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「エシカル消費って、何?」(くらし☆解説)

広瀬 公巳  解説委員

「エシカル消費」という言葉あまり聞き慣れていないものかもしれません。
でも毎日の買い物の際にちょっと考えてみたいテーマです。

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私たちは毎日、何を基準に買い物をしているでしょうか。
バナナの例で考えます。
1.鮮度や糖度といった品質、2.価格、3.農薬などについて安全性。
基本はこの3つだと思います。
でもそれだけでしょうか。
バナナが安くても、もし、違法に輸入されたものだったらどうでしょう。
逆に値段が高くてもたとえば、
フィリピンの台風の被災地の復興のためになるならどうでしょうか。
エシカル消費というのは、消費の4つ目の要素である
「倫理(エシカル=ETHICAL)」を考えていこうというものなんです。

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(注目されるエシカル消費)
そのエシカル消費は消費者基本計画に盛り込まれています。
環境や被災地の復興、途上国支援など社会的課題に配慮した
消費を促すとされています。
東京オリンピックで調達する物品も持続可能なものを選ぶという取り組みが始まっています。

(児童労働の問題)
買い物は毎日のことで気になるテーマですが難しい課題なのでしょうか。
「児童労働」の問題でご説明します。
こちらはインドの人権活動家のカイラシュ・サティヤルティさんです。

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おととしノーベル平和賞を受章しました。
写真は目が不自由なのにサッカーボールを作らされていた女の子です。
サティヤルティさんは、自分の身の危険をかえりみず   
子どもを児童労働の現場から救出する活動を
30年以上にわたって続けてきました。
このサティヤルティさんが、
児童労働をなくすために大切だと訴えているのが「エシカル消費」なんです。
サティヤルティさんが先週、日本を訪れましたので、
エシカル消費がなぜ必要なのか、直接、話をきいてきました。
 
【サティヤルティさん】
「児童労働が関わっていないと
 保証される製品を使用してください。
 これは消費者の意識の問題です。
 子どもの奴隷によって作られていることを知りながら
 これらの製品を買い続けることは、加担しているのと同じことです。
 エシカル消費と呼ばれる活動は、
 商品が児童労働によって
 作られていないかを問うことから始まります。」

(広がるエシカル)
価格や品質だけでなく商品がだれによってどう作られたのかにも
目を向けないといけない問題です。
児童労働だけではなく、
エシカルであることを付加価値にした商品への関心は日本でも高まっています。
先週、エシカルな商品を紹介しようと販売店などが都内のデパートで開いたイベントを取材しました。
エシカル消費は、何を買うのかという選択で自分の価値観を確認できるものとして注目が集まっています。
会場では品物が持つ背景に目を向ける人が熱心に説明を聞いていました。
コーヒーなど農産物もありますが、
ライフスタイルや生き方にもかかわってくるという意識からエシカルを売りにする商品は、
アクセサリーやファッションの分野にも幅が広がっています。
訪れた人は「カワイイ物を買うだけでちょっとだけ社会にいいことをした気分になれる」と話していました。
会場ではいろいろなものが販売されていました。
その一つが見た目は同じですが普通のバナナとちょっと違うバナナです。
皮の厚い種類のバナナで、生産者から直輸入、
児童労働が行われていないことはもちろん
フィリピンでどのようにして作られているのか、情報を公開して販売しています。

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フィリピンで生産されているバッグもありました。
使い終わった飲み物のパッケージで作られています。   
社会的な弱者を支援しようというものです。
現地を取材したことがあるのですが
職を失った貧しい女性の収入の助けになっていました。
雇用対策ということもあるのですが
ゴミの再利用というエコの価値も加わっています。

(エシカルについて意識)
エシカル消費についての意識調査です。
エシカルな商品を買う理由は、
似たような商品なら社会貢献につながるほうがよい、
環境に配慮する満足感が得られる、
子どもたちの未来に役立てたい、といった点があります。

一方で、買わない理由は、
本当に社会貢献につながっているかわからないから、
価格が高いから、
欲しい商品で社会貢献につながるものがないから、といった点があります。

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(課題)
エシカル消費には課題もあります。
まず、誰がエシカルであることを決めるのかという問題です。
誰かが決めた価値の押し付けになってはいけません。
次にどういう基準で決めるのかという点です。
途上国を支援するつもりで行ったことが
自立を妨げたりすることもあります。
様々な価値観がありますので
あちらをたてればこちらがたたずということもあります。
基準がはっきりしていないと、誤解やトラブルのもとにもなりかねません。
消費者庁が研究会を発足させあり方の検討を行っているところです。
そして最大の課題が「認証」です。表示の問題です。
今もフェアトレードマークやエコマークのように商品に印がついているものもありますが、
逆に特にマークがついていなくても被災地支援や地産地消など
実はすでに私達の身のまわりにもたくさんのものがあります。
やはり最後は自分で判断するしかないというのが実情ですが、
それでも「何がエシカルなのか」何か目安となる基準は欲しいので
ノーベル平和賞の受賞者の考えを聞きました。

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【サティヤルティさん】。
「わたしは極めて単純だと思っています。 
 自分にとって良いことが、他の人にとって、
 また、地球にとって悪いことでなければ、それは倫理的です。
 自分が人生を楽しんでいても、
 それが他の人の犠牲やいかなる形であれ、
 搾取や虐待の上に成り立つものであってはなりません。
 自然に対する搾取もです。
 それは起きてはならないことです。」

(考える消費)
他人や自然から搾取しないということだとサティヤルティさんは話していました。
エシカル消費は、価格や品質だけでなく、思いやりや応援という気持ちもつ、
「考える消費」なのだと思います。
5月は消費者月間であり世界フェアトレード月間でもあります。
お買い物の際には、サティヤルティさんの考え方も思い出して
参考にされてみてはいかがでしょうか。

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