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くらし☆解説 「ダンスクラブ規制緩和へ」

寒川 由美子  解説委員

(前説)
くらし☆解説。
きょうは“ダンス”“クラブ”の規制緩和について、寒川解説委員とお伝えします。
 
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ダンスの規制緩和と言われても私はダンスをしないのでピンと来ないんですが。


ダンスをしない人には関係のない話と思われるかもしれませんが、実は結構、私たちの生活にも関わってくることなんです。
 

どういうことですか?


お客さんがお金を払ってダンスを楽しむ、お客さんにダンスをさせる営業形態は、風俗営業法で規制されていて、深夜営業などが禁止されているんです。
この規制を緩和しようという動きが、いま大詰めにさしかかっているんです。
規制緩和によって、街の姿が変わるとか、経済活性化につながる可能性もあって、私たちも無関係ではないんです。
 

お客さんにダンスをさせる営業、具体的にはどういうところなんですか?


食事やお酒を提供するか、しないかによって大きく分かれます。
 
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▼飲食の提供をしないで、お客さんにダンスをさせるというのは、例えば社交ダンス教室や、スポーツとしてのダンスイベントなどです。
国家公安委員会が指定した講習を受けた人が講師として教える場合は風俗営業にはあたらないんですが、そうでない場合は風俗営業という位置づけです。

▼飲食を提供しながらダンスをさせるという営業の代表的なものは、「クラブ」。
若者が音楽にあわせて踊るところです。
一昔前のディスコのようなものですが、DJ、ディスクジョッキーが音楽をかけるとか、曲にヒップホップやラップ音楽が多いといった特徴があります。
他にも、ラテン系の踊りとして人気が高まっているサルサなどのお店もあります。
ダンス教室などとクラブ、お客さんの層も雰囲気も全く違いますが、「ダンス」という観点で、同じように規制されているんです。
 

なぜそういう規制がされているんですか?
 
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ダンスを規制する風俗営業法は終戦直後の昭和23年に施行されました。
当時はダンスホールで、店に雇われた女性ダンサーと客とを踊らせる営業が、売春を助長するおそれがあるとして規制がかけられました。
いまは、そういった営業形態の店はなくなっているんですが、善良な風俗を守り、少年を健全に育成するためとして、ダンスをさせる営業に対して規制が続いています。
原則として深夜0時以降の営業や、18歳未満の入店が禁止されているんです。
 

この規制が、なぜ、いま見直しということになったんですか?
 
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最大の理由は、風俗営業としての規制が時代遅れになってきたことです。

食事や酒を提供しない社交ダンス教室などでも、講習を受けた講師がいない場合は風俗営業にあたるということで、例えば公民館が部屋を貸さないといったことが実際にありました。
また、海外から有名ダンサーを招いて指導してもらうといった場合も、講習を受けた講師ではないので、風俗営業の許可がないとダメ、といった事態も実際に起きているんです。
 

それはおかしいですよね。


また飲食を提供する「クラブ」についても、音楽家の坂本龍一さんなど著名なアーティストが、規制対象から外すよう求めて署名活動を行いました。
「若者文化の拠点になっているクラブを、60年以上前の法律で一律に規制するのはおかしい」という訴えに、16万人もの署名が集まりました。
さらに国会でもダンス文化を推進する超党派の議員連盟が作られ、法改正を検討するなど、規制緩和を求める動きが強まっていたんです。
 

規制は、どう見直されることになりそうですか?


一言で言うと、「ダンス」というくくりでの規制はやめる方向になる見通しです。
風俗営業法を管轄する警察庁は、有識者の会議を設置し、今週まで検討が続けられてきたのですが、その検討結果が近くまとまります。この中では、
▼ダンス教室などについては、基本的に風俗営業法から外す。
▼クラブについては、一定の条件を満たせば、深夜営業を認める。
▼どういった場所で何時までの営業を認めるかは自治体の条例にゆだねる、
といったことが盛り込まれると見られています。
 
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ただ、「クラブ」の規制緩和については、実は別の狙いもあって進められてきたんです。
 

別の狙い?
 
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経済効果という狙いです。
クラブの売り上げは、小さなところも会わせると年間1000億円を超えるとみられています。
また、クラブで音楽をかけるDJ、ディスクジョッキーの中には年収が数億円という人もいます。
さらに関連産業は、レコード会社や音響機器メーカーのほか、飲料メーカー、アパレル、建築デザインなど、以外と裾野が広いんです。
大手の楽器メーカーや貸しビル業者の中には、ダンス事業に乗り出したいというところもあるのですが、風俗営業にあたるということで、躊躇しているという。
経済再生を目指す今の政権にとって、クラブの規制緩和で大手企業の参入や、関連産業の発展につなげたい。
さらに2020年の東京オリンピックに向けて観光客を呼び込む売り物にしたい。
そうした思惑もあって、政府の規制改革会議は今年度中に、ダンスの規制を見直す方針を打ち出しました。
 

経済活性化につながる可能性があるという訳ですね。


しかし、「クラブ」の規制緩和には、様々な懸念もあります。


どういうことですか?
 
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クラブの周辺住民からは騒音やゴミの不法投棄といった迷惑行為、酒に酔った若者による暴力沙汰などの通報が警察に寄せられています。
クラブが多く集まる六本木や大阪のアメリカ村の地元住民からは、営業時間が延びれば、騒音や迷惑行為が増えるのではないかという懸念の声が聞かれました。
さらに大きな問題として、危険ドラッグなど薬物犯罪の温床になるのではという指摘もあります。
有識者会議の中でも、一般の人に比べてクラブ利用者で、大麻や危険ドラッグの利用が多いというデータが示されました。

こうしたことから、警察庁は当初、規制緩和には慎重な姿勢だったのですが、政府の方針決定などに押し切られる形で、今回、風俗営業法の改正に舵を切ることになったのです。
 

そういった問題がある中で、規制緩和して大丈夫なんでしょうか。


やはり、懸念が残る部分についてはきちんと手を打つ必要があると思います。
ダンスというくくりでの規制を外すのであれば、一方で、暴力なら暴力、薬物なら薬物に対する個別の法律で厳しく取り締まることが警察には求められます。

一方、深夜営業を認めることでクラブ側と警察との連携が進むという見方もあります。
というのも、実際には深夜営業をしているクラブも多く、それらの店では、問題が起きても取り締まりを恐れて、警察に通報せずに済ませている実態があるからなんです。
また、クラブ側が業界団体を作って自主規制ルールを徹底していこう、という動きもあります。
例えば、
▼18歳未満を店に入れないため、運転免許証などで年齢を確認する。
▼店の外にもスタッフを置いて、騒音や迷惑行為を防止する
とったルールです。
 
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地元商店街と一緒に清掃活動に取り組んでいるところもあります。
こうした取り組みを進めることが、懸念を払拭する上で大切だと思います。
 

クラブ側にもそうした姿勢が求められるということですね。


今回の法改正の動きは、規制緩和ありきで進んでいるのですが、どうしても前のめりという印象が否めません。
経済を優先することで、安全安心が脅かされるような事態になっては、何のための規制緩和かということになってしまいます。

警察庁は、今回の有識者会議の検討結果をもとに風俗営業法の改正案を作り、秋の臨時国会に提出します。
様々な問題をクリアしながら規制緩和をどう進めるのか、引き続き注目していきたいと思います。

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