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くらし☆解説 「認知症 音楽で笑顔を」

広瀬 公巳  解説委員

午前10時5分をまわりました。くらし☆解説、岩渕梢です。
きょうは、「認知症 音楽で笑顔を」というテーマです。
担当は広瀬公巳(ひろせひろみ)解説委員です。

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Q 冒頭の映像の女性、音楽を聴いて楽しそうにしていましたね。

認知症でナイフとフォークの違いがわからなくなり、ふさぎこんでいたのですが音楽の力で笑顔を取り戻したということです。
 
Q 音楽にそんな力があるのですか。

音楽に何ができるのかを整理するために認知症とはそもそもどんな病気なのか簡単に振り返ります。

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認知症はさまざまな原因で脳の働きが衰えるもので誰にでも起こりうる病気です。
多いのが脳が委縮するアルツハイマー病で、脳卒中などが原因で起こる場合もあります。つまり、多くは、脳の中が生理的に変化して認知機能が落ちるものです。
ですので、音楽を聴くだけのことでどれだけ効果があるのかはわかりません。
 
Q では音楽はどんな役割を果たせるのですか。

医学的に病変をなくすことはできなくても、音楽をきっかけに昔の自分を思い出す人はいます。
必要以上にしぼんでしまっている人が自信をとりもどして「生活の質」を改善している人もいるということです。
 
Q そんなことができるんですか。

認知症の方が音楽で笑顔をとりもどしたという外国の例をご紹介したいと思います。
(映画のビラ)
こちらサンダンス国際映画祭の観客賞に選ばれた「パーソナル・ソング」というアメリカのドキュメンタリーです。
認知症のお年寄りが自分が若いころに聞いた懐かしの音楽を聞いて記憶や活力を取り戻していくというそういう人たちの例を追っています。
ご覧下さい。
こちらの女性、高齢で若いころのことが思い出せなくなっているということなんですね。

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(映画から)
「若いころにどう過ごしたが忘れてしまったのよ。まったく思い出せない。もうここに90年間もいるんですもの。昔の話をしたくても思い出せないからムリだわ。
「ある実験をしよう。今から音楽を聴いて過去を思い出してみるんだその当時にもどって」
「ルイ アームストロング」
「何を思い出したか言ってくれるかな」
「この曲は聖者の行進。学生時代を思い出すわ。母さんに内緒でコンサートに行ってダンサーの写真を持ち帰ったの。キングスタウンで9年働いたわ。E棟で。戦時中で米軍施設で働いてたの。こんなに話せるなんて(笑)。」
 
Q 音楽をきっかけにいろいろなことを思い出すということですね。

誰しもひとりひとり思い出の忘れられない曲というものはあるものではないでしょうか。
それを探して聞かせたところふさぎ込んでいた状態から回復したという人を記録した作品なんです。
一人ひとりの経験に基づく歌。
「パーソナル・ソング」というのは、そういう意味です。
 
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なぜパーソナル・ソングを「聞くこと」に注目するのか。制作にあたった監督に話を聞きました。

ヘッドホンをすると雑音がないので集中がしやすい。薬にくらべても安く簡単に始められると話していました。
ドキュメンタリーの原題は「ALIVE(生きて) INSIDE(内側は)」だったということです。
これは、記憶をすべて失ったように見えても、意識の内側の深いところにある個人的な記憶は生きている、という意味だそうです。
 
(マイケル・ロサト監督 ON)
「パーソナルな音楽はパーソナルな経験と深く結びついています。
 音楽は何かの「代わり」にはなりませんが何かと「ともに」行えるものです。」

音楽を聞いて悪くなることはない。
聞いて損になることはない、というんですね。
 
Q 日本では音楽は取り入れられていないのですか。

日本には別の取り組みがあります。
(V)(中央区 今月24日) 
こちらは都内の特別養護老人ホームです。
(ON 歌 旅愁)
歌詞をみながら歌を歌ったり太鼓をたたいたりというものです。
一人で絵をかいたり、俳句を詠んだり、といったことができない人でも音楽であれば、ひとりひとりそれぞれの参加の仕方ができるということです。

(ON 加藤美知子さん 日本音楽療法学会)
「日常生活のところではほんとに何もしない、 なかなか声をかけても何もできない人が、音楽だったらば、ずっと昔にやったことが、覚えていて、脳の一部にちゃんとストックされていて、きっかけさえあればひきだせる。」
 
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こちら音楽の使い方には、受動的に「聞く」ものと、能動的に「参加する」ものの二種類があって、日本では、孤立をさけるということもあって主に自分が「参加する」ものが行われているということです。互いのよい点を使いわけていけばよいのではないでしょうか。
 
Q 音楽に興味を示さない人はいないのですか。

人によって意識のレベルもさまざまなのでまったく反応のない人もいるそうです。
音楽にどんな効果があるのかを数値化して証明するのはまだまだ難しいということです。
 
(ON 加藤美知子さん 日本音楽療法学会)
「緩和ケアとか、病気の末期の方なんかだと、聴覚は最後まで残っているので、なじみの音楽を聞くと、例えば涙がすっと流れて反応したり、決して何も伝わっていないとも言い切れない。ただ証明もできないんです。難しいですね。」
 
Q やはり難しい問題なんですね。

でもできることは何なのかを真剣に考えていかなければなりません。

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日本では認知症の高齢者は460万人。
「予備軍」とされる軽度の認知障害の高齢者は400万人と推計されています。
あわせると高齢者の4人に一人にのぼります。
また認知症は高齢化が進む先進国の共通の課題にもなっています。
去年暮れにはイギリスでG8認知症サミットも初めて開かれ各国が研究費を大幅に増やしていくことで合意しています。
そしてこれからは途上国でも認知症の数が増えてくるものと予想されています。
 
Q 日本だけの問題ではないんですね。

治療費などのコストも年間60兆円を超え、大きな負担です。
認知症対策は世界的な課題になっています。
そうした中でどうやって「笑顔の数」を増やしていくのか。
生活の質をどうやって向上していくのかなど課題は山積しています。
来週、東京で認知症対策の国際会議が開かれます。
認知症に対する理解を深め、どんな対策がとりえるのか国の枠を超えてさまざまな視点から考えていかなければならないと思います。

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