解説アーカイブス これまでの解説記事

くらし☆解説

twitterにURLを送る facebookにURLを送る ソーシャルブックマークについて
※NHKサイトを離れます。

くらし☆解説 「イスラエル・パレスチナ 若者の対話合宿」

出川 展恒  解説委員

(岩渕 梢 キャスター)
「くらし☆解説」、岩渕梢です。
紛争が続く中東のイスラエルとパレスチナから、大学生や高校生を日本に招き、
合宿生活を通じて相互理解を図るプログラムが、相次いで行われました。
 
kkk140917_00mado.jpg

 

 

 

 

 

 

スタジオは、出川展恒解説委員です。

Q1:
イスラエルとパレスチナの若者たちを日本に招いて、
合宿するという催しがあるんですね。

(出川展恒 解説委員)
A1:
はい。日本のいくつかの民間団体が、10年以上続けています。
中東和平がうまく行かない現状に心を痛め、
現地の若者たちに交流の場を与えようという思いが背景にあります。
先月、2つのプログラムが行われました。
 
(岩渕)
Q2:
2つの催しですか。
 
kkk140917_01.jpg

 

 

 

 

 

 

(出川)
A2:
はい。
▼ひとつは、「日本・イスラエル・パレスチナ学生会議」が主催した
大学生対象のもの。
▼もうひとつは、NPO法人「ピース・フィールド・ジャパン」が主催した
高校生対象のものです。

 
kkk140917_02.jpg

 

 

 

 

 

 

いずれも、イスラエルとパレスチナの若者たちと、日本の学生たちが、
合宿生活を送り、対話と相互理解を図るのが目的です。
今年は、たまたま、パレスチナ暫定自治区のガザ地区で
激しい戦闘が続く真っ最中となってしまいました。
 
(岩渕)
Q3:
ガザ地区では、つい先日まで、激しい戦闘が起きていましたね。

(出川)
A3:
はい。
イスラエル軍とイスラム組織「ハマス」の間で、
激しい戦闘が50日間も続きました。
パレスチナ側は、2100人以上が亡くなり、
イスラエル側も、兵士を中心に70人が犠牲になりました。
双方の参加者が日本に来ること自体が、危ぶまれました。
 
(岩渕)
Q4:
イスラエルとパレスチナの若者たち、普段は交流する機会があるのでしょうか。

(出川)
A4:
実は、顔を合わせることさえ、ほとんどありません。
イスラエルとパレスチナ暫定自治区は、
壁やフェンスで分離されているからです。
そして、イスラエルの若者は、高校卒業後、男女すべてが兵役に就きます。
これに対し、パレスチナの若者は子どもの頃から、
イスラエルによる占領に抵抗するよう教えられます。

互いに相手のことを深く考えることは、ありません。
参加者たちは、遠く離れた日本で、初めて相手と言葉を交わすのです。
 
(岩渕)
Q5:
プログラムは、実際、どのように行われたのですか。

(出川)
A5:
「日本・イスラエル・パレスチナ学生会議」のプログラムは、
イスラエル人とパレスチナ人、合わせて10人の大学生が、
「原爆の日」を迎えた広島で、対話を重ねました。

テーマは、異なる民族の問題、難民や武力行使の問題など、
あえて微妙な政治問題にも踏み込んで、とことん議論しました。

しかし、冒頭から、ガザ地区の戦闘をめぐって、
非難の応酬になってしまいました。
参加者が、相手の発言に怒って席を立つということもありました。
 
(岩渕)
Q6:
大変ですね。

(出川)
A6:
ええ。両者の溝を埋めるきっかけとなったのは、
8月6日の「原爆の日」、いっしょに、被爆者の語り部の話を聞いたことです。
「私たちは、原爆を投下したアメリカへの復讐の気持ちは捨てました」
という語り部の言葉に、双方とも、とても驚かされた様子でした。

また、危険な場面に遭遇した体験や、
親しい人を失った体験などを各人が打ち明け、
相手の苦しみも少しずつ理解してゆきました。

(パレスチナ人女性)
「イスラエル軍の兵士が、祖父の家に家宅捜索に来て、
 叔父の頭に銃を突きつけ、連行しようとしたのです」。

(イスラエル人女性)
「ミサイル攻撃を受けて脳に重い障害を負い、片目を失った親友がいます。
 もう意思の疎通ができません」。
 
kk140917_01.JPGkk140917_02.JPG

 

 

 

 

 

 

kk140917_06.JPGkk140917_08.JPG

 

 

 

 

 

 

(岩渕)
Q7:
参加者たちは、どんな結論を導き出したのでしょうか。

(出川)
A7:
そう簡単に結論は出ません。
イスラエル人とパレスチナ人が平和共存してゆくため、
互いに妥協することが必要という点では、概ね一致しました。

しかし、ガザで起きている戦闘をどうやって終わらせるのか、
そして、パレスチナ問題を最終的にどう解決するのかと言った、
具体的な問題では、ほとんど意見は一致しませんでした。

それでも、半月以上、いっしょに生活する中で、
食事や言葉など、互いの文化の共通点に気づくことも多いのです。
相手を、「同じ一人の人間」として見るようになってゆきました。

締めくくりに、東京で公開シンポジウムを開いて、
参加者が成果を発表しました。

(イスラエル人女性)
「今起きていることについて、互いに全く異なるとらえ方をしていることが、
 対話を通じて理解できました」。

(パレスチナ人男性)
「まず殺し合いをやめること。そのうえで互いに話し合い、
 これまでとは異なる新たな和平合意を作るべきだと思います」。
 
(岩渕)
Q8:
同じ人間である相手を知るというのは、まずは、大きな一歩ですよね。
さて、もうひとつの高校生のプログラムはどうでしたか。
 
kkk140917_03_1.jpg

 

 

 

 

 

 


(出川)
A8:
はい。「ピース・フィールド・ジャパン」のプログラムには、
イスラエルとパレスチナの女子高校生4人ずつが参加しました。
日本の学生と支援スタッフが加わり、
山梨県の小菅村で、サマーキャンプを行いました。

「デリケートな時期なので、ビデオによる撮影は見合わせて欲しい」
ということでした。
 
kkk140917_03_2.jpg

 

 

 

 

 

 

kkk140917_03_3.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

山登り、川下り、農作業、村の人たちの指導で草履やそばを作る。
そして、ホームステイがありました。
自然に親しみながら、相手を知り、仲良くなるのが目標で、
政治問題は話題にしないことを全員が確認し、
コミュニケーションは英語で行いました。
 
(岩渕)
Q9:
合宿に参加した高校生たちはどう変わりましたか。

(出川)
A9:
初めは、なかなか打ち解けなかったのですが、
いっしょに作業する中で、相談し合うようになり、
助け合いの気持ちも生まれました。

イスラエル人もパレスチナ人も、
「相手も自分と同じようなことで悩む高校生ということがわかった」
と話していました。
 
kkk140917_03_4.jpg

 

 

 

 

 

 

すべての日程を終え、「お別れの会」では、
全員が別れを惜しみ、抱き合って、涙を流す姿もありました。
 
(岩渕)
Q10:
2つのプログラムは無事終了したのですね。

(出川)
A10:
はい。全員無事帰国し、半月以上になりますが、
参加者から感想がメールで寄せられています。
 
kkk140917_04.jpg

 

 

 

 

 

 

 

イスラエルの参加者からは、
「われわれの“敵”と教えられてきたパレスチナ人と初めて会話した」
「ユーモアも知性もあり、自由に議論できる人たちだった」
「参加して本当に良かった」
という感想がありました。

一方、パレスチナの参加者からは、
「イスラエル人はすべて“敵”だと一括りにして見ていたが、
いっしょに生活し、話をしてみると、共感できる部分もあった」
「もう今までの自分とは違う」
「率直な議論ができて、すっきりした」
こうした内容です。
 
(岩渕)
Q11:
参加した学生たちが、現地で再び会う機会はあるのですか。

(出川)
A11:
直接会うことはありません。
メールやフェイスブックで、連絡を取り合っているということです。

このプログラムを企画、実行した日本の大学生たちにとっても、
多くのことを学ぶ貴重な体験となりました。
 
kkk140917_05.jpg

 

 

 

 

 

 

事務局長で、国際基督教大学2年生の木内萌乃さんは、
「ガザ地区の戦闘があったので苦労しましたが、
 “対話の場”を提供できて本当によかった。
参加した人たちが、将来、和平のリーダーになってくれればうれしいです」。
このように語っていました。
 
(岩渕)
Q12:
取材を通して、どんなことを感じましたか。

(出川)
A12:
これは非常に難しいプログラムです。
さまざまなトラブルと背中合わせで、
綿密な計画づくりと細心の注意が必要です。
今年は、ガザ地区の戦闘の真っ最中でしたから、実現したこと自体が驚きです。

たった2週間の共同生活では、相手を深く理解することはできません。
それでも、「同じ人間どうし」だということを発見し、
対話することが大切だという思いを共有できたのは、
次の世代に、和平への希望を託す、とても貴重なとりくみだと感じました。
 
(岩渕)
「くらし☆解説」、きょうは、
イスラエルとパレスチナの若者たちの対話合宿について、
出川解説委員とお伝えしました。
 

twitterにURLを送る facebookにURLを送る ソーシャルブックマークについて
※NHKサイトを離れます。

キーワードで検索する

例)テーマ、ジャンル、解説委員名など

日付から探す

2017年02月
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28        
RSS