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くらし☆解説

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岩渕 こんにちは、くらし☆解説です。
猛暑のなか、連日のように熱中症について報じられていますが、注意する必要があるのは熱中症だけではないそうです。土屋敏之解説委員に聞きます。

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岩渕 この時期、やっぱりまず熱中症が心配になりますけれど?
 

土屋
・それはもちろん大事なんですが、皆さん「熱中症じゃないか」と思うのは、例えば猛暑の中で、こんな症状があるときではないでしょうか?
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「めまい」「吐き気」「しびれ」「力が入らない」、さらには「うまく歩けない」「呼びかけても言葉が返ってこない」・・・など。

岩渕 そうですね。たしかに熱中症みたいな気がしますね。

土屋
・でも実は、これらの症状は、熱中症だけでなく、脳卒中でも現れることがあるものなんです。

岩渕 よく似た症状があるってことですか?

土屋
・はい。ですから、私たち素人には判断が難しいですし、去年ある県立の医療機関で、実際は脳卒中だった患者さんを熱中症などと誤認して、適切な治療が遅れ、後遺症が残ってしまった、というケースもありました。

岩渕 「脳卒中」って、寒い冬場に心配な病気だと思ってましたが?
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土屋
・そう思われがちですが、脳卒中には大きく3つの種類があります。 
脳の血管がやぶれる「脳出血」や「くも膜下出血」と、血管が詰まる「脳梗塞」です。中でも亡くなる方が一番多いのが「脳梗塞」ですが、この脳梗塞の発症時期は、夏場が最も多いようなのです。
・そこできょうは、脳梗塞を中心にお話ししますが、夏になぜ、脳梗塞が増えるかと言うと、暑くて体内の水分が減ると、血液が濃くなって粘りけを増した状態になりますし、血のかたまり「血栓」が血管に詰まりやすくなるためではないかと考えられています。

岩渕 熱中症と同じく、脱水が原因になるんですね。

土屋
・まず熱中症になって、そこから脱水が進んで脳梗塞になる、というケースもあるそうです。
・もちろん熱中症も命に関わりますから、十分注意して欲しいと思いますが、熱中症だと思い込んで、涼しい場所に行って横になっていても、脳梗塞はよくなりません。症状が、一旦収まったように見える場合もありますが、一刻も早い対処が必要です。
・しかも最近、「若年性脳梗塞」といって、3、40代の方が脳梗塞を起こすケースも報告されていますので、若いからといって他人事と思わないことが重要です。
・また、脳梗塞以外には、「心筋梗塞」や「低血糖」と言われる症状なども、熱中症と似ている場合がありますので、暑くて体調を崩したから熱中症だ、と決めつけないようにしてほしいと思います。

岩渕 脳梗塞かどうか、チェックできる方法はないですか?
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土屋
・FASTという、チェック法が提唱されています。家族など周りの人が患者さんの様子を見る形にするとスムーズにチェックできます。
□Face まずFはフェイス「顔のまひ」です。
患者さんに、歯が見えるぐらいの笑顔になってもらって下さい。この時、普通は口の両側が上がるのに、片側だけ下がったり、歪んだりすることがあります。

□Arm  Aはアーム「腕のまひ」です。
今度は両腕を水平に挙げてもらって下さい。この時、片方だけ下がっていないか、チェックします。

□Speech Sはスピーチ「言葉の障害」です。
普通に会話しようとしても、ろれつがまわらなかったり言葉が出てこないことがあります。

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・これら3項目の一つでも当てはまったら、脳梗塞の疑いがあります。
そうしたら、

□Time Tはタイム、症状に気づいた時刻を忘れず、すぐ119番して下さい。
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岩渕 “発症時刻”というのも重要なんですか?

土屋
・はい。なぜかと言うと、脳梗塞にはある種の“特効薬”とされる薬がありますが、この薬が時間と大きく関わっているからです。

岩渕 特効薬?そんなのがあるんですか?

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土屋
・「t-PA」と呼ばれる薬で、血管をふさいでしまった血栓を溶かす効果があるので、うまく使えれば命を救えたり後遺症を減らせる可能性があります。
・ただし、この薬、発症後4時間半以内に投与しなくてはならない、という制約があります。血管組織がダメになってしまった後で投与すると、かえって大出血を起こす危険が大きいと考えられています。

岩渕 この薬が十分に活かされていないわけですか?

土屋
・はい、こちらは少しデータが古いのですが、2007年までの脳梗塞の患者さんが、発症してから病院に到着するまでの平均時間です。
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岩渕 どの地域も、大体20時間ぐらいかかっていますよね!?

土屋
・これでは、t-PAは使えません。この中で救急車を使った方も半数ぐらいいますが、深刻に受け止めず、翌日以降に来院した方も多いことを示しています。

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土屋
・t-PAが普及してきた最近のデータを探したところ、東京都が詳しい調査を行っていました。こちらは救急車で搬送された方だけの調査なので条件は違いますが、発症から病院到着までが、2010年には平均4時間49分、そして2012年には4時間5分でした。

岩渕 4時間半を切りましたね?

土屋
・ですが、これではまだ十分ではありません。病院についた後も普通は検査や診断などで1時間ぐらいかかりますので、3時間半ぐらいで着かないとt-PAの投与は難しいのです。実際この2012年の調査期間で、t-PAを受けられた患者さんは対象者のわずか8.5%でした。

岩渕 どうしたらいいんでしょうか?

土屋
・都では所要時間の内訳も調べました。すると、発症から119番通報までが平均で3時間17分、119から救急車が出動し病院に着くまでは48分でした。
・つまり、時間短縮に一番大きいのは、我々患者や家族の側が、早く気づいて119番すること、とも言えます。
・もっとも、これは、t-PAを使える専門的な病院がたくさんあって、かつ地域も比較的狭い東京の場合です。全国的に見れば、まず医療機関や救急搬送の体制自体も、さらに充実させていく必要があります。

岩渕 国や自治体は対策を進めているんでしょうか?

土屋
・ちょうど、この6月に、「脳卒中対策基本法」という法案が国会に出されて、成立すれば、早ければ来年4月から施行される見込みです。
・この法律ができると、各都道府県が脳卒中対策の推進計画を定めて、一般への啓発
活動や救急・医療・リハビリなどの体制整備を総合的に進めていくことになります。
・一刻も早く、実効性のある仕組み作りを進めて欲しいと思います。


岩渕 私たちが自分で心がけられることは、他にもあるんですか?

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土屋
・脳梗塞にも熱中症にも共通の予防法として、やはり十分な水分を取ることが、まず効果的とされています。
・喉が渇いたという自覚が無くても脱水症状は起きますので、特に起床直後、入浴前後や就寝前には、コップ一杯分は水分を取るようにしたいです。

岩渕 暑い時期、ビールなどもおいしいですが?

土屋
・おいしいのは否定しませんが、アルコールやカフェインを多く含む飲み物は、利尿作用がありますので、度が過ぎるとかえって脱水につながるおそれもあります。ですから、水分補給はアルコール類とは別にした方がいいと思います。
・そして、熱中症も脳梗塞も、暑い日中だけでなく、実は夜間に屋内で起きることが多いですから、熱帯夜などは我慢せずにエアコンを使ってほしいです。

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岩渕 そして、なにか異常があったら、FASTを忘れずチェックしたいですね。

土屋
・ぜひ、家族や周囲の人の様子も気にかけてみて下さい。
 

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