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くらし☆解説

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「廃炉ロボコンに挑め!」(くらし☆解説)

土屋 敏之  解説委員

◇福島第一原発の建屋内を模した階段を登る、手作りのロボット。 長い首を伸ばして二階の様子を調べるロボットや地面すれすれに浮かんで地形を調べるロボットも。
12月3日、福島県で「廃炉創造ロボコン」が開催されました。全国の高等専門学校の学生たちが、アイデアと技術を競いました。その結果は!?

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【ロボコンと言えば毎年NHKで放送している「アイデア対決・ロボットコンテスト」がありますが、「廃炉創造ロボコン」というのは?】
                                     
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福島第一原発の廃炉を進める力になりたいと地元の福島高専が全国に呼びかけて、文部科学省のプロジェクトとして初めて行われたものです。原発内には、これまでも遠隔操作ロボットが投入されてきましたが、壊れたり戻って来られないものもあって難航してきました。
そうした中、若い世代のアイデアや技術を今後にいかせないか?そしてなにより、40年かかると言われる廃炉に向けた人材の育成が期待されています。
高等専門学校は一般に中学卒業後から5年間、科学技術などを学ぶ高等教育機関で、廃炉に40年というと、いま二十歳の学生が60歳になるまでですから、まさに中心になる世代とも言えます。大会には、13の高専から15チームが名乗りを上げて、実際に廃炉技術の研究を行っている楢葉遠隔技術開発センターで開催されました。
                                                                          
【ロボコンと言うからには何か競技を行う?】

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原子炉建屋内の作業を想定して、2つの競技が設定されました。ひとつは、階段を登って2階に荷物を運んだり、状況を調査する、というもの。原発の階段通路の幅や角度を再現した「モックアップ階段」で行われます。もう一つは、凸凹だらけの「ステップフィールド」を踏破して、地形などを調査するもの。いずれも実際に廃炉用ロボットの開発テストに使われているもので、各チームはどちらかを選んで最長10分以内で実施します。
                                                                                 
【どちらか一方でいい?】

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ただし、廃炉ロボコンならではの厳しいルールがあります。まず、実際の現場には人間が入れないということで、ロボットを直接見ることはできず、カメラの映像を画面で見て遠隔操作します。 しかも、ロボットの照明が照らす範囲しか見えません。画面にこんな枠を貼って、視野を制限します。その上、厚いコンクリートの壁で電波が届かないので無線操縦は制限され、基本的にケーブルを引っ張っていくことになります。さらに、放射線対策をしていないロボットはカメラや半導体部品が壊れてしまうので、競技時間が半分の5分に減らされます。
                                                                                 
【放射線対策というのは、どうすればいい?】

福島高専のロボットでは、カメラの周囲を鉛の板と、銅の粉を含む特殊な板を自作して、二重に覆っています。こうした工夫を各チームが行ってきました。
また、開催に先立って、学生たちが福島第一原発などを見学するサマースクールも行われました。特に遠隔地の若者には、これまであまり身近とは言えなかった福島や原発事故のことを真剣に考えるきっかけにもなったようです。
                                   
【そして、いよいよ競技?】

はい、ただし、最初の種目はプレゼンテーションです。

廃炉ロボコンがユニークなのは、原発内の作業にどんな難しさがあるのか、学生自身に考えさせることです。そこで、自ら考えた課題と解決策を発表してもらいます。無線が制限されていると言いましたが、富山高専は、電波が届かない壁の向こうまでは有線で進み、そこから無線を使用と、組み合わせることを考えました。舞鶴高専は、障害物の多い建屋内で空中に浮かんで調査できるよう、ヘリウム風船をつらねてケーブルを伸ばすというアイデアです。
こうしたプレゼンも審査員が採点し、ロボットの実演との合計点で成績を決めます。
そして選手宣誓に続いていよいよ実演開始なんですが、実はトラブルが続出しました。

まず、階段に挑んだロボットは、思うように上れないものが相次ぎました。傾斜が41度という、かなり急な階段で、このようにベルトが滑ってしまうんです。奈良高専のロボットは滑り止めなど工夫を重ねて、途中まで上れましたが、残念ながら時間切れでした。
熊本高専は無線に制限があってもドローンを飛ばせるよう、言わば中継車を併せて使うアイデアでしたが、操縦者がドローンを直接見られないと飛ばすのは難しく、衝突してプロペラが折れてしまいました。
一方、ステップフィールドでは、段差にぶつかってベルトが切れてしまうものもありました。そして、ヘリウム風船をつらねてプロペラで進むアイデアの舞鶴高専。学校でテストした時はうまくいったそうですが、会場では微妙な風が吹いていたらしく、自由に動けませんでした。
結局、2階までのぼりきったり、ステップフィールドを完全に踏破できたロボットは1台もありませんでした。アイデアが実現できなかった学生たちは本当に悔しそうでした。最優秀賞には、8輪車2台をゆるやかに連結することで、押し上げたり引っ張ったり、助け合って段差を越えるアイデアでステップフィールドをなかばまで踏破した大阪府立大高専が選ばれました。
                                                                                  
【踏破できた学校が1つも無かったとは、今回のロボコンは失敗だったということ?】

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いえ、結果は予想外でしたが、それだけ難易度が高かったのだと言えるかもしれません。高等専門学校の学生は技術力では大学生以上の面がありますし、NHKの高専ロボコンの経験者も多かったのですが、それでも難しかったと口を揃えていました。現実の廃炉作業を考えると、専門家でも原発内の状況把握などには苦労している状況もあるわけですよね。
                                                                                   
【そう考えると、廃炉はあらためて大変なことだとも感じるが?】

そうですね。このロボコンは来年以降も開催予定で、学生たちは「ぜひ再挑戦したい」とか「卒業後の仕事や研究に生かしたい」と話していて、こうしたことこそが大きな成果だと思います。
もともと、廃炉創造ロボコンの大目標は、将来の「人材育成」です。企画した福島高専の鈴木准教授も、「廃炉というとネガティブなイメージがあるが、遠隔操作や放射線防護など宇宙開発にも共通・匹敵する最先端のチャレンジの場で、そのやりがいも知ってほしい」と話していました。
今回悔しい思いをした若者たちの中から、近い将来、画期的なアイデアや技術が生み出されるかもしれません。だからこそ、廃炉“創造”ロボコンなんですね。

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