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くらし☆解説

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くらし☆解説 「高齢者は注意!"フレイル"ってなに?」

土屋 敏之  解説委員

<岩渕> 
年齢と共に体の不調が増えたり、健康が心配になってきたかた、多いと思いますが、最近、新しく注意が呼びかけられている『フレイル』というのがあるそうです。
土屋敏之解説委員に聞きます。
 
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そもそも「フレイル」って聞いたこともありませんが、一体何なんですか?

<土屋>
簡単に言うと、こちら。
 
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「(年齢に伴って)筋力や心身の活力が低下した状態」のことです。高齢者の病気の専門医などが作る「日本老年医学会」が、提唱しているんです。
 
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もともとは「frailty(フレイルティー)」弱さ・虚弱という意味の英語で、欧米では既に20年程前から、医療現場で使われている言葉です。
そして先月、学会が声明文を出しまして、「高齢者の多くは、“フレイル”の段階を経て、要介護状態になるので、早期発見をして対処することが必要だ」と医療・介護関係者に呼びかけたんです。
 
<岩渕> 実際、フレイルの人って、どれぐらいいるんですか?

<土屋>
愛知県のある都市で行われた調査では、65歳以上で脳卒中などの持病が無いかたのうち、11%がフレイルでした。これを全国に当てはめると、およそ300万人、フレイルの方がいる、という計算になります。
 
<岩渕> 結構多いんですね。具体的にはどういう人がフレイルなんでしょう?

<土屋>
日本にはまだ診断基準が無いので、アメリカで使われている方法で、チェックしてみましょう。岩渕さんも身近な年配の方を思い浮かべて見て下さい。
 
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   □体重減少  (日本人の体格だと、1年間で2~3kg減っていたら要注意)
   □(最近、以前より)疲れやすくなった
   □筋力の低下 (例えば、買物で2㍑のペットボトルなどを運ぶのが大変に)
   □歩くのが遅くなった  (横断歩道を青信号の間に渡るのが難しくなった)
   □身体の活動性の低下  (最近、趣味のサークルに出かけたりしなくなった)
この中で3つあてはまったらフレイルの疑いがあります。
 
<岩渕> でも、これって、単に自然な「老化」じゃないんですか?

<土屋>
生活に支障のない老化ならいいんですが、フレイルというのは放置すると要介護につながる段階。別の見方では、健康と病気の中間のような段階です。
 
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なぜかと言うと、こちら。まず、「体力や筋力が低下」します。
すると「日常の買い物にも出かけるのがおっくうに」なりますよね。
その結果、「人と接する機会が減ったり、食生活がバランスを欠いたものになって」、「ますます体も衰え」さらには「判断力・認知機能」いわゆる頭の働きも低下、といった悪循環が起きる、これがフレイルなんです。
 
<岩渕> 自分で予防できるような方法はあるんですか?

<土屋>
学会のワーキンググループ代表を務めた、京都大学の荒井教授が提案している、予防法がこちらです。
 
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(1)たんぱく質、ビタミン、ミネラルを含む食事
(2)ストレッチ、ウオーキングなどの運動
(3)身体の活動量や認知機能を定期的にチェック
これは自分ではなかなか難しいですが、医療機関や周囲の人に協力してもらったりして気がつきたいですね。         
(4)感染予防
高齢者の体力がガクッと落ちるきっかけとして、肺炎などがあるので、予防のために、インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種を受けるのも大切です。                   
(5)手術の後は栄養やリハビリなど適切なケアを
これも同様に、病気などで入院したのをきっかけに体力が落ちることが多いので、リハビリもしっかりと。
(6)薬の種類が多い人は主治医と相談
目安は6種類以上。色んなお医者さんからそれぞれ薬をもらっていると、例えば睡眠作用のある薬が重なっていて活動が低下したりする場合もあるので、医師に相談してほしいと思います。
 
<岩渕> 言われてみれば割と普通の事ですが、具体的にはどうしたらいいんですか?

<土屋>
特に心がけたいのが、しっかり栄養をとることと、しっかり活動すること、です。   
まず食事ですが、クイズを出しましょう。
こちらの朝食のメニューを見てなにか気がつくことはありませんか?
 
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<岩渕> パンと野菜サラダに果物もついて、健康的な気がしますが?

<土屋>
実はこれは、よく無い例なんです。具体的には、タンパク質が足りません。
 
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以前から日本人の、特に高齢者の食事はタンパク質が不足気味だと指摘されています。タンパク質は筋肉の元なので、不足するとフレイルにつながりますので、ここに牛乳と卵を追加すると、1食分としてちょうどいいぐらいになります。
もちろん、パンでなくご飯食でもいいですし、卵の代わりに魚や肉、納豆などもタンパク質が豊富ですよね。
 
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1日のメニュー例がこちらです。合計60gぐらいタンパク質が摂れるように考えられたものです。
昼のメニューでは、大豆やエビなど、夜は肉と、ちくわも入っていますね。   
ここまで手のこんだものを毎食用意するのは大変だと思いますが、何かタンパク質をとることを意識していただきたいですね。
 
<岩渕> 次は運動ですね。これは高齢者はお散歩とかが手軽でよさそうですよね?

<土屋>
それがですね、フレイルになっていない人の予防なら散歩だけでも十分なんですが、既にフレイルになっている、体が弱ってきた人には、散歩のような有酸素運動だけでは不十分なんです。
 
<岩渕> そうなんですか!?

<土屋>
有酸素運動だけでは、既に衰えた骨や筋肉を取り戻す効果は不十分なので、適度な「筋トレ」も必要なんです。
 
<岩渕> 筋トレ、なんて高齢の方がやっても大丈夫なんですか?

<土屋>
バーベルを上げるような筋トレではなく、本当にちょっとしたことでいいんです。
先ほどの荒井教授は、できればスポーツクラブなどで体力に応じた筋トレのメニューを作ってもらうのが望ましいとしていますが、なかなかそこまで出来ない方は、例えば、こうしたスクワットを、しっかり固定された机などに掴まって、腰を半分だけ下ろす、これを何回か繰り返すのがおすすめ、とのことです。
これも難しいという方は、掴まってかかとを挙げるだけでも効果的だそうです。
体が弱っている方は、一度医療機関で相談したり、家族が見守っている状態で行っていただきたいと思います。
 
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<岩渕> でも、元気な人や若い人は気にしなくいいですよね?

<土屋>
いえいえ。実は岩渕さんにもひとごとじゃ無いんですよ。最近、20代などの若い女性で骨密度の低い骨粗鬆症予備軍の人が増えています。
全体に、やせ願望が強くなって、ダイエットをしている人も多いためですが、実は骨密度は二、三十代をピークにあとは緩やかに下がっていく一方ですので、若い頃にしっかり“貯金”を作っておかないと将来、骨粗鬆症やフレイルになりやすい、と指摘されています。
ぜひ、今から食事や運動に気をつけていただきたいと思います。

 

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