操作しているわけではありません。人工知能が自ら状況判断し、ロボットカメラで敵味方を画像認識して、味方ロボットと通信で連携して動きます。結果は中国チームが優勝し、人間とエキシビジョンマッチもしました。人間側はサッカー選手ではなくロボカップを主催する国際委員会の人たち、つまりベテランの科学者の皆さんですが、人間だけでなくロボットもゴールを決めて会場は大いに盛り上がりました。
こうした車両型の他に、2002年からは人型ロボットのサッカー競技も始まっています。こちらはまだ発展途上です。ただ、人工芝を歩いてボールを蹴ってゴールに運ぶという基本は出来るようになってきましたので、専門家たちは2050年に世界チャンピオンに勝つという目標は達成できると予想しています。
    
◆ロボカップは毎年行われている?

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毎年世界のいずれかの国で開かれて規模も拡大しています。第一回は11か国の参加でしたが、今回は12年ぶりの日本開催で42か国から400チーム近い参加がありました。日本は強豪国の一つで今回も優勝した種目もありますが欧米や中国のレベルも上がっています。
 競技の種目も増え、サッカー以外にレスキュー部門や@ホームといったより実用的な技術を競う部門も出来ました。

◆@ホームやレスキューはなにを競う?

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@ホームは家庭で役立つロボットの競技です。色々な課題が用意され実施できるかどうかで採点されますが、例えば人が声でタマネギを持ってくるよう指示すると、ロボットは音声認識でこの指示を理解し、画像認識で目的のものを探します。そして、棚の中にあるのを見つけて、それをつかんで運ぶ、といったものです。
レスキュー部門は災害現場で調査や救助活動に役立つロボットです。例えばがれきに見立てた凸凹のフィールドを走破して、様子を撮影したり被災者を捜したりする課題が与えられます。また建物のドアを開けたり、蓋を開閉するといった課題もありました。このレスキュー部門で以前優勝した日本の研究者たちが、その後2011年に東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きた際、内部の調査に使われたロボットを開発しました。ロボカップで磨かれた技術は既に実際の災害現場で役立つようにもなっています。
      
◆ジュニア部門とは?

ジュニア部門は19歳以下の少年少女に限定された競技部門です。ロボカップのもう一つの目的は次世代の研究者・技術者を育てることにあり、2000年から始まりました。各国の子供たちが競技で競い合うことに加え、ロボット作りを通して国際交流する場にもなっています。
      
◆2050年には今ジュニアの選手達が世界チャンピオンに勝つロボットを作る中心にもなるかも

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一方で人間に勝つことは最終目標ではなく、あくまで技術進歩の目安に過ぎないとも言えます。今大会までロボカップ国際委員会の会長を務めた野田五十樹さんは、人を負かすロボットを作るより人と一緒にプレーできるロボットを生み出したいと言います。世界チャンピオンを上回るロボットが作れるようになれば、人間にあわせてプレーしたり人間をサポートできるロボットも可能になるはずです。
これはサッカーだけのことではなく、家庭やオフィス、災害現場など様々な場で人間を適切に支えて共に働くようなロボットを意味します。そうした役割を今後のロボット開発に期待したいと思います。 
(土屋 敏之 解説委員)

 

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