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「進むロボットの"採用" 仕事はどう変わる?」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

最近、様々な企業で、ロボットが働いています。今井解説委員。

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愛知県にある自動車部品を製造する会社です。
こちらでは、グループで8台の人型のロボットが働いています。
・電子機械の工場で、温度や湿度を定期的に観測したり
・機械の異常をいち早く感知して、ネットを経由して離れたところの作業員に知らせたりします。
・また、部品がたりなくなったのを感知して、すぐに発注を促してくれたり、
・夜勤で働いている人の健康状態を見守りしたりしています。

【工場で、人と同じように働いているのですね】
そうなのです。これまで人がやっていたことを、ロボットが担っている形です。今は、品質改善のテキストを勉強していて、今年中には、従業員に指導する仕事も始める予定ということです。

一方、2月には、大阪のコンビニで、レジロボットの実証実験が行われました。
・かごに商品を入れたままレジにおくと、かごに入っている商品の値段を読み取ってくれ、自動で会計を済ますことができます。

【どうやって読みとるのですか?】
ひとつひとつの商品に電子タグがついていて、レジロボットに組み込まれている、センサーが瞬時に読みとる仕組みです。
・袋詰めも自動で行ってくれます。

【これから、お店のレジは、こうしたロボットになっていくのですか?】
実用化するには、電子タグをもっと安くしたり、商品をつくるメーカーの協力を得て、タグをあらかじめ商品のパッケージに組み込んでもらったりしなければならない、という課題があります。国とコンビニ業界が、こうした課題を解決しながら、2025年までに、レジロボットの導入を目指す考えを、きのう発表しました。

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【7、8年後ですか。レジロボットが当たり前になっているかもしれないのですね】
そうですね。人型のロボットやレジロボット以外でも、例えば、
▼工場で組み立てをしたり、
▼物流センターで商品を運んだり、
▼土地の測量をしたり
今、企業が、こうしたロボットを様々な現場で採用する動きが急速に広がっています。

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【なぜ、急速に広がっているのですか?】
企業の話しでは、やはり、人手不足が背景にあると、話しています。
▼仕事を探している人、1人に対して、企業がどのくらい席を用意して、求人しているかという数字を見てみると、最新の2月には、1.43倍。
つまり、企業は、1.43人欲しいのに、1人しか仕事を探している人がいないという状態です。バブル景気直後の1991年7月以来の深刻な人手不足なのです。

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【なぜ、これだけ人手が不足しているのですか?】
何より、働く世代の人口が減っているということが大きいです。
▼主な働き手と言ってもいい、15歳から64歳の人口。1995年に8720万人いたのが、2015年には、7730万人。20年間で、およそ1000万人減っています。一週間におよそ1万人減っている計算です。
▼今後は、もっと加速度的に減っていきます。

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【すごい勢いですね】
ここ数年、企業は、退職した方を再び雇ったり、主婦を採用したりして、なんとか対応してきましたが、それも限界にきています。

【そこで、ロボットを採用するということなのですね】
そうです。先ほど紹介した企業は、
「中小企業には、本当に人が来てくれない。今、対策に乗り出さないと、今後ますます大変なことになる」と考え、人型ロボットの採用に踏み切ったということです。

【ただ、きっかけは、人手不足への対応だとしても、ロボットの採用が進むと、仕事を奪われる人もでてくるのではないですか?】
そうですね。今後、ロボットはネットや人工知能とつながったりして、どんどん高度化していきます。ロボットが担うようになる仕事もでてくるかもしれません。ただ、ロボットなどを活用することで、新しい仕事もでてくる。つまり、人に求められる仕事の中味が変わってくることになると思います。
経済産業省の試算です。2015年度から2030年度までの間に
▼製造ラインの組み立てや▼低価格を売りにする飲食店といった仕事は、これだけ減る
一方、
▼経営戦略や研究開発、マーケティングなどの仕事や▼IT関連、▼さらに、丁寧な接客を売りにするレストランなどの仕事は、これだけ増えるとしています。

【減る仕事から、増える仕事に、働く人が移動するということですか?】
そうです。これまで、日本は、人を安くたくさん雇って、安い製品やサービスを提供する「薄利多売」のビジネスモデルを得意としてきました。でも、これからは、人は貴重な存在です。社会全体でみて、利益がとれる事業に、その人材を移していかなければいけないということです。
▼さきほどの人型ロボットの中小企業。ここでは、ロボットがやるようになってくれた(温度を観測したり、深夜の見守りをしたりといった)仕事がなくなった代わりに、それぞれの現場で、次は、ロボットにどういう機能を持たせるか考え、ソフトを開発する仕事が生まれている。社員が、ITの勉強をしながら、取り組んでいるということです。
▼また、レジロボットの採用を考えている企業では、レジ打ちや袋詰めの作業が減る代わりに、丁寧に接客するとか、お客さんのもとに行って必要なサービスや商品を聞いて対応する新しいサービス事業。こうしたところに、人材を回していきたいとしています。
そして、いずれも、生産性を上げたり、新しい事業を展開したりすることで、賃金引き上げにつなげていきたいとしています。

【働く側としても、求められる能力が変わってきそうですね】
そうですね。何人かの専門家に話を聞いたところ、
▼ロボットを開発したり、新しい機能を組み込んだりするIT力。これは大事になってきますが、それ以外にも、マニュアル通りに動くのではなく(ロボットが得意ですので)
▼ロボットが苦手な、人の気持ちをくみ取って対応する、接客。コミュニケーション力。
▼ロボットなどを、どのように仕事の中で活かしていくか。その上で、どういう新しいサービスを切り開いていくかを考える、企画力。発想力がますます求められるようになるとのことでした。

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【すでに働いている人たちも、こうした力を身につけることが必要になってきますね】
いずれなくなるかもしれない仕事についている方が、不安を持つことなく、新しい仕事に移れるように、企業や政府も、ロボットととともに働く社会をにらんで、研修や教育に力を入れていくことが求められます。ロボットをうまく、利用して、生産性をあげることで、賃金を上げていく。プラスの動きにつなげていってほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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