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「保育の質をどう守る?」(くらし☆解説)

藤野 優子  解説委員

兵庫県姫路市の認定こども園が、定員を大幅に上回る園児を受け入れるなど不正をしていたとして、4月1日付けでこの施設の認定が取り消されることになりました。都市部で保育施設が急速に増加している中で、保育の質をどう守っていくかが課題となっています。担当は藤野解説委員です

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【姫路市のこども園 不正で認定取り消し】
一部の施設で保育の質が低下してきている話を私も聞いていたので心配していたが、あれほどひどい施設があったのか、あれでよく大きな事故が起こらなかったなと思う。保育所に入れない親の思いに付け込んで、劣悪な保育を長期間続けていたなど言語道断。政府は6月にさらなる待機児童対策を公表しようとしているが、保育の質をどうチェックしていくのかを早急に考える必要がある。

【認定こども園のしくみ】

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認定こども園は、これまで幼稚園に通っていた子どもと保育所に通っていた子どもの両方が通える施設で、出産後も働き続ける女性が急増している一方、幼稚園を利用する人が減っているので、政府はこれから増やしていく方針。いま全国に4000か所ある。

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ただ、少し注意が必要なのは、大半は、認可を受けた幼稚園や保育所が、こども園にかわったのだが、中には、地方自治体の裁量で、認可外の保育所がこども園の認定を受けたケースも含まれる。
今回、問題となった施設もこのケースで、保育士の数など一定の基準を満たしているとして2年前に兵庫県がこども園に認定した。

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もちろん認可外の保育所でも、しっかりした保育が行われているところがいくつもあるが、ここは虚偽報告をしていて、実態は、市に届けずに直接保護者と契約して、定員の1.5倍の子どもたちを受け入れていたり、保育士の水増しをして不正に国などからの給付金を受け取っていたり、必要な量の給食を提供していなかったり、と様々な不正が発覚している。

【なぜ2年も自治体は気がつかなかったか】

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なぜ2年も自治体は気がつかなかったのか疑問。
去年1月に市に「この施設は市を通さずに入園の申し込みができるのか」という問合せがあり、この施設は必ず市に申し込みをする必要があるので、市が園長を呼んで確認したが、この時には園長が否定して終わっている。
そして、今年2月に認定後初めての立ち入り調査を実施したが、その時は事前連絡を入れての調査だったために、定員外の子どもたちは休ませるなど隠ぺいを図っていた。だが、この時に、給食の発注の数と出席した子どもの数が違うといったおかしな点が見つかり、2月下旬に県と市が合同で抜き打ち調査に入り、数々の不正が発覚した。
自治体の判断で認可外の施設をこども園に認定した経緯や、おかしな情報が去年から寄せられていたことを考慮すれば、もう少し早くに県や市は調査に動く必要があったと私は思う。

【他にも同じような施設があるのか】
姫路のこのこども園のように、ここまで酷いものはないと私は思いたいが、実は、認定こども園に限らず、今の保育施設の質は玉石混交、素晴らしい保育をしている施設がある一方で、良くないものまで様々。専門家の間でも、認可を受けた施設でも適切な保育が行われていない施設がある、と懸念する声が出ている。

【なぜ、そうした施設は明るみにでないのか】
保育士が現場でみているので一番わかっている訳だが、職場で意見するとひどい目にあったり辞めさせられたりといったケースもありなかなか言い出せないと聞く。
保護者も日中見ているわけではないし、複数の施設を利用した経験がないとこういうものなのかと思いこんで気がつきにくいということもある。ただ、私は、それだけでなく、今の保育の制度には、良くない施設を排除する仕組みが弱いという問題があると思う。

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なぜかというと、行政のチェックが十分に行き届いていないという現状があるから。
今の保育制度というのは、都市部の待機児童の解消のために、政府が規制を緩和して、施設の数や種類を増やしてきている。受け皿が増えたこと自体は良かったが、その反面、以前よりももっと自治体等のチェック体制を強化する必要があるのではという懸念が当初から出ていた。今回のケース等を見ていると、やはりその点が不十分だったと言わざるを得ない。

【他の自治体でもチェックが行き届いていないのか】
自治体によって差がある。保育施設などについては、原則1年に1回以上の立ち入り調査を行うよう厚生労働省は求めているが、特に待機児童の多い自治体は2~3年に一回などといったところもある。また、多くは、事前に連絡を入れて調査に入るので、不正が発覚しにくい。

【どうしたら再発防止できるか】

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まず速やかに、自治体には、全国の保育施設(認可外も含めて)で不正や不適切な保育が行われていないか、抜き打ちで調査をしてほしい。原則、事前連絡をして調査に入ることになっているが、今回のケースでも抜き打ち調査で不正が発覚している。

そして、保護者や保育士が不正に気づいた際には、必ず自治体に通報するよう周知すること。立ち入り調査が行き届いていない自治体もある中で、不正の手掛かりとなる情報をいち早く集めるには、自治体への通報をしっかり呼びかける必要がある。

さらに、自治体の調査だけでは限界があるため、中期的な課題になるが、保育施設を監視・評価する第三者組織が必要だと思う。
参考になるのがイギリスで、ここは、国の機関が統一した基準で、保育施設や教育施設のチェックと評価を担っている。そうした、第三者による監視体制づくりも検討してはどうか。

【保護者への注意点】

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素晴らしい保育をしている園はたくさんあるので過度に不安になる必要はないが、これから入園を検討する人は、必ず子どもたちの様子を見学してから入園先を決めることが大切。保育内容に自信のある施設は必ず見学をさせてくれる。
また、既に利用している人も、園に子どもを任せっぱなしにしないで、施設の情報、認可か認可外なのかはもちろんのこと、保育士は何人いないといけないのか。保育士が急に減っていないかなど、日頃から注意してみておくことが大事。
そして、子どもの様子を注意深く見守る事も大切。保育所に行きたがらない時に理由は何なのか、意思疎通ができる年齢のお子さんであれば、園でどのように過ごしているのかしっかりコミュニケーションをとることも必要。
安心して利用できる保育施設がたくさんできて、施設を選べるようにすることが一番大事なことだが、姫路のようなケースが他でも起きないよう、親も少し注意を払いながら、万が一、不審な点があれば自治体に連絡をしてほしいと思う。

(藤野 優子 解説委員)


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