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くらし☆解説 「プラス?マイナス? 円安の影響」

今井 純子  解説委員

きょうのテーマは、こちら、「プラス?マイナス? 円安の影響」。今井解説委員です。
 
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Q)それにしても、円安。すごい勢いですね。

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A)そうですね。円は、今年に入って、一ドル=102円前後で推移していましたが、先月半ばから円安が進み、先週は、109円台にのりました。一か月でおよそ7円の円安は、異常な下がり方なのです。
 
Q)なぜ、これほど急に円安が進んだのですか?

A)世界経済に大きな影響を与えるおカネの流れが、変わり始めたからです。
 
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どういうことかというと、これまで、アメリカは、例のない金融緩和で、世界中にドルをばらまいてきました。ところが、景気が回復してきたことから、アメリカの中央銀行にあたる、FRBが、正常に戻す方針を明らかにしたのです。つまり、これからは、金利が上がっていく可能性が高いということです。
一方の、日本も、アベノミクスで、日銀が異次元の金融緩和をとっています。こちらは、アメリカとは逆に、当面、緩和を続ける方針です。
そうなると、金利の差が広がることになるため、日本で投資するより、アメリカで投資をした方が、
儲かる。ということで、円を売ってドルを買う動きが強まって、円安が進んでいるのです。
 
Q)この勢いは、まだ続くのですか?

A)ここ一か月の円安のスピードは、少し行きすぎの面があります。実際、今週に入って、108円台に戻っています。ただ、方向性としては、日本とアメリカの金融政策の流れが変わらない限り、
当面、円安・ドル高の大きな流れは変わらないだろうというのが多くのエコノミストの見方です。
 
Q)円安は、日本にとって、いいことなのですか?

A)これまでは、日本にとっては、円安がいいことだとされてきました。ですが、ここへきて、これまで円安の大合唱だった経済界からも、今の円安は行き過ぎだという声が出てきたのです。日本経済の体質が、大きく変わってしまった結果、企業や家計にとって、円安のマイナスの面が、強くなってきていることが明らかになってきたからなのです。
 
Q)どういうことですか?

A)まず、これまでの円安の効果を見てみますと、たとえば、一ドル=100円が110円と10円円安になる場合。
 
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100万円の自動車は、100円の時には、単純な換算で、アメリカでは、1万ドルでした。が、110円になると、およそ9000ドルになります。つまり、同じクルマを、これまでより安く売ることができ、
人気が高まるということで、円安は、輸出を増やす大きな原動力になってきました。
 
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では、今はどうか。ここ数年で、企業が、工場を海外にどんどん移してしまった結果、円安になっても、日本でつくっていませんので、輸出は増えません。実際、8月の輸出額は、一年前と比べて
1.3%減っています。円安になれば、いずれ輸出が増えると言っていた、政府や経済界も、ここへきて、日本は円安になっても、なかなか輸出が増えない体質になったことを認めざるを得なくなったのです。
 
Q)そうすると、プラスの面はないのですか?

A)そうでもありません。海外で事業を拡大している大企業は、現地でつくって、同じ値段で売っても、計算上、円に換算した売り上げは膨らみます。
 
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たとえば、先ほどの自動車。同じ1万ドルで売った場合、それを円に換算すると、一ドル100円の時は、100万円でしたが、10円の円安が進むと、それだけで110万円となるわけです。マイナスの面を受ける企業もありますが、大企業全体をあわせると、1兆9000億円分、利益が増えるというのがみずほ銀行の試算です。
 
Q)では、マイナスの面が強くなっているというのは?

A)特に、国内に残された中小企業です。
 
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中小企業も、以前は、円安で、大企業の輸出が増えると、そこへの取引が増えるメリットがありましたが、大企業が海外に移ってしまった結果、円安の恩恵が回ってこなくなった。むしろ、輸入する原材料費や燃料費が値上がりして、1兆3000億円分の利益が減るという試算です。
そして、マイナスの影響をもうひとつ大きく受けるのが、家計です。
 
Q)輸入品が値上がりするからですね。

A)そうですね。まずは、エネルギー。例えば電気代やガソリン価格は、このところ、国際的な原油価格が下がっていたことを受けて、ようやく、少しですが、値下がりしていた。それが、再び、値上がりしかねません。
そして、食料品。夏場以降も、これまでの円安を受けて、ハムやチョコレート菓子、バター、缶詰など多くの食品が値上がりしています。これ以上、円安が続くと、輸入の小麦などが値上がりして、パンやパスタなど多くの食品が一段と値上がりする心配がでてきます。国産の肉もエサの多くを輸入に頼っているため、円安は値上がり要因になります。
 
Q)ほかにもあるのですね。

A)はい。多くの製造業が海外に移転したり、日本メーカーが競争力を失ったりした結果、洋服、テレビ、エアコン、スマートフォンといった多くの家電製品も海外から輸入しています。輸出品の代表のような自動車。日本メーカーのクルマでも、海外でつくって、逆輸入している車種もあるのです。
こうしたものも、一段の円安で、さらに値上がりする心配がでてきます。
 
Q)どのくらい値上がりするのですか?
 
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A)第一生命経済研究所の試算では、例えば、一ドル=100円から110円まで、円安が進むと、
食料品は1.3%、電気代が1.6%、灯油が6.5%、ガソリンが4.2%値上がりするとしています。そのほかのものやサービス含めた物価全体でも、0.8%上がる計算です。
もともと、7月の物価は、総合で、3.4%上がっています。さらに、物価が上がっていくと、家計には大きな打撃です。
 
Q)厳しいですね。

A)日本は、今では、巨大な貿易赤字を抱える、輸入大国ですから、円安のマイナス面が、大きくなってきているのです。
 
Q)金融緩和で、円安にするのをやめたらいいのではないですか?

A)そういう考えはあります。ただ、もともと、日銀は、長年続いてきたデフレから脱却するために、
円安に誘導している面があって、今、政策を変えると、デフレに戻る心配があるというのです。
 
Q)どうしたらいいのでしょうか?

A)消費を冷やさないためにも、やはり、収入を増やすこと。それが欠かせません。
 
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確かに、賃金やボーナスは、大企業を中心に増えていますが、これまでの円安による値上げと、消費増税が、それ以上に重くのしかかっています。物価が上がっている分を差し引いた実質の賃金は、7月で1.7%減っています。一段の円安で物価上昇が続くと、さらに家計は厳しくなります。円安の恩恵を受ける企業の中には、過去最高益を更新する勢いのところも多くありますので、継続的に賃金・ボーナスを増やすことを考えてほしいと思います。政府も、円安に誘導する以上、大企業以外の多くの家庭でも収入が増えるよう、対策を考えてほしいと思います。

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