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「18歳選挙権 若者の政治意識は」(くらし☆解説)

安達 宜正  解説委員

選挙権年齢が18歳に引き下げられた、半年前の参議院選挙。新しい有権者となった若者たちはどんな考えで投票したかのか、このほど、その調査結果がまとまりました。安達宜正解説委員です。

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▽去年の参議院選挙、18歳・19歳の人たちの投票率どのくらいだったのでしょうか。

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18歳、19歳の投票率です。18歳が51.28%。19歳が42.38%です。あわせて46.78%です。全体の投票率が54.70%、20歳代の前半・20歳から24歳までは33.%ですから、少なくとも低くはないですよね。

▽その若者たちを対象にした調査だったわけですね。

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そうです。総務省が18歳から20歳の全国の新しい有権者3000人を対象にインターネットを通じて調査しました。これを見ると▼投票するかしないが、この世代独特の理由が隠れていますし、▼政治意識には家族の影響が大きいというのがわかります。

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順番に見ていきましょう。まず、投票に行った理由です。複数回答で聞いています。上位には▼国民の義務だから、▼政治を良くするため、▼選挙権年齢引き下げ後、初めての選挙という回答が続きます。どうですか。納得はできますが、基本的な間違えが隠れています。

▽投票が義務ということですか。

日本の場合は権利ですから、義務ではないですよね。若者らしい間違えというか。僕は夕方、シブ5時という番組でセクシーゾーンというアイドルグループと選挙について勉強しましたが、そこでも選挙は権利か義務か、そんなことが話題になりました。諸外国では義務としている国もあります。例えばオーストラリア。20オーストラリアドル。レートにもよりますが、2000円弱の罰金です。独裁国家では国家に反逆したとみなされる国もあるようです。

▽一方でこちらは行かなかった理由ですね。

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▼いま、住んでいる市町村で投票できなかったから、▼選挙に関心がない、▼投票所に行くのが面倒といった理由が並びます。

▽例えば、行かなかった理由のトップ。▼「いま、住んでいる市町村に投票権がないから」というのはどういうことでしょうか。

住民票を移していないことも大きな理由のようです。高校を卒業すると就職や大学に入学して、地元を離れた場合、住民票を移しますよね。ただ選挙権の移動には▼住民票を移してから3か月後からです。それにそもそも住民票を移していない場合もあります。

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▽何で移さないのでしょうか。

面倒だからとか、いろんな理由があるでしょうが、住民票のある自治体から成人式の案内が来るのが多いというのも理由のようです。同僚の解説委員の子どもさんもそうでした。住民票を移してしまうと、故郷の成人式に出られないんじゃないかと。自治体によるかもしれませんが。さきほど示した数字で19歳の投票率が18歳を9ポイント下回っていますが、これも1つの理由かもしれません。

▽18歳よりも19歳が低いのは不思議に思っていました。

18歳ですと高校生もいますので、親と同居している場合が多いですからね。
ほかにも、▼18歳選挙権と言われ、18歳ばかりが話題になったことなどもあげられます。

▽家族の影響というのはどういうことでしょうか。

2つあります。1つは「誰と投票に行きましたか」と問いです。「家族と行った」が62%。「1人で行った」が32.4%。「友人と行った」が4.7%。家族と行ったが6割を超えています。

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▽最初の選挙だから、親という方も多かったのでしょうか。

どうでしょうか。今の若い人たちは親と一緒に行動することが多いようですね。選挙に限らず。もうひとつ。「子どもの頃、親御さんの投票について行ったことがありますか」という問いがあります。

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50%の人が「ある」と答えていますが、このうち、63%が投票したと答えています。一方で、「ない」と答えた人では投票に行った人は41.8%にとどまっています。20ポイント以上の差があります。僕も子どもの頃、おじいちゃんに連れられて、よく投票所に行っていましたが、岩淵さんはどうですか。

▽幼少体験ですね。

もっともこれまでは法律で選挙に連れていけるのは、「幼児」か、「やむを得ない事情がある者」に限られていました。これも前回の参議院選挙から改正されて、選挙人の子供・18歳未満ということですが、同伴できることになりました。岩淵さんもお子さんを連れて。

▽高校では政治や選挙の授業を始めたところも多いですね。

そうです。主権者教育とも言われています。▼模擬投票や▼専門家を招いた勉強会などやり方はいろいろです。主権者教育を「受けたことがある」と答えた人の55.7%が投票していますが、受けたことのない人の投票は48.5%です。この7ポイントの差が大きいのか、それしか効果がなかったのか、議論の分かれることころです。

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▽18歳選挙権で話題になった去年の選挙はともかく、今後も若い人たちは投票に行くのでしょうか。

調査では、投票に行ったと答えた人のうち、90%近くの人が今後も毎回、あるいはできるだけ行こうと思っていると答えていますが、実際そうなるかどうかの懸念はあります。総務省が先月、たち上げた主権者教育に関する有識者会議でも、「お祭り騒ぎ」も終わり、今後はますます、主権者教育が必要になってくるという議論が出ていました。

▽18歳に選挙権年齢が引き下げられたことで、安達さんは社会が変わるきっかけになったと思いますか。

劇的に変わったとは思いませんが、若者の意識は少し変わったかもしれません。実はこういう調査もあります。「選挙権年齢の引き上げ後に行われた国政選挙を通じて、あなたの政治に対する考えを答えてください」という質問に複数回答を求めたところ、▼多くの若者の声が集まれば若者の望む政策が行われると思うようになった。▼政治を自分のことのように考えるようになったなどが上位を占めています。政治家と話していても、確実に若者を意識するようになったと思います。

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▽それは取材実感として感じることですか。

政治家と言いますか、候補者は票を持っている人の方を向きますから。
今の政治はシルバーデモクラシーと言って、投票率の高い中高年に向けた政治が行われているという指摘されています。投票率も高いし、有権者も多い。だから、未来よりも現状が優先される傾向がある。1000兆円を超える借金はその典型です。これは若い世代がより長く返していかなければなりません。若者の側が政治に関心を持てば、政治家は若者の声に耳を傾けようとします。双方の歩み寄りがもっと進むと、日本の政治文化も変わってくるような気がします。

(安達 宜正 解説委員)

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