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「首脳外交と国民の視線」(くらし☆解説)

島田 敏男  解説委員

◆先月中旬に臨時国会が終わった後、安倍総理大臣は外交日程の連続だった。日本を訪れたロシアのプーチン大統領との会談、そして、ハワイの真珠湾を訪れて、間もなく退任するアメリカのオバマ大統領とも会談。そうした首脳外交の取り組みと成果を、国民がどう見ているのか。昨日まとまった今年最初のNHK世論調査をもとに探る。

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◆まず、年明け早々の内閣支持率は、どうだったのか?

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◇今月の調査で安倍内閣を支持するは先月より5ポイント上がって55%、支持しないは
3ポイント下がって29%という結果でした。
◇去年7月の参議院選挙後、50%ライン付近の比較的高い水準で上がったり下がったり、上がったり下がったりの繰り返しは相変わらずでして、ならして見れば横ばいです。

◆先月よりも支持するが5ポイント増えた理由は?

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◇微妙な変化ですが、政策に期待が持てるから、実行力があるからという積極的な支持の理由を挙げた人が先月よりも若干増えているんです。
◇一方で、他の内閣よりも良さそうだからという毎月の調査で最も多い消極的な理由は、先月よりも減っているんです。
◇自ら積極的に動いて見せる首脳外交で目立ったことが、実行力があるといった印象を
与えているのかもしれませんね。

◆1つ1つ見て行く。まず日ロ首脳会談は?

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◇プーチン大統領との首脳会談で、北方領土で共同経済活動を行うために、特別な制度を設ける交渉を始めることで合意しました。この会談を評価するか、しないか。
◇結果は評価するが53%で過半数、評価しないが41%でした。
◇与党支持者の6割以上が評価しています。これに対し、野党支持者と無党派層を見ると評価しないの方が多くなっていますが、評価すると答えた人も5割近くで差はわずかです。

◆共同経済活動という合意の一方で、領土の話は進んだのか?

◇そこが問題で、主権に関わる四島の帰属についてプーチン大統領は譲りませんでした。
◇安倍総理は問題解決の新しい道筋を造ったと強調しますが、この点は今月20日からの通常国会でも大きな論点になりそうです。

◆その領土交渉が、今後進展すると思うかどうかも聞いていたが?

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◇進展すると思うは10%にとどまり、進展するとは思わないが48%に上っています。
どちらともいえないも34%と多いです。
◇野党支持者と無党派層では6割前後が進展するとは思わないと答えています。
◇与党支持者でも進展するは少なく、どちらともいえないが4割以上で最も多いです。

◆進展するとは思わないのに会談は評価される。これはなぜ?

◇70年以上にわたって動かなかった問題ですから多くの人が難しいと感じています。
しかし、少しでも前に進む努力は評価したいということでしょう。
◇これから始まる共同経済活動のルール作りの話し合いで、どこまで日本側の主張を通すことができるかが次の評価のポイントになります。

◆そして日米。安倍総理は真珠湾を訪問して、慰霊のために花輪を供え、オバマ大統領とそろって所感を発表した。

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◇この真珠湾訪問を評価すると答えた人は81%に上り圧倒的です。特に与党支持者では9割を超えていて、野党支持者でも無党派層でも7割を超えています。
◇去年5月のオバマ大統領の被爆地広島訪問もそうでしたが、一国のリーダーが平和を誓う行動に対し、政治的な立場の違いを超えて意義を認める人が多いのは健全だと思います。

◆年末から年明けにかけて、日本と韓国の間で動きがあった。

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◇昨年末に韓国・プサンの日本総領事館の前に慰安婦問題を象徴する少女像が設置されたことに対し、日本政府は大使や総領事を一時帰国させる対抗措置を取りました。
◇この政府の対応を評価するが全体の50%、丁度半数です。そして、評価しない9%、どちらともいえない32%でした。

◆与党支持者だけでなく、野党支持者や無党派層でも評価するが多いが?

◇一昨年の年末に、日本と韓国の外務大臣同士の間で、元慰安婦の高齢の女性たちの支援のために日本政府が10億円を支出し、それを基金として活用することで合意しました。
◇対象となる女性の7割が受け取りに応じているのに、合意自体を否定するような新たな少女像の設置はいかがなものかと感じる人が日本には少なくないということです。

◆外交問題では与党支持者と野党支持者・無党派層の間の違いは意外と少ないようだが?

◇どの国でも外交というのは国内の政治的な立場の違い、政治的な対立を脇に置くことができるものでして、時には政治指導者が政権の延命に利用することもあります。
◇外交問題を考える時には、そういう側面も考慮しながら冷静に見つめる必要があります。

◆その外交で当面の最大の関心事は、アメリカの新政権の誕生だが?

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◇こちらです。今月20日に就任するトランプ次期大統領のもとで、日米関係は今よりも良くなると思いますか。悪くなると思いますかという質問です。
◇大統領選挙でトランプ氏勝利が決まった直後の11月の調査と比べても、大きな変化はありませんでしたが、悪くなるがやや増えています。
◇安倍総理は、トランプ政権が発足した後、できるだけ早い時点で最初の日米首脳会談を行いたい考えで、トランプ氏周辺と日程調整を進めています。
◇あのトヨタを名指しした一方的なツイッターでの批判もありました。今までのアメリカ大統領とは全く異なるタイプの大統領とどう関係づくりを図るのか。そして作った関係が日米双方の国民のプラスになるのか。暫く目が離せません。

◆国内の政治を巡る情況は?

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◇こちらの政党支持率を見て下さい。今月の自民党の支持率は38・3%で、自民1強のまま年が明けました。野党第1党の民主党は、今月も10%ラインに達していません。
◇今年前半は衆議院の解散・総選挙はなさそうだという見方が拡がり、これを受けて無党派層が全体に占める割合が高くなっています。暫く様子を見ようという空気の現れです。

◆自民1強の情況で、今月20日に通常国会が始まる。

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◇衆議院でも参議院でも自民・公明の連立与党が多数を占めています。
◇巨大与党を前にして、民進党や共産党などの野党が連携を強めて向き合わなければ、
国会での議論も深まりません。
◇野党が国会での連携を強めなければ政治に緊張感が欠けてしまいます。その連携の延長線上に次の衆議院選挙での協力も生まれます。ことしの政治の大きな注目点だと思います。

(島田 敏男  解説委員)

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