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「どう実現?自動運転」(くらし☆解説)

室山 哲也  解説委員

(アナ)
自動運転に向けた動きが活発化。しかし、さまざまな課題も見えてきた。自動運転はどのように社会に入ってくるのでしょうか?室山解説委員。

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どんな状況?

(室山)
開発は急速に進んでいる。自動運転メリットにはさまざまな社会的メリットがある。交通死亡事故の90数%がドライバーだというデータを見ても、自動運転の意義は大きい。

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日本では、交通事故死者数は減少しているが、75歳以上の死亡事故比率は増加している。

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また、事故を起こさない自信の度合いも、高齢者ほど高くなる傾向がある。(立正大学 所正文教授)やはり高齢化問題は心配。

(アナ)
自動運転にはどんな課題があるのか?

(室山)
自動運転は一定期間、人間との混在の時期が続く。人間との関係が大きな課題のひとつ。

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基礎情報をまず整理する。自動運転には5つのレベルがある。ハンドル、ブレーキ、アクセルの3要素がある。その3要素のうち、ひとつ自動化しているもの(レベル1)、二つ自動化(レベル2)、さらに高度化して、すべて自動化して、4、5では完全自動運転となる(4は一定条件化)。
さらに事故が起きたときの責任は1、2ではドライバー責任、4、5ではシステム責任となる。問題はレベル3の場合。レベル3で、システム運転中はシステム責任だが、システムが運転不能のときは権限委譲しドライバーが運転する場合があり、そのときの事故責任はドライバーとなる。実はこの運転交代のプロセスで起きる問題が、以前から指摘されている。

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具体的にいうと、たとえばレベル3でシステムが運転しているとき、ドライバーはそれを監視している状態。しかし、たとえば急に天候が変化するなどで、システムが運転不能となったとき、ドライバーに運転交代を要求してくることがある。このとき問題が生じやすい。

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ドライバーの立場からすると、自動運転中にもかかわらず、安全確認の意識を保ち、周辺に注意を向ける必要があるが、実際にはそれは難しい。むしろ気が緩んでしまうのではないか。この状況に耐え、いつでも運転交代に備えることができるのは、むしろプロドライバー的なレベルの人。「誰でも安全に乗れる自動運転」なのに、限られた人しか乗れないパラドックスが生じてしまう。
この問題を克服するためには、今後、ヒューマンマシンインターフェイス技術(システムが常時運転手の状態を監視し、スムーズなコミュニケーションとる)の進化が必要となる。

基礎研究はいろいろ進んでいる。たとえば、自動運転中の表情の変化から、ドライバーの心理状態を解析する研究。しかしこれはまだ始まったばかり。
一方、その構成要素技術が、すでに一部、業務用の一般車両の世界で始まっている状況もある。たとえばあるバス会社は、高速走行をする運転手に脈波から眠気を感知する装置をつけ、集中的に管理するシステムをとっている。このほかにも脳波から覚醒状態を感知する装置も作られており、これらの技術が融合して、いずれレベル3に使える「ヒューマンマシンインターフェイス」(システムと人間の「人馬一体」の状態)に進化することが期待される。

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(アナ)
無人運転まで長い道のり?

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(室山)
じつはタクシーやバスなどの公共機関は、先行して無人運転を実現しようとしており、2020年までに実現する計画。いずれにしても今後は、「安全第一」を忘れず、市民への情報提供を勧め、注意深く開発を進めてほしい。

(室山 哲也 解説委員)

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