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くらし☆解説 「どうなる?ストーカー対策」

寒川 由美子  解説委員

【岩渕】
きょうは「ストーカー対策」について、寒川解説委員とお伝えします。
 
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ストーカー行為の規制方法などについて検討してきた有識者の検討会が、おととい(5日)、警察庁に提言を出しました。
提言では、ストーカー規制法の見直しや、被害者への支援を求めています。
こうした提言が行われることになったのは、どうしてですか? 

【寒川】
ひと言で言うと、ストーカー事件が後を絶たず、いまの対策が、現状に追いついていないからなんです。
 
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こちらは警察が把握したストーカー事案の件数です。
去年、初めて2万件を超えました。
被害者は9割近くが女性ですが、男性の被害者も1割ほどいます。
ただ、殺人など重大なストーカー事件の被害者は、ほとんどが女性です。
 
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ことしに入っても、2月には群馬県館林市で、5月には大阪市でストーカーの加害者に女性が殺害された。
いずれに事件も、被害者は警察に相談していましたが、被害者を守ることは出来ませんでした。
こうした事件を防ぐためにも、抜本的な対策が求められているのです。
 
【岩渕】
そのためには、いまの法律を見直す必要があると言うことですね?

【寒川】
はい。
ストーカー規制法は14年前に作られ、去年、初めて改正されましたが、かなり限定的な改正にとどまっていました。
 
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例えば、▼電話やファックスに加えて電子メールをしつこく送ることが規制対象となりました。
また、▼被害者が住んでいるところの警察だけでなく、加害者が住んでいるところの警察も、警告などを出せるようになりました。

ただ、これらの改正は、実際の事件を受けた、いわば対症療法的なものでした。
そこで、法改正の後、検討が行われ、今回の提言となったのです。
ですから、提言は、抜本的な法改正に向けた第1歩だと言えます。
 
【岩渕】
提言の内容を詳しく教えてください。
 
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【寒川】
提言は、大きく3つの部分に分けられます。
ひとつは、ストーカー規制法の見直しに関する部分。
そして、法律とは別の、被害者への支援、それに加害者対策に関する部分です。
 
【岩渕】
まず、法律の見直し部分、これはどういう内容ですか?
 
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【寒川】
主なポイントは3つあげられます。
ひとつは、SNS=ソーシャル・ネットワーキング・サービスも対象にする。
それから、被害者の告訴なしでも逮捕などができるようにする。
そして、罰則を強化するべきと、した点です。
 
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このうち、SNSについてですが、
例えば、
▼フェイスブックの友達申請を無視しても、別の名前でしつこく申請してきた、とか、
▼LINEのゲームに使われるポイントを何十回も送りつけてきた、といったケースが実際にありましたが、取り締まることはできませんでした。
これらの行為は、たいしたことはないのではないか、と思われるかもしれませんが、被害者は精神的に非常に追いつめられるということなんです。
 
【岩渕】
SNSがこれだけ普及している以上、当然という気がしますね。

【寒川】
そうですね。
次に、告訴なしでも、逮捕などが出来るようにする、という点についてです。
ストーカー行為を罰するには、被害者からの告訴が必要とされています。

これは、被害者の中には、事件になって公の裁判になるのは嫌だという人もいるので、そうした気持ちに配慮して、告訴があった場合だけ事件にする、ということなんです。

しかし、ストーカーの加害者は、元交際相手など身近な人であることも多く、被害者が、そこまでしたくない、とか、深刻さを認識していない、さらには仕返しを恐れる気持ちもあって、告訴をためらうケースも多いんです。

実際、5月に大阪で起きたストーカー殺人事件でも、被害者が告訴を望まず、警察が逮捕に踏み切らないでいるうちに、事件が起きてしまいました。
 
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今回の提言では、被害者に危害が加えられる恐れがある、客観的に見て危険だといった場合には、その前に、告訴がなくてもストーカー行為で逮捕できるようにすべきとしています。

ただ、そのためには、警察官が、加害者の危険度を見抜かなくてはなりません。
大阪のストーカー殺人事件は、つきまとい行為がおさまったと判断した警察が、危険度を引き下げた直後に起きました。
現場の警察官が、危険性を見抜く力を持つこと、そのための教育などが求められると思います。
 
【岩渕】
被害を防ぐためには、こうした提言、すぐに実行に移してほしいですね。

【寒川】
そうですね。
大事なのは、この提言を実際の被害の防止に生かすため、一刻も早く立法化、法律の改正を進めることです。

ただ、ストーカーの被害をなくすには、法改正だけでは解決になりません。
むしろ、被害者への支援、そして刑罰以外の加害者対策が重要なんです。
 
【岩渕】
それはどういうことですか?

【寒川】
提言をまとめる議論の中でも、ストーカー殺人事件の被害者の遺族などからは、被害者支援は、まだほとんど手つかずだという声が聞かれました。
 
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提言では、被害者を支援するために、
▼まず、警察の体制整備を求めています。
具体的には、相談しやすいよう窓口に女性警察官を増やしたり、現場の警察官
にストーカー事件の特徴や危険性を教育したりすることです。
 
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そして、
▼警察以外の体制整備も求めているのですが、こちらの方が、むしろ不十分。
例えば相談窓口ですが、
去年の法改正で、全国の都道府県にある婦人相談所が、ストーカー被害の相談にもあたることとされましたが、ストーカー関連の相談件数はすべての相談の1%にも満たない。これでは、相談窓口だと知らせる努力が足りないと言わざるを得ません。

また、婦人相談所は厚生労働省の所管で、警察と連携がとれていないため、被害情報が警察に伝わらず、事件を防げていないという指摘もあります。

各地で、配偶者からの暴力の相談にあたっている支援センターなど、いまある仕組みを使って、ストーカー被害者の相談にあたる体制を整える。

そして危険性が高い場合には、婦人保護施設や民間のシェルターを活用して、
一時保護する。
こういった、警察だけではできない取り組みを、各省庁や自治体が連携して進めてほしいと思います。
 
【岩渕】
加害者対策についてはどうでしょう。

【寒川】
そこが難しいのです。
実は、ストーカーの加害者は、警察からの警告で9割は行為をやめています。
しかし、警告や罰則が歯止めにならない加害者をどうするか。
おととし神奈川県逗子市で起きたストーカー殺人事件では、加害者は事件後に、自殺しました。
自殺を覚悟しているような加害者の場合、罰則を強化しても事件を防げない、加害者の考えを根本的に変える必要があるのです。
 
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警察庁は、ことし、実際に検挙した人に、専門家によるカウンセリングや治療を受けてもらい、効果を調べる研究を始めました。
被害者に執着するのはなぜか、それを取り除くにはどうすればよいのか、来年3月には結果をまとめる予定です。

今回の提言では、再犯防止の教育プログラムなども検討すべきとしています。
刑務所から出た後、再びストーカーを繰り返す加害者もいるからです。
警察や、刑務所、保護観察所などが連携し、被害者を守るという観点で加害者対策を進めてほしいと思います。
 
【岩渕】
様々な取り組みが求められているんですね。

【寒川】
提言の作成に携わった遺族は、今回、遺族の声が直接、国に届いたことは評価できるとしながら、これはまさに入り口で、実際に法律に反映されたり対策がとられたりしなければ意味がない、と話していました。

提言をきっかけに、ストーカー対策は待ったなしの課題ととらえ、省庁の縦割りを超えて、やれることにはすべて取り組む、その姿勢が、なにより必要だと思います。

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