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くらし☆解説 「ノーベル物理学賞 青色LEDってすごい!」

中村 幸司  解説委員

Q:2014年のノーベル物理学賞に日本の研究者3人が選ばれました。青い光を放つ発光ダイオード「青色LED」の研究です。
受賞のニュースに日本中が沸きましたね。
 
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A:はい。受賞者に選ばれたのは、名城大学教授の赤崎勇さん、名古屋大学大学院教授の天野浩さん、カリフォルニア大学教授の中村修二さんです。

Q:ノーベル物理学賞というと難しいイメージがありましたが、今回は「青色LED」と身近なものの研究ですね。
 
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A:そうですね。そこで、青色LEDが私たちの暮らしの中で、どのように役立っているのかを見ながら、3人の研究の何がノーベル賞につながったのか考えてみます。
 
Q:LED。いつも使ってはいるのですが、どういうものなのでしょうか?

A:LEDは半導体できています。そこに電気が流れると、半導体の境目のところが光ります。
 
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Q:これまでの照明とはどう違うのでしょうか。

A:白熱電球は、フィラメントが光ります。フィラメントが高温になって光るわけです。蛍光灯も両端にフィラメントがあって、電気を通すと管の中を電子が飛ぶなどの段階を経て、ガラスの内側が光ります。
これに対して、LEDは電気の流れが直接光にかわりますので、効率がいいのです。つまり、「省エネ」の照明です。
 
Q:東日本大震災以降、節電のために照明をLEDに付け替えた人も多かったですね。

A:さらに、白熱電球は、使っているうちにフィラメントが細くなって、最後は切れてしまいます。蛍光灯も内側に異物が付着するなどして寿命を迎えます。
一方、LEDは機械的に劣化するところがほとんどないので、寿命が長いのです。
 

Q:様々な色のLEDがある中で、青色のLED研究がノーベル賞となったのは、どうしてでしょうか?

A:ここで光の色を考えてみます。「光の三原色」は、赤・緑・青とあります。
 
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赤や緑に光るLEDは、早くから開発されました。青色のLEDができたことで、3色そろいました。
3色を混ぜれば白になりますし、色の配分を変えれば、いろいろな色を作りだすことができます。
競技場にあるような巨大な画面も可能になりました。

LEDの光を放つ部分で何が起きているのか。
飛び込み台にたとえていいますと、「人がプールに飛び込んでしぶきがあがる、このしぶきが光となって外に出る」というイメージです。
 
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実際には、電子が飛び込み台の高さの分、エネルギーを失って、そのエネルギーが光になって出ていくということが起きているのです。
光の色はエネルギーと対応しています。赤の光は少ないエネルギーでつくれるので、低いところから飛び込むだけで光らせることができます。
 
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緑はもう少し高いところから飛び込んで、緑の光を放ちます。
 
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赤や緑のLEDはできたのですが、青く光らせるには大きなエネルギーが必要で、電子が高いところから飛び込むようにしないとならないのです。
 
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これを実現するには、半導体の材料や条件などが限られて、作るのが難しかったのです。「20世紀のうちにはできない」とまで考えられていた技術でした。
実際には、半導体の結晶がうまくできないので、薄い膜のような層をつくり、その上に結晶を作らせたところ、理想的な結晶ができたのです。
 
Q:それができたから、今回、評価されたというわけなのですね?

A:そうです。20世紀中に実現させることができたのです。

赤・緑・青の3色がそろったので、原理としては3色のLEDを使えば、色が混ざって白い色を出すことができます。ただ、こうすると値段が高くなってしまいます。
 
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実は、私たちが使っているLED電球の多くは違う方法で白い色を出しています。それが図の右側です。「青に黄色を混ぜると、白くなる」、これを利用します。
光があたると黄色く光る蛍光塗料のようなものを中に入れておきます。青色LEDの光がここにあたるとき、青い光はエネルギーが大きいので、黄色く光らせることができます。すると青と黄色が混ざって出てきて、白い光になります。

青色のLEDができたというのは、
▽三原色がそろったという点と
▽エネルギーが高い光を出せるようになったという点で、大きな意味があるのです。
 
Q:LEDの研究がここまで注目されるのは、どうしてですか?

A:LEDには、省エネ、長寿命など様々な特徴があるからです。
例えば寿命。LED電球には、パケージに「寿命4万時間」などと寿命が書いてあります。
ただ、これは4万時間くらい点灯させているとLEDの電球が切れるということではないのです。
 
Q:えっ! そうなると「寿命」とは何を指しているのでしょうか?

A:LEDは長い間使っても切れることはほとんどありません。そこで、明るさが当初の70%に落ちるまでの時間を寿命とするように業界で決めています。
 
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Q:ということは、4万時間以上使えるということでしょうか?

A:そうです。少し暗くなりますが、切れてしまうわけではないのです。
青色LEDができたことで、様々な特徴を持つLEDが多くのところで使えるようになりました。
 
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東京スカイツリーの照明もLEDです。省エネということもありますが、寿命が長いということが使っている大きな理由です。電球を取り換えるといっても、地上400メートル、600メートルとなると大変ですから。
信号機も最近はLEDになっています。
 
Q:省エネ、長寿命ということ以外に何か理由はありますか?

A:普通の電球を使った古いタイプの信号機は、電球の後ろに反射板があったので、夕日に照らされると光ってしまい、「赤信号なのか青信号なのか、わかりにくい」ということを経験したことあると思います。LEDの信号機には反射板はなく、数多くのLEDを並べているので、見やすくなっています。
 
Q:LEDは、交通安全にもつながる技術なのですね。

A:LED研究の発展とともに、私たちの生活もさらに変わってきそうです。

「20世紀中にはできない」といわれていた青色LEDが実現したのは、研究中にちょっとしたトラブル、偶然があったからです。
受賞者の一人、天野さんが半導体の結晶を作る時に電気の炉が故障して、温度がうまく上がらなくなってしまったのです。そのとき天野さんは、低い温度で実験をしてみたところ、青色LEDに必要な結晶ができたのです。
私は2012年に天野さんからこの話を聞いたとき、大変失礼ながら思わず「棚からぼた餅ですね」と言ってしまったのですが、天野さんは「落ちてきた時に、棚の下にいないとぼた餅は手に入りません」と話していました。
あらゆる可能性を追求してみるという天野さんの研究姿勢を感じて、ただただ頭の下がる思いをしたのを覚えています。
今後もノーベル賞で日本人の名前が発表されるか期待したいですね。
 

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