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「災害時、外国人は」(くらし☆解説)

広瀬 公巳  解説委員

東日本大震災からまもなく6年になります。
災害への備えをどう進めていけばよいのか。
急増する外国人の災害対策を考えます。
外国人の中には日本語が通じない人もいますから大事な問題。
国や自治体も急ピッチで対策を進めているところですが、災害はいつ起きるかわかりません。
そして災害がおきると対応を迫られるのは外国人の近くにいる私たち市民です。
実際にどう対応すればいいのか特に重要な言葉やコミュニケーションの問題から考えていきます。

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(被災する外国人)

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東日本大震災では「高台」という日本語が理解できなかった外国人がいて
逃げるのに支障が出るということがありました。
夫との連絡がとれなくなってこわくて揺れが続いたあとも
ずっと押入れで震えていたという外国人の女性もいたということです。
日本の事情に詳しくないため外国人は情報から孤立します。
東日本大震災では36人の外国人が犠牲になりました。
外国人の避難誘導を行うために
自分自身が逃げ遅れてなくなった日本人もいます。
日本人の安全にも影響してくる問題でもあります。
阪神淡路大震災では、同じ人口あたりの
外国人の犠牲者の割合が日本人の二倍もありました。
外国人は「災害弱者」なんですね。

(増える外国人)

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今は、外国人の数もっと増えているんですよね。
まず日本に暮らす人ですが230万人。
最近の特徴としては、ベトナム人やネパール人が増加が顕著で、
外国人は国籍も文化も言葉も、
そして日本語の力も「多様化」しています。
一方、日本を訪れる観光客は去年2400万人になりました。
日本の災害事情について知らない短期滞在者が急増しています。
そうした人達の安全をどう確保できるか大きな課題です。

(災害訓練では)
ではどんな対策が取られているのでしょうか。
まずは大切なのは災害が起きたときの緊急の対応です。
こちらは東京都が外国人向けに行っている災害訓練です。

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災害時にどのような対応をとったらよいのか
外国人の意識を高めてもらおうというものです。
日本のように大きな地震はない地域の人がほとんどですから
ます地面が揺れるとどうなるのか理解してもらわなければなりません。
避難所での生活の様子もわからない人がほとんどです。
訓練に参加したフランス人は、
フランスでもごくまれに地震はありますが非常に弱いものですと話していました。
ネパールの人は外国人には日本語がわからなので英語への通訳が必要ですと訴えていました。
こうした外国人の対応にあたるのは通訳のボランティアですが
まだまだ通訳コーディネータの育成の国や自治体の
取り組みはすすんでおらず数は限られています。
日本語が通じない外国人にどう情報を伝えるか。
訓練会場では外国から直接持ち込んだスマホでも地震や気象の警報が受け取れるようにするアプリを紹介したり、
災害用に使いやすくした翻訳アプリがつかえるかについての実験も行われました。

(伝わる日本語)
スマホでの外国語の翻訳も進んでいるんですが、どんな風になるのでしょうか。
翻訳機能の部分は国の研究機関が開発しているものでアプリが無料で提供されています。

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最初に日本語を入力してみます。
「地震があったのですぐに逃げてください」
「there was an earthquake. Evacuate immediately」
逆に外国語からの翻訳機能もあります。
わたしが外国人だと仮定してやってます。
「PLEASE TELL ME THE PLACE TO EVACUATE」
「避難場所を教えてください」
これは英語の他に30の言語での対応していますので、
外国人との理解を普段から進めておくことのにも十分活用できそうです。
ただ、緊急時には、誤訳があってはいけませんしインターネットの回線も確保されているとは限りません。
外国人のいる災害現場に遭遇したときにすこしでも日本語が通じる人がいれば日本語で情報を伝えることが大切です。
ただそれも、外国人相手の場合はいくつかの注意したほうがポイントがあります。
その一つは難しい単語は避け、やさしい言葉で言い換えるということです。
日本人ならわかる単語でも、外国人からすると、ふだん使っていない
難しい単語がありますので噛み砕いて言い換える必要があります。
「余震」ですと、「あとから くる じしん」。
「避難所」は、「みんなが にげる ところ」。
「炊き出し」は、「あたたかい たべものを つくって くばる」といったところです。
そして、一つの文には一つの情報です。
早く逃げろとか、ここは危ないとか、大事な情報を絞り込んで、短めの文で伝える。
そして本当に伝わっているか確認していくことが大切だということです。

(言葉だけではなく)
緊急時の対応に加えて、そのあとの避難所などでのくらしの上での対応も重要です。
おととしの鬼怒川の水害で被災地となった茨城県の常総市は
日系ブラジル人の方がたくさん住む場所でした。
日本語はもちろん英語も通じず、
避難をしていた体育館でのルールがわかりませんでした。

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それを伝えるためにこの張り紙のようにポルトガル語での対応が必要だったんです。
ただ、緊急時にそれできる人材は限られます。
宗教や食事の習慣など文化の違いも摩擦の原因とならないように注意が必要です。
異なる生活をしている人間同士が互いに理解できるようにしていかなければなりません。
通訳としてコーディネートにあたった日系ブラジル人の小松パトリシアさんは、
「日本人とブラジル人の間のコミュケーションをとるのが本当に大変だった」と話していました。

(支援される側から支援する側へ)

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だた一方で、置かれている状況と役割さえわかれば、
外国人の中には日本語が得意な人もいますので通訳を務めてもらうなど、
被災者、つまり支援される側から支援する側に回ってもらうこともできます。
必要な物資を調達したり配ったり被災者側の声を日本人側に伝えてもらうことも期待できます。
災害時にはそうして、お互いが助け合っていくこと、
助け合えるような仕組みを作っていくことが必要なのではないでしょうか。

(これからの課題)
外国人の方がまわりに増えてますからどうすればよいのか考えておく必要があります。
その際に忘れたくないのは「災害時、外国人は」「災害弱者」だということではないでしょうか。
東日本大震災の被災県では外国人の働き手の数が急増しています。
そして、2020年のオリンピックにむけてどうするのか。
自然災害が多い日本で増え続ける外国人の安全を守っていくことは、
これからしっかり考えていかなければならない大切な問題だと思います。

(広瀬 公巳 解説委員)

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