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「村議会がなくなる?」(くらし☆解説)

安達 宜正  解説委員

きょうのテーマは「村議会がなくなる?」。担当は安達宜正解説委員です。東京では都議会議員選挙の予定候補の活動が活発になっていますが、地方では議会がなくなるかもしれない村があるというのが、きょうのテーマですね。

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安達)まさに都市と地方の格差です。さきほど流れた曲「sexyzone」は世界にはいろんな国があって、それぞれ違う夢があるという曲ですが、日本でもいろいろな町や村があります。議会がなくなるかもしれない村は高知県の大川村です。四国のど真ん中。四国山地の山間。1000メートル以上の山に囲まれていて、離島を除いて、日本一人口の少ない村です。山手線の内側のおよそ1.5倍の面積に人口はおよそ400人。有権者は350人ですが、65歳以上の高齢者が4割を超えています。この村で議会を廃止し、「町村総会」の導入が検討されています。岩淵さんは「町村総会」って聞いたことありますか。

岩淵)言葉ぐらいは。

安達)地方自治法94条。「町村は議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる」とあります。

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僕たちの町では通常、選挙で選ばれた議員が政治を行います。その議会が行政に対するチェック機能、住民の声を反映させるパイプ役を果たしています。

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しかし、大川村はこの議会をなくし、有権者が一同に会して、予算や条例などを審議する制度を検討しています。

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岩淵)どうして検討が始まったのでしょうか。

安達)議員のなり手がないからです。大川村議会は定員6人。議員の平均年齢は70歳を超え、しかもその半数が75歳以上・後期高齢者です。このところ、引退したいとしている議員もいますが、後継者がなかなか決まりません。なぜ、議員のなり手がいないと思いますか。

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岩淵)議員に立候補するのはハードルが高いですよね。

安達)議員は自分たちと違う存在という意識的なハードルは確かにあります。加えて、より現実的な理由。大川村の▼議員報酬。月額およそ15万円。▼引退後の保障もありません。現役世代の方とか、若い人でも意欲のある人もいるにはいますが、それだけでは生活ができないと言う理由が大きいようです。

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岩淵)安達さんはどうすればいいのと思いますか。

安達)どこまで有効はわかりませんが、少なくとも今よりも減らさないようにするには2つほど考えられます。1つは議員報酬を増やすこと。もう1つは夜間議会や休日議会です。まず議員報酬ですが、例えば東京都議会議員の報酬。現在2割減の措置がとられていますが、それでもボーナスを含めて、年間1372万円です。月額81万円。もちろん、大川村でこんなに報酬を引き上げられるわけはありませんし、比べるのもおかしいかとは思いますが、北海道浦幌町。人口およそ5000人の町、現在、議員報酬を月6万円増やして、およそ23万円への増額が検討されています。議員のなり手が少なく、前回の町議選では欠員が出たことが理由です。

岩淵)もう1つ。夜間議会や休日議会。これは可能なのでしょうか。

安達)決めれば可能です。 日本の場合、平日の昼間に議会を開きますが、代表的なのはスウェーデン。夕方から議会が始まりますから、ほかに仕事を持っていても、議員になることは可能です。高校や大学に通いながら、議員をつとめる人もいます。もっとも、報酬も公的な会議に出た場合、時給のような形で支払われるので、それだけでは生活できないのが実情でもあります。

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岩淵)それは参考になりますね。

安達)日本でも試みはあるにはあります。ただ、住民が傍聴に来やすくするための取り組みになっているところが多いようです。立候補しやすい環境を作って、それでも、それでもなり手がいないならば、「町村総会」も1つの考え方かもしれません。

岩淵)率直な疑問ですが、候補者がいないなら、もっと議員の数を減らすとか、ほかの村と合併すればいいのではないでしょうか。

安達)一つの考え方としてはあります。ただ議員の数をどんどん減らして行くのでは、民主主義のあり方とどうなんだろうかと。極論すれば村長さんと議員1人でいいという話になります。それでチェック機能が果たせるのか、多様な民意を反映できるのかと。合併も大川村も検討したことがあるようですが、合併するとさらに地域の過疎化が進む例もあります。役場が残る村はいいですが、役場や学校なども一つになって、中心街が廃れてしまうという例もありますからね。

岩淵)なるほど難しいですね。ところで町村総会は過去に例があるのでしょうか。

安達)1つだけあります。昭和26年から4年間。東京・八丈小島の旧宇津木(うつき)村。ただ記録はあまり残っていません。それはそうと、この町村総会を大川村に導入するとなると多くの課題があります。これ、地方自治法95条。「町村総会に関しては議会に関する規定を準用する」とあります。地方議会は議員の半数以上が出席しなければ成立しません。それを準用することになりますから、町村総会も有権者の半数以上の出席が成立の条件です。

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岩淵)住民の半数の出席はたいへんですね。

安達)大川村は山間地にあって、15程度の集落が点在していますから、1つの場所に集まるとしても、移動手段をどうするのか。しかも高齢者が多く、介護が必要な方とか、病を抱える方も多いようですからなおさらです。

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ただ、先日、この問題に詳しい政治学者と議論したのですが、地方自治法が想定していた町村総会はもっと積極的な役割が期待されていたのではないかと話していました。

岩淵)積極的な役割というのは。

安達)直接民主主義、英語で言うと「ダイレクト・デモクラシー」で。

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例えばスイス。町村総会と似た制度として、住民総会があります。住民が体育館や広場に集まって、自分たちの町の方向性を決めるという理念から始まり、2008年の調査では8割の自治体で住民総会を開いています。ただ、参加者は住民の1割から2割にとどまるところもあるようです。

岩淵)理念と現実の難しさですね。

安達)日本を含め多くの国が代議制を採っているのは、すべての有権者が集まるのでは実質的な議論ができないし、そもそも集まる場所を作るのも困難という物理的な理由もありますが、選挙で選ばれた代表者が、その知識や意識を駆使して、結論を出す方が、間違いが少ないと考えたからです。しかし、その代表者のなり手がいないというのも、これも現実です。

岩淵)全国的にもあるんでしょうね。

安達)そうです。2年前の統一地方選挙ではおよそ4分の1の町村で無投票当選となりました。議員定数が6人以下の町や村は大川村を含め、全国に12あります。多くの村で議員のなり手がいないという悩みを抱え、なかには町村総会を検討すべきという声もようです。

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岩淵)大川村の結論。気になるところですね。

安達)大川村では次・2年後の村議選に間に合わせるために、年内に一定の結論を出したいとしています。

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「地方自治は民主主義の学校」。イギリスの政治学者・ジェームズ・ブライスの有名な言葉です。その民主主義の学校が学級崩壊ならず、学校崩壊の危機にあるのが日本の現状です。大川村が直面する課題は民主主義。民主主義そのものの課題のように思います。
これをどうして行くのか、僕たち一人ひとりが考えて行かなければなりません。

(安達 宜正 解説委員)

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