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くらし☆解説

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「トランプ次第? 2017年 私たちのくらし」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

2017年。今年のくらしについて、今井純子解説委員。

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【タイトルにある、トランプさん。アメリカの次期大統領ですね?】
そうです。今月20日に、正式にアメリカの大統領に就任する予定です。

【そのトランプさんに、なぜ、私たちのくらしが関係してくるのですか?】
それは、トランプさんが掲げている、経済政策の影響で、今、円安・株高の風が日本に吹いてきて、経済全体にとっては、晴れ間が見えてきているという指摘がでてきているからです。でも、それで本当に私たちのくらしがよくなるかどうかが問題です。日本の経済。物価。賃金の3つの点から、みていきたいと思います。

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【そもそも、なぜ、トランプさんの政策の影響で、円安・株高になっているのですか?】
トランプさんが掲げてきた経済政策の柱をみてみますと・・・
▼ インフラ投資で、企業の利益を増やして、雇用を増やそう。
▼ 大規模な減税で、企業の投資や個人消費を盛り上げよう。
▼ さらに、金融への規制を緩和することで、金融機関がおカネを貸したり投資をしたりしやすくしよう。それによって、世の中に、もっとおカネが回るようにしよう。
というものです。

【アメリカの景気は、よくなりそうですね】
そうです。もともと、アメリカの経済は、そこそこ、よい状態で、年末には、中央銀行にあたるところが金利を引き上げています。そこに、トランプさんの政策が実現すれば、景気がもっとよくなるという、期待が膨らんでいるのです。そうなると金利はもっとあがる可能性がでてきます。
では、日本はどうかというと、日銀が、長期の金利を0%程度に抑え込む政策をとっています。そうなると、金利が低い日本で投資をするより、金利が高いアメリカで投資をした方がいいという考えから、投資家が円を売って、ドルを買う動きを強めているのです。

【それで円安になっているのですね】
きょう(1月5日)は、円高の方向に進んでいますけれど、それでも、一ドル=116円台と、アメリカの選挙前からみると、12円程度の大幅な円安になっています。

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【日本経済にとっては、よいことですか?】
プラスという見方が今のところ強いのは事実です。政府や日銀もプラスになるのではと、期待しています。
日本経済は、去年の中ごろまでは、よくない=曇り空の状態だと言われ、それで、消費税率の引き上げも先送りしましたし、日銀がマイナス金利政策に踏み切るなど、金融緩和も強めてきました。

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そこに、トランプ氏による「円安」の追い風が吹いてきて、株価が一気に上がりました。年明け初めての取引となったきのうも、大幅に株価は上がりました。
▼ アメリカ経済がさらによくなれば、日本からの輸出や現地での生産が増えるのではないか。
▼ 加えて、円安になると、ドルであげた利益を円で計算した額が膨れることになり、輸出企業の利益が押し上げられる。という見方がでているからです。
OECDも、年末に、日本の今年の経済成長率の見通しを1.0%へと、それまでの見通しより0.3ポイント引き上げています。

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【経済には追い風ということですが、物価は上がることになりますか?】
物価は、上がる心配がでてきています。物価は、去年秋までの、円高、そして、原油価格も安くなっていたので、11月まで、9か月連続で前の年の同じ月と比べて下がっていました。物価2%の目標を掲げる日銀には、逆風が吹いていた形ですが、生活にはありがたい動きでした。

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ところが、まず、大統領選挙とは関係なく、原油が上がりました。去年の初めには、一バレル=30ドルを割る水準だったのが、今、50ドルを超えています。そして、選挙の後、円安が加わった形です。円安は、輸入品の価格を押し上げます。
▼ すでに、影響がすぐに反映されるガソリンは、年末に1年1カ月ぶりに、全国の平均で一リットル=130円台まで値上がりしました。灯油も11週連続で値上がりしています。
▼ また、電気代、ガス代も、2月は、すべての大手が値上げしますし、
▼  燃料の価格に応じて、国際線の通常の運賃に上乗せされる「燃油サーチャージ」も、2月から、10カ月ぶりに復活することになりました。
日本は、食料品や生活用品の多くを輸入に頼っています。今の円安・原油高が続くと、今年の前半にも、物価は上がり始めて、後半には前の年と比べて1%近くまで上がる可能性があると予想する経済の専門家もいます。

【家計にとっては痛いですね】
物価以上に賃金があがればいいのですが、これから、物価だけが上がるとなると、その分、生活がきびしくなってしまいます。さらに、きのうのこの時間でもお伝えしたように、社会保障の負担もじわじわ増えています。こうした状態では、節約志向が強まっていた消費が、さらに冷え込む心配もあります。

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【まもなく春闘も始まりますが、賃金引き上げの見通しは?】
それが、微妙です。
組合側の連合は、2%のベースアップ=ようするに、基本給の引き上げを求める方針です。また、経営側の経団連も、4年連続で、何らかの形で賃金を引き上げるよう、傘下の企業に呼び掛ける見通しですが、ベースアップには、慎重な企業が多いのです。

【円安で、企業の利益は増えそうだという話でしたよね。これは、賃金引き上げに追い風ではないのですか?】
追い風にしないといけないと思います。今の円安水準が続けば、輸出企業の利益は膨らみますし、外国の方にとってみると、日本への観光が割安になるので、観光客がもっと増えるかもしれない。株も上がっているので、小売などの利益も若干、増えるかもしれません。
ただ、企業から見ると、円安は、トランプさん次第。そもそも、はじめに言ったように、具体的な政策が決まったわけではありませんし、トランプさんの発言は、予測できません。いつ「円安が行き過ぎている!」とつぶやき、それによって、一気に反対の円高の方向に進むかもしれない。今の円安がいつまで続くかわからないと、慎重な経営者が多いからです。

【賃金もくらしも、やはり、「トランプさん次第」ということですね】
でも、賃金引き上げがトランプさん次第、いつまでも円安頼みというのは、おかしいと思います。
▼ 企業は、安倍政権ができて以来、法人税減税の恩恵もうけ続けています。この間に、多少、景気が変動しても、為替が動いても、きちんと利益をあげられるよう体質の強化に取り組んできたはずです。実際、企業が抱える現金預金は、246兆円と一年前より20兆円近く積みあがっています。先が不安だと言って、抱え続けていては、いつまでも、日本の中におカネが回りません。経済もよくなりません。

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少し見えてきた経済の晴れ間を、より強い日差しにかえていくためにも、企業は、今度こそ、社員の生活の底上げをめざして、正規・非正規にかかわらず、思い切った賃金引上げに動いてほしいと思います。

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また、長い目でみて、消費を増やすためには、政府も、多くの人が将来への不安を感じる原因となっている社会保障や財政赤字について、抜本的な改革に取り組むことが必要です。外からの風に頼るのではなく、日本として、やるべきことをやる。そういう一年にしないといけないと思います。

(今井 純子 解説委員)

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