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くらし☆解説

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くらし☆解説 「"ブラックバイト"にご用心!」

村田 英明  解説委員

岩渕)きょうのテーマは「“ブラックバイト”にご用心!」。
村田英明解説委員です。

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村田)ことしも入学シーズンを迎えましたが、
新入生のみなさんに注意していただきたいのが
ブラックバイトという学生アルバイトです。
アルバイトをしている学生からは自分のバイト先が
ブラックバイトかどうか、よくわからないといった声を聞きます。
そこで、きょうはブラックバイトの実態と被害にあわないようにする 
ためのポイントを話したいと思います。

岩渕さんはブラック企業はご存知ですよね。

岩渕)はい。若者を使い捨てる企業と言われていますよね。

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村田)そうです。そうしたブラック企業が社会人だけではなく、
学生のアルバイトにも手を広げて、これがブラックバイトと呼ばれて
問題になっているのです。
・違法な長時間労働を強いる。
・残業代を支払わない。
・社員と同じように責任のある仕事を与えながら安い賃金で働かせる
アルバイトが増えて各地でトラブルが相次いでいます。

岩渕)どんなトラブルが起きているのでしょうか。
村田)ブラックバイトの実態調査の結果で見てみしょう。

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この調査は、大学教授や弁護士、NPO法人などの労働問題の専門家でつくる
ブラック企業対策プロジェクトが、去年、全国の大学生を対象に初めて行いました。
回答があったおよそ2500人のうちの25%、4人に1人が、
アルバイトのシフト、つまり、勤務する日や時間を
「会社の都合で勝手に変えられた」と答えています。
希望しない日にシフトを組まれて大学の授業に出席できない学生が
増えているのです。

また、およそ70%の学生が
バイト先から「不当な扱いを受けた」と答えています。
具体的には
・準備や片付けの時間の賃金が支払われない。
・休憩時間がない。
・商品の買い取りまで強要される。といった内容で、いずれも違法です。
   
ブラックバイトは学生のアルバイトが多い居酒屋やファストフード店
などの飲食店やコンビニエンスストアなどの小売店など様々な業種に 
広がっていますが、中でも、最近、学生からの相談で多いのが学習塾を
めぐるトラブルです。

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岩渕)学習塾にもブラックバイトがあるとは意外ですが、どんなトラブル
なんですか。

村田)例えば、全国展開をしている、ある学習塾では
授業時間以外の賃金が支払われていません。
テキストの作成や保護者の対応も学生にまかせていますが、
そうした準備の時間は無給でタダ働きです。

また、退職をめぐるトラブルも多く、
退職届を出しても辞めさせてくれないので出勤しないでいたら
損害賠償を請求されたという悪質なケースもあります。

岩渕)アルバイトを辞めただけで損害賠償ですか。

村田)会社側が学生を辞めさせないようにするためのいわば脅しです。
法律上は退職届を出して2週間が過ぎれば辞めることができます。

岩渕)アルバイトは自由に辞められると思っていましたが
会社側が辞めさせないようにしているんですね。

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村田)それもありますが、学生の側にも辞められない事情があります。
 
岩渕)どういうことですか?

村田)1つは経済的な事情です。
いまや働く人のおよそ4割を非正規雇用が占めるようになり
サラリーマンの平均年収が減っています。
とくに親元を離れて暮らす学生の場合は仕送りが減っているので
生活費を自分で稼がなければなりません。
   
また、人件費を抑えるために、社員はたった1人で
残りはすべてアルバイトという職場が増えています。
仕事熱心な学生がバイトリーダーに選ばれ、
売り上げのノルマの達成やアルバイトのシフトを組むといった
重い責任を負わされます。
正社員並みの仕事を与えられ、
「自分が辞めたら店に迷惑をかけると思って辞められない」
「卒業後、正社員として採用されるかもしれないので辞められない」
と話す学生もいます。

岩渕)なんだか学生の弱みにつけこんでいるようですね。

村田)その通りです。
会社から期待されている。戦力になっていると思わせながら
実は、非正規雇用の大人たちと同じように安い労働力として
働かされているのです。

ただ、これだけトラブルが増えると学生側も黙ってはいません。
ブラックバイトに対抗しようと学生が自分たちで労働組合をつくる
動きが広がっています。
去年から今年にかけて北海道、首都圏、関西で相次いで組合が結成され
ていますが、このうち都内にある労働組合「ブラックバイトユニオン」
は、首都圏の大学生やブラック企業対策に取り組むNPOのメンバーが
去年の夏に結成しました。
トラブルにあった学生から半年あまりで200件を超える相談が
寄せられています。
弁護士にも相談して解決策を話し合い、問題のあるアルバイト先には
団体交渉で改善を求めています。

ブラックバイトの被害にあった学生も組合に入って活動しています。
都内の大学4年の男性は2年前、大手衣料品店で販売員のアルバイトを
していた時にブラックバイトを体験しました。
この男性は「週に70時間働かされて睡眠不足や体調不良になったり、
授業に行けずに単位を落としてしまったりした」と話していました。
男性は、過労死ラインと呼ばれる過労死の目安とされる月に80時間を
超える残業を命じられて体調を崩し3か月あまりでバイトを辞めました。

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岩渕)そのような被害にあわないようにするにはどうすればよいでしょうか。

村田)アルバイトを始める前に「雇用契約書」を確認してください。
雇用期間や業務内容、就業場所、賃金などの労働条件が書かれています。
また、雇用契約書の中には「勤務規定に従わなければならない」と
書いてあるものもあります。
あるブラックバイトの勤務規定には
 ・大学の勉強のための欠勤は認めない。
 ・欠勤するためには代わりのアルバイトを自分で手配しなければならない。
 ・遅刻した日は無給とするなど学生に不利な条件が盛り込まれています。

岩渕)学生のアルバイトにも、そうした契約書があるとは知りませんでした。

村田)アルバイトの場合でも、労働条件を書面で示すことが法律で義務付け
られています。
雇用契約書を渡さない会社や勤務規定の内容を聞いても教えてくれない
会社では働いてはいけません。
そして、バイト料を受け取ったら必ず「給与明細書」を見てください。
働いた時間分の賃金が支払われているかどうか確認して
契約書どおりに賃金が支払われず、請求しても会社が応じない場合は
都道府県の労働局や労働基準監督署、弁護士や労働組合などに
相談してみてください。

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岩渕)こうしたブラックバイトの被害をなくすには、どうすればいいので
しょうか。

村田)ブラック企業対策プロジェクトのメンバーで、ブラックバイトという
言葉を広めた中京大学教授の大内裕和さんは
「日本の将来を担う学生たちに違法な労働をさせてまで利益を生み出す
ビジネスモデルはやめるべきだ」と主張しています。
そして、ブラックバイトをなくすには
・企業が非正規雇用への依存度を減らすこと。
 それに加えて、
・返済が不要な「給付型奨学金」を増やすなど奨学金制度を充実させて
学生がアルバイトに力を入れなくても大学で学べるようにする
必要があるといいます。

私も、まったく同感です。
バブル崩壊後、日本の企業は人件費を抑えて利益を生み出すために
パートやアルバイト、派遣労働といった非正規雇用を増やしてきました。
そうした雇用のあり方を見直さない限り、ブラックバイトの問題は
解消されないと思います。
学生を使い潰すブラックバイトの問題を放置すれば、 
これからの社会や経済を支える人材を失うことにもなります。
社会全体でこの問題を考えて、違法な労働を許さない対策に官民が
協力して取り組まなければならないと思います。

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