NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「世界で拡大eスポーツ市場!日本は?」(くらし☆解説)

中谷 日出  解説委員

今、欧米や韓国中国など世界中で人気のeスポーツという競技、その市場がさらに拡大しているといいます。しかし日本ではまだその存在を知らない人も多くいます。今後で発展する可能性は?中谷日出解説委員です。

k170222_01.jpg

【eスポーツってどんなもの?】                         

「eスポーツ」とは、エレクトニックスポーツの略です。コンピューターゲームやビデオゲームといった私たちが普段やっている対戦型ゲームを使います。プロゲーマーが大勢の観衆の前で舞台にあがりゲームをしてその技を披露しながら観衆を楽しませ対戦するというもの。

【やはりゲームをスポーツと言われてもどうもピンとこないのですが?】          

k170222_03.jpg

日本人はスポーツというと野球、サッカーなど激しく体を使う運動というイメージがあると思います。ところが欧米ではスポーツイコール競技を意味します。
例えばチェス、ビリヤード、ダーツなどこれまで日本ではゲームといわれるものはすべて競技、スポーツなのです。
日本との文化の違いといったらそれまでですが、日本以外の国々ではこのコンピューターゲームがスポーツとして認められているんです。

k170222_05.jpg

世界eスポーツの市場規模は2015年の3億2500万ドル(およそ367億円)から43%増加して2016年には4億6300万ドル(およそ523億円)に達するとみられ、2019年までには11億ドル(およそ1243億円)規模に成長すると予想されています。(市場調査会社:Newzoo)

k170222_06.jpg

現在、世界のeスポーツ競技人口は少なく見ても1億人以上。ちなみにサッカーは、2億6500万人以上、野球は3500万人といわれています。

【世界では、どんな盛り上がりをみせているのでしょうか?】

1990年代後半から欧米では賞金のかかった大規模なゲームのイベントが開催され、プロチームとプロリーグがあり、トッププロゲーマーになると賞金、契約金などで数千万円の収入があるといいます。
リーグオブレジェンドというのは世界でもっともプレイされているゲームです。
(VTR)これは昨年2015年のワールドチャンピョンシップという大会での様子です。会場もものすごい観客の数ですが、インターネットのオンライン配信で見た人とTV中継で見を合わせるとなんと3200万人です。
大勢の観客は、ゲーマーの華麗な指さばきから生まれる技を見ながら試合を応援しています。また、ほかのある大会では賞金総額がなんとおよそ22億円です。優勝賞金もおよそ8億円という大会もあります。

k170222_07.jpg

また、最近では、ドイツのサッカーリーグ、ブンデスリーガ、イングランドのプレミアリーグなど海外の有名スポーツチームは、続々と傘下にeスポーツチームを発足しています。特に、アメリカのプロバスケットボール協会NBAは,2018年より公式eスポーツリーグを発足させます。

また教育の世界にも拡大しています。

k170222_10.jpg

スウェーデンの3つの高校ではeスポーツの授業を週3時間とりいれる決定しました。またノルウェーの高校では、これまでのスポーツプログラムいわゆる体育の中にeスポーツを選択科目として設置。週5時間eスポーツを学ぶ一方でゲームに必要な反射神経や体力向上を目指し、身体トレーニングも行うとしています。

【日本の状況はどうなのですが?】 

日本も遅ればせながらいくつかの地域にプロチームができたりプロリーグが立ちあがり、昨年は第1回日本eスポーツ選手権大会が開催されました。日本でも世界に通用するようなプロゲーマーも徐々に生まれています。また、しかし世界と比べるとまだまだその規模は小さいですね。

【日本のゲーム業界も今、元気がないようですが?】

かつて日本はゲーム王国といわれ世界を席巻していました。任天堂やソニー、セガなど世界を代表するゲームメーカーとして人気でした。日本のゲームソフトは10数年前には世界で販売されるゲームソフトの約60%のシェアを占めていました。世界のゲーム市場はeスポーツの盛り上がりでここ10数年で3倍以上になっています。しかし、現在の日本のシェアは10%前後になってしまっています。それは、日本のゲーム会社が、独自の機器で行うゲームにこだわり、パソコンを使ったネットワークゲームに乗り出さなかったためなのです。一方世界の国々は、文字どおりeスポーツのネットワークを広げていった結果、今の活況にある!
要するに、日本のゲーム業界の元気がなくなっている原因は、このeスポーツの波に乗り遅れたからなのです。

【これから日本はどうなるのでしょうか?】                    
         
eスポーツに乗り遅れた日本ですが、実は、独特な歩みをしてきました。
2009年に日本eスポーツ学会が設立されています。eスポーツで使われるデジタルゲームは、わが国を代表する世界的な産業として成長してきたにもかかわらず、 デジタルゲームの負の側面が強調され、それが持つ正の側面をまったく無視する論調が少なからず見受けられます。 その結果、デジタルゲームを用いて競い合うeスポーツの国内における発展を妨げているのが現状なのです。

k170222_13.jpg

eスポーツ学会は、eスポーツが人間の身体に与える正負の影響、例えば依存や視覚聴覚に対する影響を研究解明し、eスポーツによる地域振興・経済振興の研究これは、プロ野球や、Jリーグのような地域展開による振興、eスポーツの社会的意義の研究、障害があっても分け隔てなくできる、などを行ってきました。その成果を踏まえて、すでに出遅れてしまったので、遅れを気にすることなくじっくりeスポーツを普及させることが、実は大切なのかもしれません。

(中谷 日出 解説委員)

キーワード

関連記事