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「年末年始 お餅を詰まらせないために」(くらし☆解説)

中村 幸司  解説委員

年末年始になると、お餅を食べる機会が多くなってきます。この時期、お餅をのどに詰まらせてしまい、中には死亡するケースが毎年相次ぎます。
こうした事故を防ぐにはどうしたらいいのか考えます。

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◇お餅をのどに詰まらせる事故は、どれくらい起きているのか。

1月と12月、つまり年末年始が多いのです。
正月の三が日について、東京消防庁管内のデータがあります。

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平成27年までの5年間をみてみますと、お餅をのどに詰まらせて病院に運ばれた人は、100人を超えています。このうち90%以上が65歳以上の高齢者でした。
亡くなった人は8人です。すべて高齢者でした。
東京消防庁の管内の三が日だけで、この数字です。

◇のどの機構

のどの部分の断面をみてみます。

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呼吸をするときは、気道があいていて、食道の方が閉じています。これで肺に空気が送り込まれます。
ものを飲み込む時は、気道の入り口がふたされて、食道の部分があくようになっています。

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のどが詰まる多くの場合、気道の側の入り口を餅がふさいでしまうのです。

◇のどに詰まらせてしまう要因

のどに餅が詰まる要因を見てみます。

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一つは、お餅がくっつきやすいということがあります。これは温度と関係があります。餅は60度など熱々の時より、40度、30度と温度が低くなった方がくっつきやすいことがわかっています。
30~40度というと、ちょうど体温に近いので、口の中で噛んで飲み込むころになると、くっつきやすい温度になってしまいます。

良く噛んで、唾液と混ざると詰まりにくくなります。
しかし、お年寄りは
▽唾液が十分出ない、
▽歯が悪く良く噛めない
といったことがあるため、くっつきやすいのです。

他にも、お年寄りは
▽食べ物を飲み込む能力が下がってくる、
▽気道に食べ物が入りそうになったとき、「ゴホン、ゴホン」とせき込みますが、そうした反射が弱くなっていることがあります。

▽食べ方も要因になります。「早食い」や「詰め込み食い」です。
お年寄りは、そうした食べ方をあまりしないと思いますが、知らないうちに、それに近い食べ方をしてしまうことがあるのです。

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これは食べ物を食べている時の画像です。食べ物が黒く映るようになっています。赤丸の部分に注目してください。
のどの奥に食べ物がたまっているのがわかります。飲み込む前から、食べ物の一部が流れてきてたまるのです。お年寄りだけが、こうなるというわけではありません。この映像は30代の男性で、だれでも食べ物がたまります。

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たまっていた場所は、気道のふたの上のポケットのような部分です。若い人は特に意識しないでも、たくさんたまる前に飲み込んでいるので問題はありませんが、お年寄りですと、ここにお餅がたまってきても、飲み込まないでいることがあります。
お餅がたくさんたまると、いわば「詰め込み食い」のような状態になってしまいます。

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そのお餅が気道をふさいで、のどが詰まることがあるわけです。
つまり、口の中の歯や舌の周辺にある食べ物が詰まることもあれば、のどの奥にたまったものが詰まることもあるのです。

のどに詰まらないようにと、お餅を小さくして食べるようにしている人もいると思います。それは食べやすくなるので、良いことですが、お餅を噛んで口の中が少なくなってきたからといって、次のお餅を口に入れると、その時、のどの奥には餅がたまっているかもしれません。
しっかり飲み込んでから、次のお餅を口に入れるようにすることが大切です。
このように、お年寄りには、のどに詰まらせやすい要因がいろいろあるということなのです。

◇のどに詰まらないようにするには、どうしたらいいのか

飲み込む力の弱い人などは、まず、お餅を食べても大丈夫か判断する必要があります。

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その上でお餅を食べる場合、これまでみてきたように、
▽ゆっくりと噛んで、唾液とよく混ぜる
▽食べやすい大きさに、小さく切る
▽しっかりと飲み込む
といったことがあります。

さらに
▽お茶や水を飲んで、のどを湿らせておく
こうすることで唾液があまり出ないお年寄りでも、のどに餅がくっつきにくくなります。
▽食べながら、おしゃべりをしない
声を出しているときは、気道があいているので、何かの拍子でお餅が気道をふさいでしまう危険性があります。食べることに集中して、飲み込んでからおしゃべりをするというようにしてください。

▽姿勢も大事です。

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背中が丸くなっていると、あごが上がってしまいます。あごが上がると、食べたものが気道に入りやすくなって、飲み込みにくくなってしまいます。
足をブラブラさせると体が揺れて不安定になり、首の部分も不安定になります。そうすると、飲み込むための首の筋肉がうまく動かせなくなって、飲み込む能力が低下してしまいます。
図の右にあるように
▽足を床につけて、深く腰かけ、体を安定させる
▽軽くあごを引く
といった姿勢で食べることが基本です。
こたつで食べる時なども、体を安定させて、あごを引くような姿勢を心がけてください。

◇のどにお餅が詰まってしまったら、どうするか

食べ物を食べていた人が、突然、首をおさえるポーズをとった時とか、顔色が真っ青になった時は、気道がふさがっていることが考えられます。周囲にいる人は、大声で助けを頼んで119番通報をしてもらい、AED(自動体外式除細動器)の用意も依頼します。

意識があるうちであれば、2つの方法を行って下さい。

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▽一つは、片手で下あごを支えて、肩甲骨の間を手の付け根の部分で、何度も繰り返し強く叩きます。「背部叩打法」といいます。
▽もう一つは、おなかを突き上げる方法です。体を密着させて、後ろから腕をまわします。片手で握りこぶしを作って、反対の手で包むようにして、へそとみぞおちの中間を圧迫するように突き上げます。「腹部突き上げ法」といいます。
こちらは、妊娠している人や1歳に満たない乳児には、行ってはいけませんので、注意が必要です。

ただ、いざというとき、できるか不安もあると思います。
119番に通報した時、消防はがこうしたやり方を電話で指導してくれます。指示に従って、あわてないで行動することが大切です。

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のどに詰まった時に、周りに誰もいないと、119番通報したり、応急手当をしたりしてくれる人がいないということになります。ですから、特にお年寄りは、お餅を一人で食べないようにすること、これが大切になります。

◇「掃除機で吸引」は有効か

のどに詰まったものを掃除機で吸い取る行為について、専門家は「勧められない」と話しています。
掃除機といっても、ノズルの形から考えてもうまく口に入りません。無理に口に入れると、口の中を傷つけたり、詰まったものをのどの奥に押しこんだりして、かえって状況を悪くする危険もあるといいます。
119番通報して、ただちに2つの方法を繰り返し行うことの方が大切です。一刻を争いますから、掃除機を探している余裕もありません。

もう一度、のどに餅を詰まらせないためには、どうしたらいいのかを見てみます。

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これらは、お年寄りに限らず、子どもや我々が注意したいことでもあると思います。
こうしたことができているか、もう一度考えてみて、良い新年を迎えてください。

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