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くらし☆解説

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「手洗いで感染防ごう ノロウイルス」(くらし☆解説)

中村 幸司  解説委員

2016年から17年にかけての冬、ノロウイルスの感染が広がっています。そこで、感染対策の基本である手洗いについて考えます。

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◇トイレ使用と手の汚染
ノロウイルスの対策としては、調理するとき、食品を十分加熱する(中心部まで85~90度で90秒以上)ことと併せて、手洗いが大切です。
ノロウイルスは、基本的には感染した人の便から広がりますので、トイレに注目して、見てみます。

手洗いの大切さを示す実験があります。

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この写真は、ノロウイルスに感染し、下痢になった人の便に見立てた青いインクを赤い丸印のところから出して、汚染がどう広がるかを見たものです。
インクを出した後の状態が、このお尻の写真です。青い点々があるのがわかります。
この状態で、トイレットペーパーで拭いてみると、下の写真のように、手に付いてしまいました。

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「えっ」と思われた方も多いのではないでしょうか。トイレットペーパー使っているので、手にはほとんどつかないと思っていた人にとっては、意外だと思います。
特に「親指のところに、こんなに付くのか」という疑問もわきます。
ノロウイルスに感染している人は、下痢しているということもあって、便が跳ね返ってきて、お尻についてしまいます。このため、お尻を拭いたときに親指の付け根のところや、手首の周辺、袖に付いてしまうのです。

感染した人は、この手でトイレのあちこちに触ることになります。
 
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水を流すレバーやトイレットペーパーの周辺、水道の蛇口、ドアの取っ手などにウイルスが付いてしまいます。

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この状態で次の人がトイレに入って触ると、その人の手にウイルスがついてしまいます。

◇感染とウイルス量
ウイルスが付いたとしても、付いたかどうかわからないくらい少量であれば、大丈夫だと考えがちですが、どうなのでしょうか。
ノロウイルスは口から入って感染しますが、ウイルスが10~100個という、少ない数で感染する危険があります。
一方で、ノロウイルスはヒトの腸の中で増殖しますので、感染者の便には、1グラムに10億個という多量のウイルスがいるといわれています。1滴の中に、1000万個くらいのウイルスがいることになり、少しの量でも感染する危険があるのです。

◇手洗いの効果
そこで、手洗いが大切になります。
実は、手洗いの仕方次第で、その効果は大きく違います。その点を調べた研究があります。

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手を洗わない状態では、100万個、場合によってはもっと多くのウイルスが手についていると考えられます。
仮に100万個くらいのウイルスが手に付いていたとします。
この場合、
▽15秒水で流して洗うと、まだ1万個もウイルスが手に付いたまま、
▽ハンドソープを使い10秒もみ洗いして、15秒水で流すと数百個、
▽これを2回繰り返すと数個くらいにまで減ります。

みなさんも、自分がトイレでどのような手洗いをしているのか思い返してみてください。
特にノロウイルスのシーズンは、冬で水が冷たいので、短い時間で手洗いを済ませてしまっている人もいるのではないでしょうか。
そういった人は、この表でみると数万ないし数千個くらいのウイルスが手に残っているような洗い方ということになります。手に残っているウイルスすべてが口に入るわけではないので、必ず感染するというわけではないですが、不十分な手洗いをしていると、感染のリスクを高めてしまうことになります。

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石けんには、ノロウイルスを殺す作用はありませんが、泡立たせると手に付いたウイルスをよく落とせますし、洗う時間が自然に長くなるので、結果的にウイルスを洗い流す効果が高くなります。
石けんを使って、水が冷たければ温水にして、時間をかけて洗うことが大切です。

◇手洗いの方法
手洗いは、洗い方にも注意が必要です。
基本的な手の洗い方が厚生労働省のホームページに動画が掲載されています。
『ノロウイルス等の食中毒予防のための適切な手洗い』
▽手のひら、指の腹の部分、
▽手の甲、指の背の部分、
▽指の間や、つけ根、
▽親指と、親指のつけ根のところをクルックルッと洗う、
▽指先、
▽手首
を洗って、良くすすぐという内容になっています。

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手洗いというと、指先や手のひらを洗えばいいと思ってしまいがちです。しかし、青いインクの実験で、ウイルスが付いてしまう場所を考えると、動画にあるような親指のつけ根をクルックルッと洗うことや手首のあたりまで意識して洗う必要があることが分かると思います。
洗い残しがないようにするためには、この洗い方の基本が大切です。

◇ノロウイルスの感染と対策
ノロウイルスに感染するというのは、感染者のウイルスがトイレのあちこちに付いて、これがあとから使った人の手に付いて、さらにその手から直接口に入ったり、その手で触った食品などを通じて、口に入ったりするわけです。

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感染した人本人の手洗いや、後から使う人の手洗いが徹底されれば、感染リスクを抑えることができるわけです。

他に、感染者がおう吐した際、その処理を適切にしないと手や周りにウイルスが広がって、それが手を介して、口に入り、感染してしまいます。

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処理する際は、使い捨てのガウンかエプロンを着けて、マスク、手袋をして、ペーパータオルなどで静かに拭き取ります。そして、薄めた塩素系の漂白剤で浸すように拭き取ります。
漂白剤は「使用上の注意」をよく確認して使って、処理してください。

感染していることがわかったら、その人や周りの人は、特に注意が必要になります。
また、症状が出ていないからといって安心はできません。

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感染しても、症状の出ない人がいます。概ね10%くらいの人が症状が出ないと見られています。この人もウイルスを持っていますので、感染を広げてしまう恐れがあります。
つまり、誰が感染源になるか分からないということです。
さらに、感染して治った人も、治ってから2週間程度、長い時は1か月くらいは便にウイルスが含まれています。

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つまり、症状がなくても、また治った後も、日ごろから基本的な手洗いを徹底して行うことが重要になります。手洗いだけでなく、トイレの清掃も定期的にすることが大事になります。

◇衛生管理とノロウイルス対策
こうした日ごろの衛生管理を行うことで、感染リスクを抑えられます。
ノロウイルス対策に、手洗いが大切であることを示唆するデータがあります。

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これは、ノロウイルスを含む感染性胃腸炎の患者の報告数の推移です。
赤い線は、2016年の報告数です。この年12月中旬の時点では、大流行となった2006年に次いで多くなっています。
一方、2009年は、感染した人が少ないのが分かります。
なぜ少なかったのか。その理由はいくつかあると思いますが、一つ言われているのが、2009年は、春ころから当時の「新型インフルエンザ」が世界中に広がりました。日本はもちろん世界中で感染を抑えようと大騒ぎになりました。
新型インフルエンザ拡大に対する警戒から、この年は、冬になってもマスクやうがいと併せて、みんなが手洗いを頻繁に行ったという記憶があると思います。インフルエンザ対策としての手洗いの徹底が、結果的にノロウイルスの感染を抑える要因になったのではないかと専門家は指摘しています。
手洗いは、感染症対策の基本ということなのです。
トイレの後、食事の前、調理をする前、患者の汚物を処理した後やおむつ交換の後などには、必ず手を洗うようにしましょう。
石けんを使って、時間をかけて、洗い残しのないようにして、ノロウイルスの感染を防いでほしいと思います。

(中村 幸司 解説委員)

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