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「2017年 社会保障はどうかわる?」(くらし☆解説)

藤野 優子  解説委員

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【今年の社会保障の見直しのポイントは?】

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子育て支援や低所得者対策など良くなる部分もあるが、一言でいうと、今年は一定以上の所得がある高齢者への負担増が目立つ。
少子化で社会保障の支え手が減っているので、高齢者であっても「応能負担」、つまり、経済的に余裕のある人にはもっと負担してもらおうという考え方が一段と進んできた。
ただ、気になるのは、必ずしも経済的に余裕のある人とは思えない、中所得の高齢者への負担増が盛り込まれている点。高齢者の負担が今年どう変わるかを中心に説明していく。

【医療・自己負担額の引き上げ】

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病院にかかった時の医療費の自己負担額が引き上げられる予定
具体的には、「高額療養費」という制度が見直される。
この高額療養費という制度は、病気の治療で高額の医療費がかかった場合、患者の負担が重くなりすぎないように、自己負担額に上限が設けられている制度。

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例えば、手術などで100万円医療費がかかった場合、自己負担割合が2割の人だと20万円を自分で負担することになるが、この制度を使うと、患者が負担するのはこの上限額まで。上限を超えた分は医療保険からまかなわれる。
そして今年は、このうち70歳以上の負担が見直される。

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具体的には、【年収が370万以上ある人】は、外来の場合、これまでひと月の上限額が4万4400円だったのが、今年8月からは5万7600円に。
また、【年収370万円未満で住民税が課税される人】も、外来の場合、ひと月の上限額が1万2千円だったのが、8月からは1万4千円にあがる。住民税非課税の人は今回は据え置き。
この他、入院費を含めた場合の上限額も、年収に応じて引き上げられることになっていて、対象になる人にとっては結構な負担になると思う。
現役世代も低所得の人が増えているので、高齢者だけを優遇できないというのはわかるが、年収370万円未満で住民税が課税される高齢者というのは、平均的な金額の年金を受け取っている人も多く含まれる。高収入の人は別としても、ここまで負担をあげても良いのか、と若干の疑問を感じる。

【介護・自己負担額の上限額の見直し】

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次は介護。まずは、自己負担額の上限額が見直される。
介護保険のサービスも、医療と同様に、利用者の負担が重くなりすぎないように、収入に応じて自己負担額の上限額が設けられている。
1人暮らしで年収が年金のみの人で、年収が383万円未満で住民税を払っている人のひと月の自己負担の上限額が、3万7200円から、今年8月からは4万4400円に引き上げられる予定。

【介護・自己負担割合の引き上げ】

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つぎに、介護サービスを利用した際の自己負担の割合も、一部の人を対象に上がる予定。
年収が年金のみで年収が383万円以上の人については、現役並みの収入があるということで、
今はかかった費用の2割を自分で負担することになっているが、これが来年の8月から3割に上がる予定。

【今回の負担増の考え方】

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経済力に応じた負担を、と(政府は)いっているが、今回の負担増の考え方をざっくりと図にしてみるとこうなる。
まず、現役並みの所得がある人は、現役並みか現役に近い負担をしてもらう、ということ。一方、住民税が非課税の世帯は低所得者と位置づけられて、今回は据え置きと負担増の対象から外れている。そして、残りが「一般所得者」という扱いで、一律に負担増の対象となっているのだが、図をみてわかるように、一般所得者には低所得に近い人から現役並み所得に近い人まで差がある。一般所得者の人数が多いから負担をあげようという事もあるのだろうが、一般所得者をもう少し細かくわけるか、あるいは、世帯ごとに、負担の総額(医療、介護のサービスに加えて、障害者サービス、子育て支援などに掛かった費用の総額)を出して、収入に応じた上限を設ける必要があるのではないか。

【年金・受給資格期間の短縮】

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一方、良くなるところもある。
年金を受け取れる人が増える。これは、年金の受給資格期間が短縮されるから。
年金というのは、これまで25年以上加入していないと全く受け取れない仕組みになっていた。このため、10年、20年、保険料を納めた人でも無年金になっていた。
それが、今年9月分(実際の支給は10月)からは、25年を10年に短縮して、加入期間が10年以上ある人には、年金を受け取ってもらおうということになった。
厚生労働省の推計でおよそ64万人の人が新たに基礎年金を受け取れるようになる。
ただし、金額は満額(40年間保険料を納めた人)に比べて少ない。
具体的な年金額は、その人が払った保険料の金額や納めた期間に応じて決まってくるが、
例えば、10年間保険料を納めた人の場合、国民年金だとひと月1万6000円。
20年だとひと月3万2000円。これだけだと低所得になってしまう。
予定どおり消費税率が10%に上がっていれば、低年金で低所得となっている高齢者に、ひと月最大5000円の給付金が支給される予定だったが、先送りされたまま。年金を受け取れる人が増えることはいいことだが、低所得高齢者をどう支援していくのか、社会保障全体の中で考える必要がある。

【今後は?】
政府は、社会保障費の伸びを抑えていく方針なので、今後も、一定以上の収入がある人に負担増を求める議論は続くし、多額の預貯金を持っている人にもっと負担してもらう事も必要になるだろう。
ただ、今回のように取りやすいところから取るというやり方だけでは限界がくる。支え手が大きく減る時代にあわせて、社会保障や税の負担の仕組みをどう改革していくのか。また、年をとっても体力に応じて働きやすい社会に変えるための議論も合わせて進めてほしいと思う。

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