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「駆け込み急増! どうなる ふるさと納税」(くらし☆解説)

竹田 忠  解説委員

ふるさと納税の額が、過去最高を記録しました。
でも、いろいろとひずみも生まれているようです。
どうなる、ふるさと納税。担当は竹田忠 解説委員です。

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平成28年度のふるさと納税の寄付額が発表されました。
前年度より1200億円増えて、2800億円に達し、4年連続で過去最高を更新しました。

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1年前と比べると、27年度は4倍、28年度は1点7倍に膨れ上がり、急拡大が続いています。

《 なぜ、こんなに増えているのか? 》
ふるさと納税といえば、お礼の豪華な返礼品。
やらないと損、というイメージが広がっていることが大きいと思います。

そして、もうひとつ、今回は特別な要因がありました。
それが、総務省が今年4月、各自治体に対して、返礼品を見直すよう要請したことです。
この見直しを求める動きは、実際に要請が行われる前から、何度も報道され、それを見た人たちが、急がないとお得な返礼品がなくなってしまうと、駆け込み的にふるさと納税に走ったことが大きいと見られています。

《 なぜ、見直す必要があるのか? 》
そもそも、ふるさと納税というのは、
自分の出身地など、ゆかりのある自治体を応援してもらおうという制度です。
具体的には、今、自分の住んでいるところに収めている税金のうち、その一部を、「寄付」という形で、好きな自治体に納めてもらおうというもの。

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たとえば、今、都会に住んでいる人が、一万円を地方の自治体に寄付をする。
すると、今や多くの自治体は、お礼として、返礼品を送るようになっている。
問題は、その返礼品の額なんです。
平均では、だいたい寄付の4割程度なんですが、多いところでは7割とか8割になるものがある。
その上、もともとの寄付の1万円についても、この人が実際に負担しているのは、2000円だけで、残りはすべて、いつも払っている税金からひいてもらえるんです。
つまり、この人は、2000円の負担で8000円の商品を手にすることになる。

なぜ、こんなことができるかというと、住んでいる自治体に払うべき税金が、寄付にかわり、返礼品に化け、結局、その人に還元される。
つまり、事実上、減税が行われているわけです。

《 まず、好きな自治体にふるさと納税をする。すると、返礼品がもらえる、
という説明は、実際は順序が逆なのでは? 》

その通りだと思います。実際は、まず、パソコンやスマホでふるさと納税のサイトを見て、欲しい返礼品を探す。

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あれば、その購入代金のかわりに寄付をする、ということで、事実上、ネットショッピングと同じです。
しかも、寄付のお金は、税金から出ているわけです。

《 ふるさと納税については、他にも課題が指摘されているが? 》
主に二つのことが指摘されています。
ひとつは、金持ち優遇ではないか、というもの。

というのも、、ふるさと納税は、所得の高い人ほど、たくさんの寄付を、税金からひいてもらえるんです。

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これが、その一覧です。
共働きの夫婦と大学生のこども一人の家庭の場合、
収入が400万円の場合、
税金で全額ひいてもらえるのは2万9千円まで。
一方、2500万円の収入がある場合は、82万円あまりまで、税金から全部ひいてもらえる。
で、いずれの場合も。自己負担は2000円だけですむんです。
お金のある人ほど、得をする制度だと批判があがっています。

もうひとつは、都市部の自治体で、税収が大幅に減っていることです。
ふるさと納税は、基本的に、都会に払う税金の一部を、地方に寄付として移すわけですから、当然、都市部の税金は減ります。

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ただ、これだけ減るのは想定外だと思います。
この税収減は、国が後で補填することになる(東京は除く)ので、また、税金が使われることになる。
こうしたことから、ついに、総務省が今年4月、返礼品の見直しを要請したわけです。

《 具体的に何を求めているのか? 》
具体的には、まず、

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▽返礼品の額は、寄付額の3割以内にすること。
もうひとつは
▽換金性の高いものや高額のものは返礼品にしないように。
という2点です。

具体的には、家電製品や、パソコン、商品券などで、こうしたものはオークションで転売されている例が多発しています。
こうなると単なるキャッシュバックと同じということになる。

《 自治体側の反応はどうか? 》
ふるさと納税が貴重な財源になっている自治体からは反発もあがっています。

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▽自治体の自主性がそがれる、
▽返礼品の発注で、せっかく地場産業が活性化しているのに、簡単にやめるわけにはいかない、
などという声も上がっています。

総務省の要請が行われた当初は、100程度の自治体が、見直しに消極的な態度を示していて、現在もおよそ20の自治体が、見直しに慎重な立場をとっているということです。

《 今後、ふるさと納税はどうなる? 》
総務省の要請はお願いであって、強制力はありません。
ただ、総務省は応じてもらうまで、しつこく要請を繰り返すとしていて、高額な返礼品というのは、かなり減っていくと思います。

しかし、返礼品の額が下がっても、基本的な問題である、都市部の税収の落ち込み、という問題は、解決できない。
やはりここは、寄付の額をすべて税金からひく、というのはやめて、せめてひくのは半額まで、というように制限すべきだと思います。

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その上で、自治体の側にも、新たな動きが出ています。
返礼品という「モノ」で、寄付を集めるのではなく、「事業」とか、「政策」であつめる。

たとえば、群馬県前橋市は、児童擁護施設を退所したこどもたちの住宅費の補助にあてると表明しています。

また、北海道の函館市。
ここは自治体として、対岸の青森県大間町で建設中の原発の差し止め訴訟を起こしているんですが、その訴訟費用にふるさと納税をあてると表明したところ、2ヶ月で1000万円以上の寄付が集まったということです。

応援したい自治体をサポートする、というふるさと納税本来のありかたとして、注目される動きだと思います。

(竹田 忠 解説委員)

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