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くらし☆解説 「原発からの避難 多様化する現実」

早川 信夫  解説委員

(岩渕キャスター)
東日本大震災からきょうで4年。原発事故の影響でふるさとを離れて避難した人たちは今どうしているのでしょうか。避難している人たちから継続して聞き取り調査をしている早川信夫解説委員に話を聞きます。
 
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Q1.この時間では、これまでも原発事故から避難した人たちのことを取り上げてきましたが、今回はどんな傾向にあるんでしょうか?

A1.時間の経過による多様化の現実が浮かび上がっています。避難先から元の家に戻った人もいれば、元住んでいた家の近くに住まいを求めて移動した人がいる。避難先で生活している人の中には、自治体が借り上げているアパートに住んでいる人もいれば、自力で家を買ったりして定住を決意した人もいるといったようにさまざまです。経済力や賠償の有無によって家庭ごとに格差が広がってきているとも言えます。
 
Q2.早川さんは新潟県を中心に聞き取り調査を続けているのですね?

A2.そうです。原発事故の影響を心配して福島県から県外に避難している人は4万7千人あまりにのぼります。隣の新潟県は、震災直後に全国で最も多くの人たちが避難し、今もおよそ4000人が生活しています。
 
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もともと原発周辺の避難区域に住んでいた人たちとそれ以外の自主的に避難している人がほぼ半々でしたが、経済的な理由などから自主的に避難している人の割合が減り始めているのがこのところの傾向です。
そんな中、民間の「311被災者支援研究会」と新潟を中心に同じ人たちに継続的に聞きとり調査を行ってきました。今回が13回目、先月末から今月初めにかけて面接と電話の2つの方法で126人からお話をうかがいました。
 
Q3.どんなことが浮かび上がってきたのですか?
 
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A3.3つあげたいと思います。一つは、今の生活になじんではきたけれど。2つめは、やはり気になるふるさとの復興と除染。3つめは、先行きが見えない不安の中で。この3つです。
 
Q4.まず、一つめの「今の生活になじんできたけれど」とはどういうことですか?

A4.今の暮らしをどう感じているのかを尋ねました。
 
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「それなりに満足」と答えた人が4割を超え、日常的な暮らしのリズムができてきて、今の生活にかなりなじんできていることがうかがえました。新居に移り住んで快適に過ごしているという人がいる一方で、「それなりに満足」と答えた人でも、よくよく話を聞くと「もう4年にもなるのに文句を言ってはいられない」とか「後ろ向きに考えても気が滅入るだけ」と話す人もいて、本当に今の生活になじんでいるというよりは、そう言い聞かせている部分も大きいように感じます。実際のところ、精神的ストレスが解消されるまでには至っていません。
 
Q5.実際にどうなっているのですか?
 
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A5.精神的なストレスを感じる人は合わせて6割。「とても感じる」という人が1年前に比べて減ってはいますが、解消にはほど遠い感じです。お母さんとこどもだけで避難している人の中には、こどもが周囲の環境に慣れて日常的にはそれほどストレスを感じなくなったけれど、ふとした瞬間に「なんでふるさとを離れてここにいるんだろう」と思い出し、言いようのないストレスを感じると話す人もいました。また、私と同年代の人の中には、周りから「無理して何かをしなくていいと言われるが、何もすることがないのがかえって苦痛だ」と話す人もいます。このように、外の目を気にしながら、努めて何もない顔をするように心がけてはいるものの、心の中までは元には戻れてはいない現実があります。
 
Q6.2つめの「やはり気になるふるさとの復興と除染」とはどのようなことなのですか?
 
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A6.今の生活に不足を感じているのは何かを複数回答で答えてもらったところ、4割近くが除染を上げたのが今回の特徴です。1年前は、住宅支援や健康面への支援が上回っていましたが、ふるさとの復興の遅れは、除染が進んでいないせいだと感じる人が多くなっていることを示しています。ふるさとの復興の進み具合についても、7割の人たちが遅いと感じています。原発周辺地域の人たちは、時折、自宅周辺に戻ったりしていますが、一時は下がったはずの線量が再び上がっていることを心配する声が聞かれました。
 
Q7.原発への不信も根強いのでしょうか?
 
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A7.原発再稼働については「絶対にすべきではない」もしくは「しないでほしい」と答えた人が74%と高い割合にのぼっています。「まだ避難生活を送っているのに、それを忘れたかのように再稼働論議が行われることに怒りを覚える」とか「こどもの健康不安を考えると再稼働はありえない」という声が聞かれました。「再稼働してもよい」と答えた人の中には、「原発で働いている家族がいるので原発がなくなると困る」と苦しい胸の内を明かす人もいました。
 
Q8.3つめの「先行きの見えない不安の中で」というのはどういうことでしょうか?

A8.先行きが見えない中で、それぞれの経済力に応じて生活拠点をどうするのか決断を迫られています。
 
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調査開始以来、今後の生活の拠点をどうするのか聞いていますが、できるだけ早く元の自宅に戻りたいという人は震災直後から大幅に減って、今は4%に過ぎません。また、決めかねているという人も1年前には3割を超えていましたが、今回は23%と減っています。一方で、戻らずに新しい生活を考えたいという人は3割近くにのぼり、避難先やふるさと以外の場所への定住化が進んでいます。4年という時間の経過に伴って、この先のことを考えなくてはという思いが高まっているように感じます。
 
Q9.新たな動きになっているようですが、今後の課題をどう考えたらよいのでしょうか?
 
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A9.最良の決断ができる環境が必要です。避難者に対して国や地元自治体がいつまで、どのような形で支援を続けるのか、その見通しを示す時期に来ているように思います。支援の行きつく先が見えていないことが不安感につながっています。すべての避難地区が解消されるまでなのか、ある年限を区切るのか、疑心暗鬼を生まない対応が求められます。もう一つは「避難者カルテ」の作成を。賠償を受けているかどうか、家計に余裕があるかどうか、家族が別れて暮らしているかどうかなど避難者の現状は多様化し、この4年で生活が安定してきた家庭もあれば、重い負担にあえいでいる家庭もあります。だからこそ、ひとりひとりに見合った支援策が必要です。まずは、避難先でどのような思いで過ごしているのか、その先に何を望んでいるのか、孤立を防ぐためにも避難者カルテをつくることを提案したいと思います。自治体はすでに努力していると言うかもしれませんが、避難している人からは行政の担当者が来るたびに一から話をしなくてはならないという声も聞かれます。仕事を増やすことになってしまいますが、そうした意向を集約することが住民の絆を結び直すきっかけになるように思います。

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