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「消費の実態 本当に見えているのかな?」(くらし☆解説)

関口 博之  解説委員

(VTR)
▼福袋に、セールの目玉商品。年の初めのお楽しみです。
今年の新春初売りは、多くのデパートで、
売り上げが去年を上回る、幸先の良い滑り出しになったようです。

▼賑やかな初売りからご覧いただきましたが、実は最近、
消費が好調なのか、良くないのか、見極めにくくなっているともいいます。
そこで、今回のテーマはこちら、
「消費の実態 本当に見えているのかな?」です。

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▽例えばインターネットを使った通販や、フリーマーケットでの買い物などの
経験があるかもしれませんが、
そういう風に買い物の仕方やライフスタイルが多様化してきているので、
消費の全体像がなかなか掴みにくくなっています。
結構、統計からこぼれているものもあるのではないかと、というのです。

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▽日本のGDP・国内総生産はおよそ537兆円。
そのうち個人消費は300兆円で、全体の56%を占めます。
なので当然、企業の景気判断や、政府の政策決定にも大きな影響を与えます。
そのGDPの消費は、総務省の「家計調査」などを基に推計されています。
これがいわば、土台になっている統計です。

▼家計調査の結果というのは、毎月発表されていますね。

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▽家計調査は全国のおよそ8000世帯に
毎月、家計簿方式で回答して貰って集計しているものです。
主に二人以上の世帯を対象にしています。
統計学的な方法にのっとって選んでいますが、
全国5300万世帯の中の9000だから、限られた数なのは確かです。
しかも、頼んで、引き受けて貰わなければならないので、
専業主婦の世帯や、年配の方の世帯が若干、多い傾向もあります。

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▽これは、過去1年間の家計調査で、消費支出を対前年同月比で見たものです。
マイナスの月が多くて、消費がパッとしないのがうかがえますが、
実は、サンプルが限られていることからすると、
統計学的には上下1.8%程度は誤差の範囲内ともされています。
つまりこの色つきの部分ぐらい、幅を持って見た方がいいというのですから、
プラスがマイナスに、マイナスがプラスになっても
おかしくないことになります。
高度成長期ならいざ知らず、今のようなほぼゼロ成長という時代では、
これでは統計として何とも心もとないところで、 
もっと正確なデータにできないか、という話になるわけです。

▼誤差の原因はどんなところにあるのでしょう?

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▽影響が大きいのは「たまにしか買わないけれど高額なもの」です。
例えば車を買う、家電製品を買う、旅行に行く、冠婚葬祭等です。
そこで、総務省は、こういう支出については、別に3万世帯を対象に
「家計消費状況調査」というのを行って、家計調査を補完しています。
ただ、この補正の結果は1~2週間後にならないと出てこないので、
専門家の間でも使い勝手が悪いと、あまり利用されていません。 
本当は、家計調査と一本にして出したいところです。

▼家計調査は、先ほど「家計簿方式」で調べているということでしたが、
どんなものなのですか? 結構、手間がかかりそうですが。

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▽これが今の調査票の記入例です。 
こんな風に「ゆでうどん 400g320円」
「あじが430gで330円」などと
毎日、細かく書くことになっているのですが、これは相当な負担です。
ついつい面倒になったり、記録するのを忘れてしまうこともあります。 
それと家計簿を付け出すと、無駄な支出に気を付けて、
案外、節約モードになる人もいるといいます。 
こういう「傾向」が家計調査から巡り巡って、GDP統計にも
反映しているのかもしれないわけで、結構大事な課題なのです。

▼もっと簡単に記録ができれば良いですよね。

▽そこで総務省が取り入れようとしているのが、
記入を自動化した「オンライン家計簿」とでもいうようなものです。 
入力にはスマホを使います。

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例えば、このスーパーのレシートを、スマホのカメラで接写します。
すると自動的にその内容を読み取って、記録してくれます。
こういう機能です。

▽今、使ったのはネット上で提供されている「無料の家計簿アプリ」ですが、
実際には家計調査専用のサイトを設け、
調査世帯はパスワードを使ってそこにアクセスしてもらいます。
そしてカメラで写すとデータが自動的に総務省に送信もされる仕組みにするそうです。
来年2018年1月の導入を予定しています。

▼確かにあの手この手、考えないと消費が掴み切れないのは分かってきました。

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▽そうですね。もう一つ「家計調査」に関しては、 
もともと夫婦二人以上の世帯を主に対象にしているので、
単身世帯があまり捕捉できていないという問題もあります。
ところが、その単身世帯の方が近年は増えているので、
ここも手厚くしたいところです。
このため総務省では「単身モニター調査」というのを新しく作って、
今年夏から調査を始めることにしています。

▽一方では、消費者の側の統計だけでなく、店側の統計もあります。 
デパートやスーパーの販売統計などです。
ただし、これも限られた業種での消費動向でしかありません。
何となく、旧来の枠組みでしか見ていないという感じがします。

(関口 博之 解説委員)

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