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くらし☆解説 「誤解?間違い? 自転車ルール」

寒川 由美子  解説委員

くらし☆解説。
今日は、「自転車のルール」についてです。

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Q:この番組でも今月初めに、自転車で危険行為を繰り返した人に安全講習を義務づけるという新たな制度についてお伝えしましたが、自転車のルールについては誤解も多いんですか?

A:そうなんです。
安全講習義務づけという制度の導入をきっかけに、インターネット上などで「自転車のルール」について議論が広がっていて、中には誤解や混乱もあるようなんです。
まずは、新たな制度、おさらいしておきましょう。
こちらの行為が主な危険行為です。

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Q:信号無視、酒酔い運転、スマートフォン操作や傘さし運転で事故を起こす行為などですね。

A:これらの行為は、以前から禁止されていて、それぞれ罰則もあります。
こうした危険行為を3年以内に2回、繰り返すと安全講習が義務づけられます。

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街の皆さんに、こうしたルールなどについてうかがってみたんですが、自転車や歩行者、それぞれの立場によって、見方も違っていることがわかりました。

この日は、普段どんな風に自転車に乗っているかや、危険を感じる行為について尋ねました。

(街頭インタビュー)
▼子どもを自転車の後ろに乗せた女性
「車のレーンは怖いんで、つい歩道を走ってしまいます」
▼子どもを連れた歩行者の女性
「子どもがいるので、後ろからチャリンチャリンとかされると、どっちが悪いのかなって」
▼スポーツタイプの自転車に乗る男性
「(危険行為についての)情報全部いきなり覚えろって言われても難しい。例えば信号とか電柱に貼ってくれるとかしてくれれば、意識が高まると思うんですけど」

Q:いずれも、うなずける気がします。

A:皆さんで多かったのが、自転車で車道と歩道、どちらを走るべきなのか、という声でした。
自転車は法律上は車の仲間なので、「車道を左側通行」するのが原則とされています。
ではこのルールがどの程度守られているのかといいますと、こちら、運転免許試験場に来た人を対象に行われた調査です。
自転車は車道通行が原則で歩道は例外、というルールを知っていると答えた人は68%、7割近くが知っていました。

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しかし、ルールを守っているかという点については、ルールを知っている人の3分の2が守っていないと答えました。

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街の人たちにうかがっても、自転車のかたからは、交通量が多い車道を走るのが怖いという声が、一方で、歩行者のかたからは、スピードを出して歩道を走る自転車が怖い、という声が聞かれました

Q:私も子どもを乗せて自転車で車道を走るのが怖いと感じることがありますが、子どもを乗せて走る場合も車道が原則なんですか?

A:原則的には、そうなんです。
前回もお伝えしましたように、自転車が歩道を走れる場合には3つのケースがあります。
一つは自転車通行可の標識がある場合、2つめは、70歳以上のお年寄りや13歳未満の子ども、それに体が不自由な人の場合、そして3つめが「交通状況から見てやむを得ない場合」です。

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この3つめのケースを詳しく見てみますと、例えば工事中で車道が通れないとか、車の通行量が多くて危険だ、連続して駐車している車があって通れない、といった場合が当てはまります。

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Q:こういう場合には自転車で歩道通行ができるわけですね。
でも、どの程度の交通量だと、危険だといっていいんですか?何か基準は?

A:それがあいまいで、車の通行台数など、何か基準があるわけではないんです。
結局、常識的に考えて、ケースバイケースで判断するしかないんです。

Q:それだと判断に迷う場合もありそうですね。

A:そうですね。
ただ、普通に歩道を走っただけで、直ちに検挙されるということはありません。
やむを得ず歩道を走る場合には、歩行者を優先し、すぐに止まれるスピードでゆっくり走る、この大原則を守ることが大切です。

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そして、歩行者が多い場合には、自転車を降りて押して歩く。
それくらい、歩行者のことを考えて運転する姿勢が大事だと思います。

Q:それは歩道に限らず心がけたいですね。

A:次に、もう1つ、誤解が多い自転車ルールについて見てみましょう。

(街頭インタビュー)
▼傘さし運転の自転車の男性
「例えば今日みたいに雨の時に傘をさしたりとか、たまにちょっと携帯みながら運転してることがあります」
▼歩行者の男性
「イヤホンつけてる人とか、スマホ持っている人は、ちょっと危ないと思うときありますね。こっちで注意しないと当たっちゃう」

Q:そういう人、結構見かけます。

A:この日は雨だったので、傘をさして運転する人も結構いました。
スマートフォンを操作しながら、イヤホンで音楽を聴きながら、傘をさしながらの運転は、前をよく見ないなど、安全に運転できる状態ではない運転、ということで、違反になります。

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いま、ネット上では、イヤホンが片耳の場合、違反になるのかどうかが議論を呼んでいますが、片耳か両耳かが問題ではなくて、周囲の音がきちんと聞こえて安全に運転できるかどうかが問題です。

実際に、悲惨な事故も起きていまして、今月10日には千葉市で、男子大学生がイヤホンで音楽を聴きながら自転車を運転し、女性をはねて死亡させる事故がありました。

こうした事故をおこすおそれがあるので、これらの「ながら運転」は、事故を起こさなくても違反行為であり、5万円以下の罰金を科すとされているんです。

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Q:違反した場合、すぐに罰金が科されるんですか?

A:いえ、直ちにというわけではありません。流れを見てみましょう。
違反行為をすると、まず、警察から指導や警告を受けます。
この段階では罰金などは科されません。

Q:指導や警告で済む場合もあるんですか。

A:そういう場合もあります。
しかし、指導や警告に従わないなど悪質な場合には、検挙されます。
検挙された人は検察庁に呼び出されて調べを受け、違反を繰り返すおそれがないと判断されれば、不起訴になりますが、悪質だと判断されれば、簡易裁判所から罰金の略式命令を受けます。
この流れとは別に、検挙が2回になると、安全講習が義務づけられる制度が導入されたわけです。

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Q:実際に検挙される人というのはどれくらいいるんですか?

A:こちらは自転車の違法行為での検挙件数です。

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ご覧のように検挙数は増え続けていまして、今年に入ってからは4月末までで、すでに前の年の1.5倍のペースです。
警察は、新たな制度を導入したからといって取り締まりを厳しくすることはない、としていますが、例えば大阪では自転車の飲酒運転の検問を始めるなど、違法行為に目を光らせているのは確かです。

ただ、本来は、自転車専用レーンなど、自転車と歩行者、車が棲み分けて安全に通行できる環境の整備が求められると思いますが、現実には、なかなか進んでいません。
結局、自分の身を守り、人を傷つけないためにも、安全な運転を心がけるしかないと思います。

Q:そのためには、どんなことに気をつければいいですか?

A:まずは、スピードを出さないことです。
スピードを出して事故を起こせば、最悪の場合、人を死に至らしめることもあります。
お子さんなどにも、スピードの出し過ぎに気をつけるよう、教えることも大事だと思います。
そして一つ一つのルールも大事ですが、歩行者・自転車・車が、それぞれの立場にたってお互い譲り合い、思いやりを持って道路を利用する、そういう意識を持つことが一番大切だと思います。
 

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