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くらし☆解説 「リニア中央新幹線建設と環境問題」

中村 幸司  解説委員

Q:東京の品川と名古屋を40分で結ぶリニア中央新幹線が建設に向けて、大きく動き始めました。そこで、「リニア中央新幹線建設と環境問題」について、考えてみたいと思います。
中村幸司解説委員です。
 
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A:リニア新幹線については、2014年10月、国土交通大臣が建設の計画を認可しました。
時速500キロという世界に例のない高速鉄道で、JR東海は、品川・名古屋間について、2027年開業を目指しています。
 
Q:今回のテーマは、なぜ「環境問題」なのでしょうか?

A:リニア新幹線の計画の実施にあたって国土交通大臣は「環境保全に十分な配慮が必要だ」と、いわば注文をつけているのです。環境問題が重要視される大きな理由は、全体の86%を占める
トンネルです。
 
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Q:トンネルだと騒音も周囲にあまり広がらないでしょうし、環境には良いのではないでしょうか?

A:確かにトンネル部分では周囲への騒音は抑えられる面はあります。しかし、トンネルでも環境への影響が懸念される点がいろいろあるのです。
 
Q:どんな影響ですか?

A:掘削で発生する大量の土の処分をどうするか。それと、水資源への影響、動植物など生態系への影響などがあげられます。
 
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このうち、掘削で発生する大量の土について、南アルプス周辺の豊かな自然への影響が懸念されている静岡県を例に見てみます。

まず、どのような工事が行われるのか。
 
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図に「本坑」とあるのが、リニア新幹線の車両が走るトンネルです。地下、数百メートルから1300メートルを通ります。
 
Q:そんなに深くを通るのですね。

A:実際に掘られるトンネルはこれだけではありません。
リニア新幹線では、トンネル部分の4キロから8キロごとに非常口を設けることになっていますが、その非常口に通じるトンネルが2つ。
さらに、トンネルの掘削で出てきた土砂を運ぶための「工事用トンネル」も掘ります。
また、本坑を掘る前に、地盤の調査などを行いながら掘りすすめる「先進坑」というトンネルもあります。先進坑を掘る場所は決まっていませんが、本坑に沿ったところを掘ります。
 
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Q:リニア新幹線の車両が通るトンネル1本を掘るだけだと思っていたのですが、こんなに掘るんですね。

A:そうです。ただ、どこでもこれだけのトンネルを掘るわけではありません。
都市部では、車両が通る本坑と非常口のための穴を掘るだけになります。
 
Q:こんなに掘るとなると、発生する土も多くなりそうですね。どれくらいの土が出るのでしょうか?

A:品川・名古屋間、全体で5680万立方メートルの土砂が発生するということです。
東京ドームで45杯分です。
このうち、2割は処分先が決まっていないということで、これをどう処分するのかということも、今後の問題として残っています。
 
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静岡県の場合、土砂を持っていく場所は、おおむね決まっています。過去に行われた開発で山が削られるなどした場所を利用します。
土砂を置いたあとは、環境や景観に配慮して、この左の写真のように植林するということです。
 
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Q:緑にはなりますが、まわりの濃い緑とはだいぶ違いますね。

A:木が成長すれば、右の写真のようなるということですが、10年ないし数十年という一定の期間が必要です。
大量の土砂を環境の影響を抑えて処理することは難しく、時間がかかるということだと思います。
 
Q:ここまでは掘った土の影響でしたが、トンネルの穴をあけること自体は、環境にどのような影響を及ぼすことが考えられるのでしょうか?

A:そのひとつが、水資源への影響ということになります。地下の水の流れが変わることなどが懸念されています。
静岡県で見てみますと、例えば、本坑の近くを流れる大井川については、水の流れる量が1秒あたり、12トンだったのが、工事後には10トンくらいにまで減ると推測されるということです。
 
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Q:なぜ減ってしまうのですか?

A:地下の水がトンネルの中にしみ出すなどする影響で、川に流れ出る水が減ると考えられています。
JR東海では、トンネルの中に入ってきた水をきれいにした上で川に流すなどして、水の量を減らさないようにしたいと話しています。
ただ、たとえ川の水の量は調節できたとしても、トンネルの周辺では、地下の水が少なくなって、湧水や小さな支流の水が減るといったことが起きるかもしれません。そうなると、植物などの生態に影響が出ることも考えておく必要があります。
 
Q:何か対策は、とられるのでしょうか?

A:JR東海では、川の本流、そして山奥も含めて支流についても、水の流れをモニタリング調査するとしています。
 
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影響が出た場合、例えば植物の生息が難しくなった場所があれば、別の場所に移植するなどして、影響を少しでも抑えたいと話しています。
 
Q:移植では生息場所が減ってしまうということの解決にはならないのではないでしょうか?

A:そうですね。
JR東海では、トンネルの中に水が入ってこないようにする特殊な方法でトンネルを作る計画にしていますが、一帯の水の動きを極力変えない対策を、さらに進めることが求められると思います。

こうした生態への影響は、植物だけではありません。動物、例えばオオタカなどの野生の鳥が生息できない環境になるという恐れも指摘されていて、対策が計画されています。
 
Q:生態系を守るのは簡単ではないですね。

A:リニア新幹線が通る南アルプス周辺の地域は、生態系の保全、そして自然と人間社会の共生を目的とした「ユネスコエコパーク」に2014年登録されました。日本では、ほかに屋久島などが登録されています。
 
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それだけに環境保全が十分できるのか、繰り返し検証していくことが必要で、それはユネスコエコパークの区間に限らず、路線全体について言えることだと思います。
 
Q:環境への影響は少なからずあるという印象ですが、それでもリニア中央新幹線は必要だということなのでしょうか?

A:現在の東海道新幹線は、心配されている南海トラフの巨大地震が起きて走れなくなることもあるかもしれませんし、将来的には、老朽化した橋の架け替え工事で何日も運休しなければならないということも考えられます。
そうした時に備えて、「東京・名古屋、さらには大阪につながる日本の大動脈を二重にしておくことが必要だ」というのがJR東海の考えです。
 
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Q:認可を受けて、工事は間もなく始まるのでしょうか?

A:着工の時期は、明確になっていませんが、2014年10月から始まった地元での説明会や用地の取得などの手続きを経て、工事が始まります。
JR東海は、大井川で行う水の流れのモニタリングのように、工事の影響が出ていないかどうか様々な調査を行った上で、地元の自治体や専門家などと対策を検討しながら工事を進めると話しています。
いったん壊れた自然はもとに戻せませんから、環境に影響がでていないのか、影響があったとき対策が十分なのか、私たちも、しっかり見ていかなければならないと思います。
 

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