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くらし☆解説

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くらし☆解説 「ウナギ 絶滅危惧種指定の影響は?」

合瀬 宏毅  解説委員

岩渕)くらし☆解説です。国際的な自然保護団体、IUCN国際自然保護連合はきのう、ニホンウナギを絶滅危惧種に指定したことを発表しました。指定の影響について合瀬宏毅(おおせひろき)解説委員とともにお伝えします。
 
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岩渕)ウナギ、指定されてしまいましたね?

はい。ちょうど一年前にこの番組で、IUCNの作業チームがウナギの絶滅危惧種、指定を検討していることをお伝えしました。
作業チームではそれから一年を掛けて議論し、昨日そのニホンウナギをレッドリストの絶滅危惧ⅠB類に指定したことを発表したというわけです。
 
岩渕)絶滅危惧ⅠB類、どういう意味がある?

IUCNでは、対策を打たなければ、近い将来にその種が地球上から一頭残らず永久にいなくなってしまう野生生物を、絶滅危惧種と呼んでいます。
 
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その中でも、ごく近い将来に危険性が極めて高い種をⅠA。近い将来に危険性がある種をⅠB、そして危険が増大している種をⅡ類としてランクつけ。そしてそれに準じるものを準絶滅危惧種として区別しています。
今回IUCNの作業チームが、ニホンウナギに下した絶滅危惧ⅠBは、上から2番目の近い将来絶滅の危険性があるランクです。同じカテゴリーにはパンダやアカウミガメ、トキがおり、こうした動物と同じくらい絶滅の恐れのあるということです。
 
岩渕)ウナギは養殖ですが、野生生物として評価されるのですね。

もちろん天然ウナギもいますが、私たちが通常食べているウナギは、長さ3センチほどの野生のシラスウナギを捕獲して、それを養殖したものです。例え養殖でも、元は野生ですから、評価の対象となります。
 
岩渕)これに指定されるとどうなるのですか?

指定されたからと言ってこれ自体に法的な拘束力はなく、直ちにウナギが食べられなくなることはありません。
ただ各国の政策担当者やNGOなどがIUCNのレッドリストを最も権威のある資料として活用していますので、ニホンウナギの保護を求める国際的な世論が高まることが予想されます。
特に動植物の国際取引を規制するワシントン条約です。IUCNのデータを元に様々な規制を検討しますので、対策を取らなければ、国際取引で規制される可能性は高くなります。
 
岩渕)そうなれば食卓への影響も大きくなりますね?
 
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そうですね。これはウナギの国内での供給量ですが、私たちが現在食べているウナギ、国内で養殖しているのは47%で、半分以上が中国や台湾からの輸入です。
ワシントン条約によって国際取引を規制されるようなことになれば、まず輸入による供給量は大幅に減る可能性がある。
 
岩渕)国内の分の半分ぐらいになるということですか?

ところが国内で養殖しているウナギについても、原料となるシラスウナギは半分以上が中国や台湾からの輸入です。つまり国内で供給できるのは、47%のさらに半分以下。供給量は極端に減りそうなのです。
 
岩渕)大変なことですね?

今回、熱帯地方のウナギは絶滅危惧種に指定されなかったので、そうしたウナギを輸入すれば良いのではという声もある。しかし世界のウナギの75%を食べていると言われている日本ですから、ニホンウナギが食べられなくなったからといって、他のウナギにまで手をだすと、国際的な批判が高まるのは必至です。
 
岩渕)しかしニホンウナギ、それほど危機的な状況なのですか?
 
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これはシラスウナギの国内での漁獲量ですが、最盛期には232トン獲れていたシラスウナギは年々少なくなって、去年は5.2トンにまで減ってしまった。
IUCNは絶滅危惧ⅠB類の指定条件として、3世代で生息数が70%以上減少していることを上げているのですが、国内の減少を考えると、最も危険度の高いⅠAに指定されてもおかしくなかったと指摘する専門家もいます。
 
岩渕)ただ今年は豊漁だというニュースもありましたよね?

今年は各地でたくさん獲れていると言う情報も寄せられてはいたのですが、それでも増えたのはわずかで、これまでよりましというにすぎません。
IUCNの作業チームは、減少の理由を、過剰漁獲だけでなく、ウナギが育つ川などの生息地の消失、ダムなど回遊ルートの障害、そして海流の汚染など複合的な要因が絡んでいるとしています。
 
岩渕)今後、どういう動きになるのでしょうか?

今後の注目点は、さ来年、南アフリカで開かれるワシントン条約でどういう扱いになるかということです。
 
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ワシントン条約は、正式には「絶滅の恐れのある野生生物の種の国際取引に関する条約」と言い、輸出国、輸入国が協力して、国際取引の規制を実施することにより、絶滅の恐れのある野生生物の捕獲を抑制し、その保護を図ることが目的です。
 
岩渕)ここで規制されるかどうか決まるわけですね。

そうです。ワシントン条約では、規制すべき対象を付属書ⅠとⅡに指定することにしています。このうち付属書Ⅰは商業目的の国際取引を全面禁止。付属書Ⅱは、輸出国の承認を貿易の条件にしています。
付属書に指定するかどうかは、締約国や科学委員会が事務局に提案し、投票で決められます。付属書Ⅱであれば、まだ国際取引の可能性はあるが、付属書Ⅰに掲載されれば全面的な取引禁止となります。
 
岩渕)ニホンウナギはどうなりそうか?

ワシントン条約ではすでにヨーロッパウナギが付属書Ⅱとなっていますが、レッドリストでは、ニホンウナギより危険性の高い絶滅危惧ⅠA類。そうしたことから、ニホンウナギも付属書Ⅱが妥当ではないかという意見はある。日本鰻輸入組合の森山喬司理事長はそうした見方です。
ただどこに提案するかは、提案する国の自由、日本としては付属書Ⅰに提案されないように、各国に働きかけるしかありません。
 
岩渕)各国は働きかけに応じてくれるのですか?

覚えていらっしゃる方もいるかと思いますが、2010年に大西洋クロマグロが、国際取引禁止の付属書Ⅰに提案されたことがありました。
大西洋からたくさんのマグロを輸入する日本としては、大変な事態だとして、自らが行う資源管理を締約国各国に必死で訴え、それを受け入れた各国が日本を支持し提案は否決されました。
 
岩渕)そうこともありましたね

国際取引の禁止は絶滅危惧種を守る、あくまでも手段の一つ。自らが積極的に対策に取り組み、他の締約国が認めてくれれば、付属書指定は見送られることもあります。
 
岩渕)その分対策をしっかりやらなければならないということですね

そうなのです。水産庁では輸出国の中国などとともに漁業規制など様々な対策を行ってはいます。消費者もウナギを食べるのを少し我慢することも必要です。
今の状態を続けていれば、ワシントン条約での取引規制は逃れられない。親うなぎの保護など、資源管理を徹底し、シラスウナギを増やす努力をすることが求められていると思います。

 

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