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「安倍内閣と国民の視線」(くらし☆解説)

島田 敏男  解説委員

★今月2日に行われた東京都議会議員選挙の後、最初のNHK世論調査がまとまりました。全国の人たちが、今の安倍内閣をどう見ているかが今回のテーマですね?

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◇はい。東京都議会選挙で自民党が大敗した結果も見ながら、全国の人たちが今の政治をどう受け止めているのか。この点を探っていきましょう。

★まず、安倍内閣の支持率ですが、かなり下がったようですね?

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◇支持すると支持しないが逆転しました。安倍内閣を支持するは先月より一気に13ポイント下がって35%、支持しないは12ポイント上がって48%でした。
◇4月から電話調査の方法が若干変わったので単純に比較できないのですが、支持率が35%というのは、安倍さんが2度目の総理大臣に返り咲いた後、最も低い水準です。

★支持すると支持しないが逆転したのは、いつ以来ですか?

◇おととし8月に、あの安保関連法を巡って大きな議論が沸き起こっていた時以来です。
◇この支持と不支持の逆転ですが予兆はありました。ことし3月から支持するが減少し、支持しないが増えるという傾向が徐々に出始めていました。
◇ちょうど森友学園を巡る問題報道が激しくなっていた時期で、それに続いて加計学園を巡る問題も話題になり始めていた頃です。
◇しかしそうした問題の浮上だけはなく、3月は政治の大きな節目の時期だったんです。

★政治の大きな節目と言いますと?

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◇3月5日に自民党大会が開かれて、こちらにあるように自民党の総裁任期を、これまでの連続2期6年から連続3期9年までに延長することが正式に決まりました。
◇これによって、来年9月の自民党総裁選挙で安倍さんが3選され、来年の12月までに行われる次の衆議院選挙で勝利すれば、2021年9月まで総理大臣を続けることが可能になるルール変更があったわけです。

★まさに安倍長期政権ということになりますね?

◇実現すればウルトラ長期政権で、戦後一番の長期政権だった佐藤内閣を軽く超えます。
◇しかし、その可能性が生まれた副作用で自民党内から自由な議論が消えてしまいました。
◇当の安倍総理は長期政権で目指す課題として元々の持論の憲法改正を高く掲げるようになり、消費税率引き上げと社会保障制度の改革を巡る議論などは先送りの気配です。

★次第に国民の気持ちや考えから離れ始めたんでしょうか?

◇そうした傾向が、3月ごろから内閣支持率の微妙な変化に現れていたと思います。
◇そしてそれが、こちらの政党支持率にも現れてきています。

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★自民党の政党支持率が30.7%で「自民1強」は変わっていないようですね?

◇そうなんですけれども、グラフを見ると大きな変化が出てきているんです。
◇自民党の支持率も3月から下降傾向を見せ始めて、先月から今月にかけては6ポイント近くも下がりました。同時に、野党第1党の民進党も先月より支持率を下げています。
◇その一方で「特に支持する政党はない」と答えるグレーラインの無党派の人たちが増え、全体に占める割合が47.0%に上りました。
◇先の東京都議会議員選挙で躍進した「都民ファーストの会」を支えたのも、こうした無党派の人たちでした。

★その都議会議員選挙の結果を、全国の皆さんはどう受け止めたんでしょう?

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◇全体の46%、ほぼ半数近くが良かったと答えています。
◇野党支持者と無党派層では、自民党敗北を良かったと受け止める人が多数を占めていて、与党支持者ではどちらともいえないという複雑な受け止めの人が多くなっています。
◇ただ、与党支持者でも良かったと答えた人が3割以上いまして、「今後に向けて、全国の自民党に警鐘を鳴らしてくれた」という前向きなとらえ方もあるようです。

★都議会議員選挙の期間中には、閣僚の問題発言もありましたよね?

◇稲田防衛大臣が選挙の応援演説で「防衛省、自衛隊としてもお願いしたい」と発言して、野党側が自衛隊の政治利用だとして辞任を求めています。
◇稲田大臣は発言を撤回していますが、辞任は否定しています。

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◇これに対し世論調査では、大臣を辞任すべきが56%で、辞任する必要はないを大きく上回っています。
◇詳しく見ると与党支持者、野党支持者、無党派層のいずれでも辞任すべきが一番多く、野党支持者が特に厳しい視線を向けています。

★ただ、国民が一番疑問に感じているのは加計学園を巡る問題での、安倍総理自身の説明ではないですか?

◇その通りです。加計学園の獣医学部新設を巡る問題について、安倍総理は「行政がゆがめられたことは一切無い」と説明しています。

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◇しかし、これに納得できるは全体の19%で、73%が納得できないと答えています。
◇野党支持者、無党派層では8割以上が納得できないと答え、与党支持者でも6割が納得できないと厳しい反応を示しています。

★きのうも国会の衆参両院で、この問題を巡って参考人質疑が行われましたね?

◇前川・前文部科学事務次官は「学部新設の決定に総理官邸の関与があり、行政プロセスがゆがめられた」と主張し、証人喚問の要請にも応じる考えを示しました。

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◇野党側が臨時国会の早期召集を求めているのに対し、政府・与党は必要ないという姿勢ですが、世論調査では速やかな召集必要が47%と半数近くに上りました。
◇安倍総理や自民党幹部は、来月早々に内閣改造と党役員人事を行って態勢を立て直したい考えですが、それで国民の納得が得られるかは疑問です。

★やはり加計学園の問題は簡単ではないですね?

◇国家戦略特区という新しい仕組みを使って、真っ先に恩恵を受けたのが総理大臣の親しい友達だったという点に、国民は釈然としないものを感じています。
◇これを解消するには、過去に例のない徹底した調査を行って具体的な問題点を探り出し、安倍総理自身が謙虚な姿勢で国民に説明することだと思います。口先だけではだめです。

★最後になりますが、安倍総理は憲法改正を相当急ぎたいようですね?

◇先月下旬の講演で、秋の臨時国会の終わりまでに自民党としての憲法改正案を衆参両院の憲法審査会に提出したいと表明しました。

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◇これについて聞いた結果は評価するが36%で、評価しないが52%で過半数でした。
◇野党支持者と無党派層では評価しないが6割から7割を占めていて、あまりに拙速だという批判が強いことが分かります。
◇一方、与党支持者では6割が評価すると答えていて、自民党の党是だから議論は進めるべきだという声が根強いことも分かります。

★この問題はどうなるんでしょうか?

◇必要な憲法改正は行うべきだと考える人は、この30年近くで次第に増えています。
◇しかし国の基本に関わる問題ですから、数の力で押し切るのでは与党の公明党も反対し、無党派層の反発を生むだけだと思います。
◇憲法改正の手続きを定めた国民投票法を成立させた時の「より幅広い合意形成が改正の基本だ」という考え方を大切にする必要があると思います。

(島田 敏男 解説委員)

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