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「銀行のカードローン 借り過ぎに注意!」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

銀行の「カードローン」の貸し出し額が、急激に増えています。中には、返済できずに自己破産に追い込まれるケースも見られるとして、対策を求める声がでています。今井解説委員です。
 
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【銀行のカードローン。テレビのコマーシャルを見かけたことがありますが、どのようなものですか?】

さかんに宣伝していますね。これは、個人が担保なしで、しかも、住宅ローンのように特定の使い道を決めることなく、借りたおカネを自由に使えるというローンです。要するに、消費者金融の銀行版といっていいと思います。
 例えば、最大1000万円といった一定の枠が定められて、その枠の中で、繰り返しおカネを借りられるのが特徴です。このところ、メガバンクをはじめ、多くの銀行が「スマホで手続きができる」とか「最短、即日、利用できます」「銀行やコンビニのATMで借りられる」と、さかんに「簡単に借りられる!」ということを、宣伝しています。
 
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その結果、特に、2012年度から貸出残高が急激に増えています。4年間で、50%以上も増えています。
一方、青い線は、消費者金融の貸出残高の推移です。
 
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【消費者金融の方は、急速に減って、逆転しているのですね】

そうです。消費者金融は、2000年代初めに、非常に高い金利で積極的におカネを貸し付けていました。その結果、返済できないほどの借金を抱えて苦しむ人や、それを苦に自殺をする人が増えて、大きな社会問題になりました。
そこで、2006年に法律が改正されて、貸出金利の上限を引き下げるとともに、消費者金融については、「総量規制」と呼ばれる規制を導入しました。具体的には、世帯の年収の3分の1までしか、貸せないことにしたのです。この結果、貸出残高がどんどん減りました。多額の借金に苦しむ人も減り(06年度614万人⇒16年度125万人)借金を苦に自殺する人も減りました。この法改正は、大きな効果があったと評価されています。
ところが、この時、銀行のカードローンについては、「総量規制」の対象外とされました。

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【なぜですか?】
銀行は、社会的な責任がある立場なので、悪質なことはしない。つまり、規制がなくても、法改正の趣旨を汲み取って、過剰な貸し出しはしないだろう、という見方があったからです。実際、しばらくは大きな変化はありませんでした。ところが、このところ、単に貸出が増えているだけでなく、「ちょっとこれは、問題ではないか」という事例が目立っているという指摘が、相談現場からあがっているのです。
 
【どのような問題ですか?】

日弁連が、去年、各地の弁護士会を通じて、銀行のカードローンに関して、どのような相談がきているか調査をしたところ、
▼ 年収が220万円の人に、500万円を貸し出した
▼ 年収が226万円の人に、960万円を貸し出した、さらに
▼ 収入がない人に、170万円を貸し出した
こうした事例が、相次いで見つかりました。
年収の3分の1どころか、年収を大幅に上回ったり、収入がない人に、多額の貸し出しをしたりしているということです。
なかには、消費者金融で融資を断られた後、銀行から借りられたという人もいました。これでは、銀行が消費者金融化していると言われても、やむをえないですよね。

【どうして借りられるのですか?】
きちんと審査をしないで、安易に貸す傾向がでてきているのではないかという指摘がでています。
実際、ホームページなどで、「総量規制の対象外」とか、「収入のない専業主婦でもOK」「300万円までなら、収入証明は必要ありません」といった広告を出している銀行もあるというのです。いずれも、消費者金融では、一定の規制がある内容です。
結果的に自己破産に追い込まれたケースも多くあって、去年、全国の自己破産の申し立て件数は、13年ぶりに増加に転じました。(前年同期比 +1.2%)背景には、こうした銀行の過剰な貸し出し姿勢があるのではないかという指摘があがっています。
 
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【なぜ、銀行は、それほどカードローンに力を入れているのですか?】

日銀の異次元の金融緩和やマイナス金利政策によって、銀行の経営環境がどんどん厳しさを増しているという点があげられます。貸し出しを増やそうにも、企業向けは、そうそう増えないし、住宅ローンの金利は、年1%前後で、なかなか利益がでません。

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一方、銀行のカードローンは、メガバンクで、最高、年14%台と、比較的高い金利を得ることができます。そこで、利益を得るために、カードローン事業に力を入れる銀行が増えているのです。
 
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【でも、過剰な貸し出しで、おカネが返ってこなかったら、銀行にとっては損ではないですか?】

同じグループに消費者金融がいて、いざ返済が滞ると、そこが保証してくれる仕組みになっているケースも多く、それだと、銀行は痛みません。また、高い金利ですので、一部、返ってこなくても、住宅ローンなどと比べると多くの利益が得られるという考えもあります。
このままでは、再び、多額の借金に苦しむ人が増える心配がある。として、
▼ 日弁連は、銀行に対して、消費者金融とあわせて、原則、年収の3分の1を超える貸し出しをしないよう、求めています。
▼ 銀行の業界団体の、全国銀行協会も、会員の銀行に対して、過剰な宣伝をしないよう周知をするとしています。
▼ また、銀行を監督する立場の金融庁も、大手銀行や地方銀行を対象に、実態調査に乗り出すとともに、きちんと審査をして、返済能力を超える貸し出しをしないよう、促すとしています。

【自主的な対応に任せて大丈夫でしょうか?】

日弁連は、この夏にも、全国で銀行のカードローンについての相談会を開くことを検討しています。そして、銀行の姿勢が改善されていなければ、法的な規制の強化など、さらに必要な対策を求めていくことにしています。
多額の借金に苦しむ人がこれ以上でないよう、銀行は、きちんと対応策をとってほしいと思います。

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【銀行側の対策は必要ですが、一方、消費者も、安易に借りないことが大事ですね】

銀行だから、大丈夫だろうと思いがちですが、14%の金利というと、重い負担です。もともと、生活が厳しい人が借りると、返せなくなります。
緊急のおカネが必要な場合、以前と比べると、公的な貸し付け制度は整ってきています。
▼ 例えば、都道府県の社会福祉協議会が行っている「生活福祉資金貸付制度」は、無利子か、連帯保証人がいない場合でも、年1.5%の低利子で借りられます。
▼ また、岩手県や福岡県など一部の地域では、地域の生協などと連携をして、家計見直しの相談とあわせて、おカネを借りられる地域もでてきています。この家計見直しの相談は、効果があると言われています。

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【どこに相談したらいいですか?】
ほぼ全国の市町村に、「多重債務の相談窓口」や「自立支援の相談窓口」が設置されています。すでに借金の返済が厳しくなっている。別の借金をしないと、返済できないといった方。あるいは、この先、借金をしないと生活していけない、という方は、こうした窓口に、相談をしてみてください。消費生活センターや地域の弁護士会の窓口などでも相談を受け付けています。ぜひ、安易に借金を膨らませる前に、早めに相談をすることが大事だと思います。

(今井 純子 解説委員)

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