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くらし☆解説 「どうかわる?今年の社会保障」

藤野 優子  解説委員

今回のくらし☆解説は「どうかわる?今年の社会保障」。
 
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▽ 今年からまた社会保障はいろいろ変わるのか。

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▼社会保障の費用が増加しているので、全体的には保険料などの負担も一層増えてくるのだが、その一方で、今年は「低所得者への生活支援」が強化されるのが特徴。色々と変更点はあるが、きょうはこの3つ「低所得の高齢者への支援」「ひとり親世帯、多子世帯への支援」「非正規で働く人の年金の見直し」を中心に見ていきたい。

▽まずは「低所得の高齢者への支援」というのはどういうものか?
 
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▼ これは、低所得となっている年金受給者に給付金を支給しようというもの。
65歳以上で住民税非課税の人などに、一度だけだが、一人3万円の臨時給付金を政府は支給する方針。これから国会審議が行われるが、対象となるのはおよそ1280万人。年金受給者の3割にあたる。
 
▽ なぜこうした給付金が支給されるのか?

▼ 政府は、現役世代は賃上げによってアベノミクスの恩恵を受けられるが、年金生活者は、アベノミクスの恩恵を受けられない。だから、そうした人たちを支援する、と説明している。
でも、これに必要な財源はおよそ4000億円。
現役世代でも賃金が上がっていない人もいるし、「高齢者を優遇しすぎている」とか、参議院選挙の前のバラまきだとの批判も出ている。それに、一度だけ支給しても低所得者対策としてどれだけの効果があるのか疑問。制度の中にきちんと低所得者対策を組み込んで、それを継続していくことが本来重要なのではないかと思う。

▽ 二つめのひとり親世帯や子ども多い世帯への支援というのは、どういうもの?
 
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▼ まずは、所得の少ないひとり親家庭に支給される「児童扶養手当」。
二人以上の子どもがいて、所得の少ない家庭には今年8月分から増額される見通し。
1人目の額は変わらないが、二人目以降の加算額は最大でこのような金額(これまでの倍の額)になる見通し。
 また、幼稚園や保育所の費用も、子どもが多い低所得の家庭の負担が軽減される見通し。
年収およそ360万円未満の世帯は、来年度から2人目の保育料が半額に、3人目以降は無料となる見通し。
遅れてきた子どもの貧困対策がようやく一歩前進したと言えると思う。

そして、もう一つ、今年影響が大きいのは、「非正規で働く人たちの年金の見直し」。非正規で働く人たちの将来の年金を少しでも手厚くするために、厚生年金の加入基準を緩めることになった。

▽ 具体的にどんな基準になるのか?
 
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▼ 今の基準は、週の労働時間が正社員の概ね4分の3以上(週の労働時間が40時間の会社が多いので、週30時間以上)となっている。
それが、今年10月からは、これらの条件(「週の労働時間が20時間以上」「月収が8万8千円以上」「勤務期間が1年以上」「501人以上の企業」)を全て満たす場合、厚生年金に加入することになる。

▽ 対象となるのはどのくらい?
 
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▼ そこが問題。当初、政府は400万人を対象にしようとしていたが、中小企業などが負担増に反発し、「501人以上の企業という条件」が加わったため、結局25万人と限定的になった。
いま、非正規で働く人たちの中には厚生年金に入れずに国民年金に加入している人たちがたくさんいるのだが、国民年金の保険料は定額で所得に応じた負担になっていないため、負担が重くて払えない人も多い。このままでは将来、無年金や低年金になる人が急増することが避けられない。年金制度が格差をこれ以上広げないよう、非正規の人たちの厚生年金加入をさらに広げていく必要があると思う。

▽ 厚生年金に加入すると、実際、保険料や年金額はどのくらいになるのか?
 
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▼ 個別のケースによって違いはあるが、例えば、夫が自営業で自分もパートで働きながら国民年金に加入している人の場合、月収が9万円だと、今、ひと月およそ15000円の保険料が7500円程減額となる。

▽ 厚生年金の保険料の半分は企業が負担するからか。

▼ そう。これは、非正規で働く男性であっても、同じ月収なら同じ金額になる。
そして、受け取る年金も、仮に20年間月収が9万円だったとすると、年間に11万5000円ずつの増額となる。

ただ、事情が違うのは、パートで働きながらこれまで夫の扶養に入っていた人。
第3号被保険者といわれる人だが、この人については、基準に該当すると、厚生年金に入ることになるので、新たに保険料を負担することになる。

▽ どのくらいの負担になるのか?
 
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▼ 例えば、月収が9万円の場合、新たに月々の保険料およそ7500円を負担することになる。

▽ これまで負担がなかったことを考えると、ちょっと重い 負担。

▼ そうかもしれない。ただ、目先の負担は増えるが、将来受け取る年金額は増えるメリットがある。仮に20年間9万円の月収だったとすると、年金額は年間でおよそ11万5000円増える。

▽ でも、これでは、厚生年金に入るのが得なのか損なのか、よくわからない・・・

▼ 確かにこれでは少ないと思う方もいるかもしれない。ただ、公的年金は終身でもらえるし、病気やけがで障害が残った場合にも障害年金を受け取れる。最近は、夫に先立たれた後、年金が少なくて生活が苦しくなる女性、中には貧困状態に陥る女性も多くなってきている。これから年金も先細りしていく時代。自立した老後を送れるように、少しでも収入を増やして年金の受取額を増やしておいたほうがいいと私は思う。

▽ それと話は変わるが、消費税率10%になった時に軽減税率を入れる方針が決まったが、心配なのが社会保障の財源。社会保障にはどんな影響がでそうなのか。
 
▼ まず「総合合算制度」という制度が先送りされる見通しになっている。
 
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この制度は、医療・介護・障害・保育といったサービスを受けた時に支払う自己負担の総額が重くなりすぎないよう、世帯の所得に応じて上限額を設定しようというもの。これは、社会保障と税の一体改革の中の低所得者対策の柱だった。これが、先送りされる見通し。
 
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それ以外にも、無年金や低年金の高齢者を救済するための対策もまだ実施されていない。こうした優先順位の高いところにしわ寄せがきては、何のための消費増税だったのかという話になりかねない。きのうから国会も始まったが、所得税などの改革や他の分野の歳出の見直しで社会保障の安定的な財源が確保できるよう、しっかりと論議を深めてほしい。

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