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「政治の課題と国民の視線」(くらし☆解説)

島田 敏男  解説委員

☆7月の参議院選挙の後、オリンピック、パラリンピックに関心が集まり、政治の課題を巡る国会での論戦の方は暫くお休みの状態が続いていましたね?

◇そうですね。でも国内政治でも外交・安全保障の分野でも様々な動きは続いていまして、それを議論する臨時国会が間もなく今月26日から始まります。
◇きょうはそれを前に、最新のNHK世論調査を見ながら国民の皆さんの見方、考え方を探っていこうと思います。

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☆安倍内閣の支持率ですが、変化があったようですね?

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◇はい。一言で言えば、上向き傾向が見えます。
◇今月の調査で安倍内閣を支持するは8月より4ポイント上がって57%、支持しないは6ポイント下がって26%でした。
◇安倍内閣の支持率は、7月の参議院選挙の前から緩やかに上向いていたんですが、選挙の後も、その傾向が続いている形です。

☆一時期のように経済政策に期待が高まっているというわけでもないですよね?

◇政府関係者でも、最近は「アベノミクス」という言葉をあまり使わなくなっていまして、
経済政策に対する評価が支持率を支えているということでもなさそうです。
◇では何だろうかと考えると、6月頃から北朝鮮の弾道ミサイル実験が相次いだり、尖閣諸島周辺で中国の船の活発な行動が目立ったりした環境の変化と無縁ではなさそうです。

☆日本を取り巻く環境の変化ですか?

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◇そうですね。こちらをご覧ください。7月と今月、国が今最も力を入れて取り組むべきだと思うことを、6つの選択肢の中から1つ選んでもらいました。
◇7月の調査では社会保障や景気対策が多くて、外交・安全保障は少なかったんです。

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◇それが今月の調査では外交・安全保障が5ポイントもアップして、社会保障、景気対策に続く3番目に浮上しました。

☆身近な課題の子育て支援や格差の問題を上回ったんですね?

◇好ましい状況ではありませんが日本を取り巻く環境が荒々しくなり、特に今回の調査の開始直前には北朝鮮が「5回目の核実験で核弾頭の爆発に成功した」と発表していました。
◇こういう時には、政府に対して「しっかりやってくれ」という世論が強まるものでして、それが内閣支持率にも影響していると考えることができます。

☆外交や安全保障問題に熱心な安倍総理に対する追い風になっているんでしょうか?

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◇そういう面が見えます。今月初めに中国の杭州で、G20サミットの合間を縫って行われた習近平国家主席との日中首脳会談の結果に対しても評価が高かったです。
◇尖閣諸島周辺での中国側の行動に自制を求め、偶発的な衝突を避けるための対話を重ねることで一致したことを評価するかどうか聞きましたら、評価するが67%に上りました。

☆これは会談の成果に対する評価なんですか?

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◇G20サミットを開いている最中だったので、中国側が強硬な反論を控えたという面もあって、それも含めた全体の受け止めということでしょうね。
◇詳しく見ると与党支持者では8割が評価していて、さらに野党支持者や無党派層でも
6割前後が評価という結果です。
◇北朝鮮の核実験や弾道ミサイル実験を封じるには、中国の果たす役割が大きいですから、対中国外交への期待は益々高まっていくと思います。

☆自民党の中では安倍総裁の任期延長の話が出ていますね?

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◇二階幹事長が検討すると言っていますね。安倍総理の自民党総裁としての任期は今の党規約で2018年・再来年の9月までとなっていますが、これを延ばそうという議論です。
◇総理大臣の在任期間を延ばすことに繋がるこの議論に対して、全体では望ましい28%、望ましくない30%、どちらともいえない35%で大きく割れています。

☆かなり複雑に割れているようですね?

◇「安倍1強」という状況にてこずっている野党の支持者は望ましくないが過半数でして、無党派層もそれに近いです。
◇一方、与党支持者では望ましいが多いんですが、どちらともいえないも少なくない。
◇ポスト安倍を窺う石破さんが言うように「任期切れの時に考えるべきことだ」という
時期尚早を指摘する声も少なくないということです。

☆まず大事なのは、任期が切れるまでの間の政治課題に対する取り組みですよね?

◇そうですね。そこで注目しておきたいのが、原子力発電所の再稼働などの原子力政策の進め方です。日本の将来を大きく左右する、安倍内閣が避けては通れない課題です。

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◇こちらは原子力発電所の運転再開に対する考えを尋ねた結果でして、ことし2月には
賛成20%に対して反対38%で、この比率はほぼ1対2でした。
◇それが、4月の熊本地震の後、西日本でも大地震の際の原発への影響が議論されるようになりまして、賛成と反対の比率が1対3近くまで開いています。

☆反対が全体の45%に上った今月の数字を詳しく見るとどうでしょう?

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◇野党支持者と無党派層では再稼働反対が多数を占めています。これに対し与党支持者を見ると賛成、反対、どちらともいえないが接近していて大きく割れています。
◇政府は「原子力規制委員会の厳しい審査に合格した原発は再稼働しても問題はない」と強調しますが、与党支持者にも十分に浸透していないのは明らかです。

☆鹿児島県知事が川内(せんだい)原発の運転停止を求めたりしましたよね?

◇当選して間もない三反園知事が、九州電力に対して運転を一時中止して安全性を再点検するように要請したのも、こうした世論を背景にした行動です。
◇大災害の時の住民の避難、それに再稼働すれば必ず出てくる放射性廃棄物・核のゴミの処理など難問ばかりです。安倍内閣が真剣に向き合う必要がある大きな課題です。

☆今月26日からの臨時国会を前に、各政党の支持率はどうなっていますか?

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◇今月の自民党の支持率は40・2%で、参議院選挙の後も自民1強に変化はありません。
◇これに対し、新しい代表選びの最中の民進党は10%を割っています。15日に決まる新しい代表のもとで、野党第一党として他の野党との連携を図るのか、それとも民進党の独自性を強調するのか。明確な方針を打ち出すことが大事です。

☆現在の国会の議席配分はどうなっているんですか?

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◇こちらです衆議院は自民・公明両党で3分の2を占めて与党が圧倒的優位です。
◇これに対して参議院は、自民党が27年ぶりに単独過半数を回復したとはいえ、与野党の議席差は少ないです。

☆この議席をもとに持ち時間が決まり、論戦が交わされるんですね?

◇国会論戦というのは政府・与党対野党の言葉によるぶつかり合いで、その激突を通じて国民が知りたいことが次第に見えてくるというのが本来の姿です。
◇日本を取り巻く安全保障環境が荒々しいものになりかけているからこそ、感情に流されないで、冷静で将来を見据えた奥行きのある議論を交わしてもらいたいと思います。

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