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くらし☆解説 「TPP大筋合意 暮らしへの影響は」

合瀬 宏毅  解説委員

岩渕)こんにちは。くらし☆解説です。今日のテーマは「TPP大筋合意 暮らしへの影響は」です。合瀬宏毅(おおせひろき)解説委員とともにお伝えします。

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岩渕)TPP交渉を巡っては、参加する時からずいぶん議論になりましたよね?
 

日本にとって、参加するための課題がたくさんあった。そのTPP環太平洋パートナーシップ協定は、日本やアメリカ、オーストラリアなど太平洋を囲む12の国が、人、物、金の動きを加速し、貿易で豊かになろうという取り組みです。
日本経済にとってメリットも大きいのですが、心配もあった。

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岩渕)どういう心配ですか。

一つは農産物の関税です。日本ではコメや牛肉など農産物に、高い関税をかけて守っています。これをまもれるか。
もう一つは、我が国が行っている水際での検疫や表示などの食の安全を守る仕組み、それに国民皆保険などの制度を守ることが出来るのかということでした。

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岩渕)その結果、どうなったのでしょうか?

まず関税は大きく下がることになりました。これによって農産物はずいぶん安くなります。
例えば牛肉です。現在の牛肉には関税38.5%がかかっています。アメリカ産ステーキ肉の国際価格が、100グラム当たり150円ほどですから、関税を加えた価格は208円です。
今回の大筋合意で牛肉は、段階的に関税が低くなり16年目以降は9%になります。その結果、関税を加えた輸入価格は164円と、差し引き44円安くなる。

岩渕)結構安くなりますね?

はい。牛肉だけではありません。日本が重要品目としてきたコメやムギ、乳製品などの関税制度、基本的に維持することができましたが、多くの農産物の関税が撤廃されることになったのです。
これは関税がゼロになる品目と、その時期ですが、最大で17%かかっていたブドウや、ニュージーランド特産のキウイフルーツは協定発効と同時に関税ゼロに。お茶やサクランボ、それにソーセージなどは徐々に関税が安くなり、6年目にはゼロとなります。
8年目には、オレンジや落花生、ワインの関税が、11年目には17%の関税がかかっていたリンゴ、パイナップル、牛タン、ベーコンの関税がゼロとなります。

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岩渕)ずいぶんたくさんの農産物や加工食品の関税がゼロになるのですね。

今回撤廃の対象となる農産物は400。日本はこれまで、800あまりの農産物を、例外品目として、国際交渉でも関税撤廃に応じてこなかった。それが今回、そのうち400の品目を、関税撤廃の対象として受け入れた。

岩渕)食卓も大きく変わりそうですね

食品の価格が安くなるとともに、種類も増えて競争も激しくなりそう。例えばワインです。
現在ワインには15%か1リットルあたり125円の安い方の関税がかかるようになっています。今回の合意では、その関税が協定発効後から段階的に下がり、7年目で撤廃されることになっています。
関税が下がるとどうなるのか。実は日本はTPPに先立ち、2007年にチリと自由貿易協定を結び、ワインの関税を下げました。その結果、チリからの輸入が急増している。

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岩渕)ずいぶん伸びていますね?

ワインの輸入量は締結前の5倍以上に伸び、輸入ワインに占めるシェアは24%とフランスに次いで多くなった。
今回のTPP参加国の中には、アメリカやオーストラリア、ニュージーランドといったワインの主産国が揃っている。関税撤廃をきっかけに、日本市場に売り込みを掛けてくるのは間違いなく、競争も激しくなりそう。
このように関税の削減や撤廃は、価格の低下や競争を促し、消費者にとっては商品選択の幅が広がり大変なメリットとなる。

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岩渕)しかし、輸入品が増えると国内の産地は困りますよね。

そうですよね。北海道や山梨などでは、政府が進める6次産業化事業などを利用して、多くのブドウ産地がワイン作りに取り組んできました。こうした産地は大変。
また、先ほど見たように、農産物の多くが関税撤廃になると、対象となっている牛肉やサクランボやリンゴなどの産地は外国産との競争に晒されることになる。

岩渕)大変ですよね?

政府はTPP交渉の内容をこれまで公表してきませんでしたので、突然発表された合意内容に、農家からは驚きの声が広がっている。
政府としてはまずは、産地への影響を試算し、対策を検討するとしています。

岩渕)もうひとつの共通ルールの問題はどうだったのですか。

結論から言えば、これまでの制度を変更するようなことはありませんでした。
日本ではアメリカでBSE感染牛が見つかった時に、アメリカからの牛肉の輸入を禁止したり、遺伝子組み換え作物を使った加工品に表示を行うなどして、国民の健康や、商品選択の権利を守ってきました。また公的な医療制度を維持してきた。
ところが企業活動を重視する、TPPでのルール作りが進めば、こうした国内制度の変更を求められるのでないかという懸念が指摘されていた。

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岩渕)でも、変更を求められはしなかったのですね。

はい。合意発表後の政府の説明によると、輸入食品の安全性に関しては、科学に基づいていれば、必要な措置をとる権利は加盟国に、引き続き認めるとされています。またアメリカが反対していた遺伝子組み換えに対する表示でも、日本の制度を変更するような規定は設けられていないと、説明しています。引き続き、これまでと同様にやって良いと言うこと。
同じように日本の医療制度へのあり方についても、変更を求めるような規定はないとしている。
ただいずれにしても、正式な条文が国民の前に示されたわけではありません。今後国会のなかで明らかになってくると思います。

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岩渕)ところで先ほどの関税削減はいつから始まるのか?

大筋合意したからと言って、すぐに発効するわけではない。関税撤廃までの期間がありますし、発効するのは12ヵ国が協定に署名をし、それぞれの国内で批准をしたあとということになる。
全ての国がスムーズに国内手続きを行えば速いが、それぞれの国内には、反対する人たちもたくさんいる。特にアメリカでは交渉内容が不十分だという声も出て、国内手続きには苦労しそう。

岩渕)アメリカが批准しないとどうなるのか?

2年間のうちに全ての国が批准できなかった場合、全体のGDPの85%を占める6ヵ国が批准すれば、2ヶ月後には協定は発効することになっている。ただアメリカは参加国全体のGDPの62%を占めていますので、実質的にアメリカが批准できなければ、協定は発効しないことになる。
甘利経済再生担当大臣は、「批准できないと、アメリカの国際的な信用問題となる」と牽制するが、これは本当に分からない。5年間の交渉を経てようやくできた大筋合意ですが、合意内容が実現するにはまだ一山もふた山もありそうだ。

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