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くらし☆解説 「大地震 "在宅避難"できますか?」 

二宮 徹  解説委員

【岩渕】くらし☆解説。岩渕梢です。きょうは防災の日です。大地震への備えについて、二宮徹解説委員とお伝えします。 
 
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二宮さん。「在宅避難できますか?」ということですが、「在宅避難」って、どういうことですか?

【二宮】在宅避難とは、避難所に行かずに自宅で生活を続けることです。
大地震が起きると、避難所に入りたくても入れない人が大勢出そうなので、最近は、この「在宅避難」への備えがとても重要になってきています。

【岩渕】避難所に入れないってどういうことですか?

【二宮】南海トラフや首都直下の大地震では、広い範囲で甚大な被害が出ると予想されます。
 
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その場合、避難所に入れるのは、倒壊や火災で自宅を失った人が優先で、建物に被害がない人は入れない可能性があるのです。実際、東日本大震災の時、仙台市ではマンションの住民が避難所に行っても、満員で入れなかったということがありました。
自治体の中には、マンションの住民は避難所に入らず、自宅で生活を続けるよう、求めているところもあります。

【岩渕】自宅が無事だと避難所に入れないかもしれないのですか?
私もマンションに住んでいるのですが、避難所に入れなくても何とかなるものなのですか?
 
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【二宮】そう簡単にはいかないと思います。電気は1週間程度、ガスや水道は数週間止まるおそれがあり、エレベーターも停電や故障で止まってしまいます。

【岩渕】階段で上り下りするのは大変ですね。

【二宮】それどころか、命に関わる深刻な事態になりかねません。けがをしたら自力では下りられません。足の骨が折れたり、頭を打って意識がなかったりしても、救急隊はしばらく来ないと予想されます。また、家具の下敷きになっても、防音がしっかりしている分、気づいてもらえないかもしれません。
さらに生活面でも問題があります。トイレです。断水したり、排水管が壊れたりして、トイレが使えなくなると予想されます。その場合、外の仮設トイレに行くために階段を行き来することになり、特に高齢者には大きな負担です。
こうしたことから、特にマンションの高層階は「空の孤島」とか「高層難民」と言われるほど、深刻な問題が潜んでいるのです。

【岩渕】「高層難民」ですか。それでも避難所に入れないかもしれないのですね。
 
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【二宮】都会の避難所は不足しているのに、ますます人口が集中して、マンションも増えています。
全国の15階建て以上の共同住宅は、おととしはおよそ85万戸で、20年間のおよそ8倍です。
最近は40階、50階の超高層タワーマンションもどんどん建っています。大きなマンションは1000戸以上、何千人も住んでいるので、避難所はあふれてしまいます。

【岩渕】だからこそ、自分から積極的に「在宅避難」に備える必要があるのですね。
 
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【二宮】一戸建てやアパートの人も、自宅が無事なら避難所に入れないかもしれません。
ただ、「在宅避難」をするためには、備蓄が重要です。
南海トラフや首都直下の大地震では、備蓄は1週間分が目安とされるようになりました。
欠かせないのは水です。一人1日3リットルの1週間分は、2リットルのペットボトルにして10本ちょっと。家族4人なら40本を超えます。
災害用の非常食は、最近はお湯がなくても水を入れれば食べられるご飯やパスタ、そのまま食べられるカレーやおかず、5年保存できるパンなどが売られています。メールを登録しておくと、賞味期限が切れる前に知らせてくれるものもあり、便利でおいしいものが揃っています。
ただし、一週間分だと、かなりの量が必要です。
それに簡易トイレも欠かせません。尿などを固める薬剤が入っていて、便器にかぶせて使い、縛ってごみとして捨てます。あるとないとでは、避難生活が大きく変わる必需品です。
このほか、カセットこんろや携帯ラジオ、家庭によっては粉ミルクや持病の薬なども要ります。

これに加えて、町内会やマンションの管理組合などが共有で揃えておくべき備蓄もあります。
けが人を運ぶ担架は、棒が入った固い担架だと、狭い階段を通れないので、折れ曲がるタイプが必要です。歪んだドアなどをこじ開けるバールやチェーンカッター、非常用の照明や発電機、住民どうしの連絡に使うトランシーバーなどを揃えた上で、あちこちの防災倉庫に保管しておくと備えが増します。

【岩渕】個人で買うのは限界があるので、共用の備蓄があるといいですね。

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【二宮】そうしたうえで、カギになるのが協力しあう関係です。例えば、けが人を階段で下ろすには大人2人から4人の力が要ります。高齢者の代わりに、支援物資の受け取りや買い物に行く人も必要です。共働きの家庭は、保護者が帰宅困難者になると帰って来られず、子どもが一人になってしまうので、世話をしてくれる人が欲しい。ほかにも、自治体からの情報を伝える人など、それぞれの立場や事情に応じて、役割分担をあらかじめ決めておくと良いでしょう。

【岩渕】お互いに知らない人が多いマンションや町内会では、どうしたらいいでしょうか?

【二宮】まずは住民どうしが交流することが第一歩です。隣が誰かわからないのでは始められません。よく「防災は顔合わせから」といいます。
いきなり「在宅避難の計画を作る」とか「炊き出し訓練」と言うと集まりにくいのなら、「共用で欲しいものを話し合うお茶会」とか「バーベキュー大会」から始めてもいいと思います。

【岩渕】あまり難しく考えずに、どうやって助け合うかを考える輪を広げるということですね。

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【二宮】在宅避難の取り組みを支援する動きも広がっています。
おととし発足した一般社団法人「マンションライフ継続支援協会」は、マンション管理などの専門家が、計画づくりやリーダーの育成などについて、講座を開いたり、相談に乗ったりしています。
市区町村では、マンションも物資を配布する拠点にしてもらうなどの相談に応じるところもあります。また、最近のマンションでは、共有の備蓄が充実していることを強調しているところも増えています。

【岩渕】マンションなどで建物が無事だと、避難所に入れないかもしれないとは知りませんでした。
「在宅避難」のために、備えをしておかないといけませんね。

【二宮】防災は行政任せ、人任せでは進みません。自分や家族の命を守るには、自分で動くことです。きょうの防災の日を、備蓄を見直し、家族や近所の人と話し合いを始めるきっかけにしてください。
 

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