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「くらしのヒント 災害に備える」(くらし☆解説)

二宮 徹  解説委員

あすで東日本大震災から5年がたちます。皆さんは災害への備えはいかがでしょうか?
今回は「くらしのヒント 災害に備える」と題して、身近な備えを考えます。
 
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<防災は面倒?>
東日本大震災の後、当時は災害に備えたけれど、最近は何もやっていないという人がいます。
防災と聞くと、面倒なことをあれもこれもしなければいけない、買わなければいけないと思って、腰が重くなり、つい後回しにしてしまう人もいます。
最近の非常食はおいしいものや調理が簡単なものが増えていますが、家族全員分を揃えるとなると、かなりの分量です。しかも、首都直下地震や南海トラフなどの大地震対策では、1週間分の備えが求められていますので、買うのも、置いておくのも結構な負担です。後回しにしてしまう気持ちもわかります。
そこで、少し肩の力を抜いて、日常生活の中で行う備蓄を考えてみましょう。

<ローリングストック>

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「日常生活の中で備蓄」は「ローリングストック」といって、防災関係者の間でも、最近、注目を集めています。「日常備蓄」とか「循環備蓄」とも呼ばれていて、ふだんから日用品や食べ物を少し多めに買っておいて、使いながら買い足していくことです。
米やトイレットペーパーを買う時など、まだ十分あるうちに早めに買い足し、米なら1袋、トイレットペーパーは1パックなど、常に少し多めにあるようにします。

<役立つ日用品>

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災害時に役立つ日用品はいろいろあります。
ラップは防災の万能選手です。東日本大震災でも大活躍しました。お皿に貼って使うと、洗い物を減らせるほか、手が洗えなくてもおにぎりが握れます。応急的に包帯の代わりにできますし、体に巻けば保温効果があります。通帳やスマートフォンなど、貴重品を包んで、濡れないようにすることもできます。
ごみ袋も役立ちます。防寒着やレインコート代わりになるほか、箱にかぶせて水を運んだり、貯めたりできます。段ボールにかぶせればトイレとしても使えます。
また、ウェットティッシュは体をふくのに使えます。除菌できるものがおすすめです。
携帯カイロは、冷えたおにぎりや弁当を温めるのに使えます。
このように、ふだん家にあるものが意外と役立ちます。

<重要3品目>

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備蓄の中で、特に重要なのが、水、カセットコンロ、米や乾麺などの主食です。
カセットコンロのボンベは1本1時間程度です。1日に1本使うと、1週間で7本必要です。ボンベもローリングストックをします。

このうち、水は、農林水産省の備蓄ガイドなどでは、1人1日3リットル必要とされています。1週間分だと21リットル、かなりの量です。
ペットボトルの水をよく買う人は家族の人数に応じて常に何箱か余っているようにします。
ただ、1日3リットルといっても、実は飲み水に必要なのはおよそ1リットルで、残りは調理用です。このため、飲料用の一部は、緑茶や麦茶、ウーロン茶でも構いません。ふだん飲んでいるものがあれば、それを買い置きしてください。

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一方で、浄水器や水道水の備蓄は少し難しくなります。
浄水器の水は消毒効果がないので、常温では1日程度しか保存できません。
水道水は、雑菌の繁殖を抑えるため、ペットボトルの口元いっぱいまで入れてからふたをして、涼しいところに置くと3日程度は保存できます。
頻繁にくみ替えるのは大変なので、私は、水はローリングストックをせずに、5年保存できる水を箱で買って、物置に放ってあります。
そのほか、水を運搬するためのポリタンクを持っています。最近は折りたためるものや袋のものもあります。何日か後に給水が始まったらこれで水を運ぶと便利だと思います。

<主食をローリングストック>
水を確保したら、次は食べ物ですが、災害が起きたら、最初は冷蔵庫や冷凍庫の肉や魚、冷凍食品を優先して消費します。そのあと、備蓄してある食材を食べます。

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そこで、柱にしたいのが、やっぱりお米、それにうどんやパスタなどの乾麺です。
米や乾麺は、もともと保存期間が長いから、備蓄しやすく、無洗米だと研がないので水が節約できます。乾麺は、茹で時間が短いものを選べば、ガスボンベを節約できます。
米は、炊飯器が停電で使えない場合に備え、鍋で炊けるようになっておく必要があります。浸したコメの上、第一関節まで水を張るなど、いろいろなやり方があります。水の量や火加減を知るため、一度作ってみてください。
農林水産省の備蓄ガイドでは、米一合で、水210ミリ。ふたをしないで強火で沸騰させる。軽くかき混ぜたあと、ふたをして15分間弱火で炊き、15分蒸らすという方法を紹介しています。
鍋で炊いたことがない人は、やってみてください。

<おかずもローリングストック>
そして、おかずです。
じゃがいもやにんじん、たまねぎ、かぼちゃなど、日持ちする野菜がローリングストックに向いています。ルーがあれば、野菜カレーが作れます。
当たり前ですが、スーパーなどで冷やさずに売っている野菜は比較的日持ちします。
果物では、りんごが日持ちします。
日持ちする野菜や果物を、生活しながら、多めに買い置きしてください。

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一方、肉や魚は乾燥肉や干物が使えますが、最初は無理せず、お好みのレトルト食品や缶詰の買い置きを多めにして、循環させるので良いと思います。
栄養のほか、アレルギーや糖尿病などの持病に注意したうえで、好きなものを選んでください。

備蓄で意外に重要なのは、「好きなもの」「食べ慣れているもの」です。災害だからこそ、好きなものを食べて、元気にならないといけません。
今の防災の課題は、備蓄や訓練に腰が重い人や関心がない人に備えてもらうことです。どうしたら災害時でも好きなものを食べられるか考えることからでもいいので、まず防災の一歩を踏み出してほしいと思います。

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