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くらし☆解説

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くらし☆解説 「夏到来~水の事故で助かるためには?」

津屋 尚  解説委員

岩渕:本格的な夏が訪れ、今年も各地の海や川で水の事故が相次いでいます。海などで溺れそうになった時、どうすればいいのか、きょうは津屋尚解説委員とともにお伝えします。

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津屋:岩渕さん、ご自分が川や海で溺れそうになった時、助かるためにどんなことしますか?

岩渕:必死に泳ごうともがいたり、助けを呼んだりするんじゃないかと。

津屋:ううん、それだとかえって溺れてしまうかもしれませんね。
助かるためのキーワード、それはこちら、「ウイテマテ」、浮いて助けを待つことです。 去年、水の事故に遭遇したある親子を取材してきました。

■(VTR)ウイテマテで生還!
大阪府に住む白石勝己さん。去年夏、当時10歳と7歳の2人の息子を連れて、和歌山市内の海岸に遊びに行きました。

(白石さんの話)
「もうアカンという気持ちが大きかった。」
「今こうして(現場を)見ると溺れそうなところじゃないんですけどね、、、」

足の着く岩場で親子3人で遊んでいたところ、長男が突然波にさらわれて溺れました。
すぐに泳いで助けにいった白石さんも長男に頭や体をつかまれ、溺れてしまいました。

(白石さんの話)
「大量に水を飲んで手がしびれて動かなかった。子供もパニック状態でした」

しかしこの時、とっさにとった行動が、生死をわけました。

(白石さんの話)
「浮いて待て!と。上向いて浮いとけーって。一緒におまえ(次男)も浮いとけーって言って、上向いて浮かしている状況だったですね。」

白石さんと長男は、駆けつけた消防や近くにいた人に救助され、7歳の次男も、ひとり浮いて助けを待っているところを救助されました。
実は白石さんは事故の数日前、偶然、あるニュースをテレビで見ていました。
静岡県の沖合から40キロも流された男性がずっと仰向けに浮いた姿勢をとっていて救助されたというニュースでした。そこで白石さん親子は海に着くとすぐに、救助された男性のように仰向けで浮く練習をしていたんです。

(白石さんの話)
「もし(練習を)やってなかったら無理だったかもしれないです。練習をやっててよかった。」

■生死をわける2%の使い方
岩渕:練習しておいて本当によかったですねえ。でも津屋さん、なぜ「ウイテマテ」だと助かる可能性が高くなるんですか?

津屋:ポイントは「2%」という数字です。人の比重は、真水1に対してだいたい0.98と言われていて、体の2%は必ず浮く計算なんです。

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生き残るためのコツは、この2%を有効活用することです。ところが、助けを求めて手を上げてしまうと、手や腕が水面に出て貴重な2%を使ってしまい、水没してしまって息ができず溺れてしまいます。

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2%を有効に使って「口と鼻」を水面に出して呼吸を確保することが重要です。そのためには、浮いて待つのが最善の方法と言われています。 この「ウイテマテ」、私も体験してきました。

 

■(VTR)
教えて下さったのは、「ウイテマテ」を海外にも普及する活動をしている、水難学会の斎藤秀俊さんです。

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① ひとつ目のポイントは「姿勢」です。(斎藤会長)「あごを上げ気味にして力を抜く。手足は軽く広げて!」

② 次に大切なのは「呼吸の仕方」です。大きく息を吸い込んで止めるのがコツです。肺がふくらむと体が浮きあがります。苦しくなったら、ふーっと息を吐いて、すぐにまた吸って止める。この繰り返しです。

③ そして、「靴は脱がない」こと。革靴やサンダルなど最近のんほとんどの靴は水に浮きやすいということなのでウイテマテもしやすくなります。

■(浮いてくるには・・)
岩渕:でも津屋さん、溺れて水に沈みそうになったらどうしたらいいんですか?

津屋:そこがもう一つ、重要な点です。
溺れるケースで非常に多いのが、水辺で遊んでいた人が浅瀬から急に深くなっているところに誤って入ってしまった時です。足が付かないためにパニックに陥ってしまい水を飲んで溺れてしまうのです。そこで、まず一刻も早く浮き上がってくるためのポイントを2つあげました。
① まず水中で息を吐かないこと。息を吐いてしまうと苦しくなり水を肺に吸い込んでしまいます。

② そして、浮き上がるときのコツ。小動物の「クリオネ」をイメージして羽ばたくように手を動かすと浮かんできやすいんです。私もやってみましたが、ちょっとした一瞬の動きなんですが、いざという時は、とても大事だということです。

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岩渕:なるほど。津屋さんは実際体験してみてどうでしたか?

津屋:強く感じたのは、一度ウイテマテを練習して体験しておくことが非常に重要だということです。知識だけあってもいざという時はうまくできない。白石さん親子もそうでしたが、  一度体験しておけば、パニックにならず、助かる可能性が高まると思います。それに、私も実際にやってみて思ったんですが、ちょっとした体の動きでバランスが崩れたりします。そうしたことも含めて、とくかく水に浮く感覚を体験しておくことが大切です。
一部の学校では、ウイテマテを水泳の授業に取り入れているところもありますが、子供たちの命に関わることなので、すべての学校ですべての子供たちがこうした対処法を知識を与えるだけでなく、“実際に体験”できるように、文部科学省には是非検討してほしいと思います。

■(周りの人がすべきこと)
岩渕:津屋さん、溺れた人がする対処法のウイテマテはわかりましたが、川や海水浴場などで子供が溺れてしまった場合、周りにいる大人はどうすればいいですか?

津屋:大事なのは、慌てて自分だけで助けにいかないことです。我が子が目の前で溺れていると飛び込んで助けに行ってしまうのが親ですが、泳ぎが得意な人でも、足がつかない場所だったりすると、体にしがみつかれたりして身動きが取れなくなって、一緒に溺れて亡くなってしまうケースが非常に多いのです。「救助訓練を受けた人でない限り、しない方がいい」と専門家は話しています。

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そのかわりやっていただきたいのは、一刻も早く消防の119番か海上保安庁の118番に通報して助けを呼ぶことです。状況を冷静に判断して、「浮いてまてー」と子供に声をかけて励ますことが結果として命を救うことになるということのようです。

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それから、空のペットボトルなど「浮くものを投げ入れる」のも有効です。
ただ、「ウイテマテ」をしている人が無理にとろうとするとバランスを崩してかえって危険なので、これは可能ならという形でやってください。

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それからもう一つ。子供が溺れると、大声を出して助けを求めたりするから事故に気付くだろうと思っている人が多いかもしれませんが、それはドラマや映画の話で、実際にはそうなることはまれです。実際は溺れる人の多くは、声を出す余裕はなく突然沈んでいきます。ですから、にぎやかに遊んでいた子供の声が急にしなくなり静かになったら「異変のサイン」です。
そして何より事故が起きないようにするには、遊泳禁止の場所など危険な場所では遊ばせないことはもちろんですが、大人は常に小さな子供のそばにいて、絶対に目を離さないことが大切だと思います。

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