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くらし☆解説 「カツオはどこへ行った?」

合瀬 宏毅  解説委員

岩渕)こんにちは。くらし☆解説です。5月になると食べたくなるのが初カツオ。しかしそのカツオ、今年はあまり見かけません。合瀬宏毅解説委員とお伝えします。
 
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岩渕)たしかに今年はカツオ、スーパーでも見かけませんね?

カツオはこの時期、安くて美味しい魚として、初夏には欠かせない食材だが、今年は全国的に例年にない不漁だと言います。
 
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全国各地のカツオの水揚げを見てみると、カツオで有名な高知県土佐清水港では1月から先月までの漁獲量が5トンと前の年の6%しかとれていませんし、和歌山の串本でも28%、千葉の勝浦港は比較的獲れてはいますが、それでも去年の68%に過ぎません。カツオの水揚げは5月以降がピークとなるため、各地とも徐々に増えてはいるが、何れも記録的な少なさ。
この結果、築地市場での卸売価格も4月は去年より20%近く高い。
産地がどういう状況なのか、主な水揚げ港の一つ、東京都の八丈島に一昨日行ってみました。
 
岩渕)八丈島ですか?

八丈島は黒潮の流域にあたり、その年のカツオ漁を占う重要な地域とされています。例年は2月ぐらいからカツオがとれ始めますが、こちらでも不漁が続いています。この日は20隻ほど船がでていたが、カツオが釣れたのは4隻ほど。漁獲量も例年の30%ほどですがそれでも大漁だといいます。(獲れていない)
八丈島のカツオは青い樽に詰めて、築地市場などに出荷されることから、樽カツオとして有名なのですが、この日のカツオの水揚げはすべて合わせても1トンほどでした。
このため漁師の中には、カツオをあきらめ、金目鯛など他の魚に切り替える人たちが増えていると言います。
<VTR:インタビュー>
「ここ30年で最も悪い」「まだあきらめない」
 
岩渕)地元の人も大変ですね?

この地域では年収の半分をカツオで稼ぐと言いますから、カツオが捕れないと大変です。東京都、八丈事業所の堀井善弘さんによると、1月から先月までの漁獲量は4ヶ月で33トンと、例年の10%ぐらいしか獲れていないそう。
最近は漁船の燃料代も上がっていますから、カツオを狙うにもリスクが伴います。自然相手の仕事とはいえ、あまりの不漁に頭を抱えている状態。
 
岩渕)それにしてもなぜ獲れていないのですか。

いくつかの要因が指摘されている。一つは水温です。カツオは水温20度以上の海を好むとされているのですが、水温の上がりが遅れ、今年は例年より低めであったことが報告されています。
水温というのは魚によって重要で、水温が低ければそれだけ動きが鈍くなる。それがカツオの北上を妨げているという。

岩渕)暖かくなれば獲れはじめるということですか?

そう願いたいのですが、ただこれだけで説明がつかないという専門家もいます。
 
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これは4月の水温20度を示したものですが、確かにこの時期、大きな漁場となる伊豆半島からは遠く離れているが、カツオ漁の盛んな高知や紀伊半島からはそれほど遠くない。
また水温が低い年は今年だけでは無く、これでは今年の記録的な不漁の説明がつきません。
 
岩渕)他に理由があるのでしょうか?

この問題を巡っては、先週金曜日に全国のカツオ漁の関係者が集まって、会議が行われました。その中で指摘されていたのが、そもそもカツオ全体の数が減っているのではないかという理由です。
実はカツオの資源は豊富にあるとこれまで言われてきました。ところが日本近海で獲られている大型船での一本つり漁による水揚げ量をみると年々減っている。
 
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1993年に8万トン近くあった水揚げはここ20年間、徐々に減り、2万トン近くにまで減っている。
日本近海にいるカツオが少なくなっている。
 
岩渕)今年だけでないのですね?

そうなのです。では、カツオがどういう行動をとるのかです。
 
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そもそもカツオ、熱帯から温帯水域に広く分布する魚で、主に春と秋に産卵します。一匹のメスが生む卵の量は10万から200万個と大量で、しかも成長のスピードも速いため、繁殖力の強い魚だとされてきました。
カツオはこうした熱帯域を中心に生息し、一部がエサを求め北上して日本近海までやってくるとされています。
 
岩渕)すべてが北上するわけでは無いのですね。

そうです。それも一本道で北上するわけではありません。
黒潮沿いだけでなく、和歌山県の南方からや、小笠原、伊豆諸島沿いなど4つのルートで、日本にやってくると考えられています。
ところが、いつもの年だとこのルート上に漁場がいくつも形成されるのですが、今年はその4つのルートすべてでカツオがとれていません。そこでもともとの産卵地で数が少なくなっているのではないかと、専門家は疑っている訳です。
 
岩渕)どうして産卵地で数が少なくなっているのですか?

取り過ぎではないかと懸念しているのです。
 
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中西部太平洋でのカツオの漁獲量の推移を見てみると、1970年には20万トンにしかすぎなかった漁獲量は、年々増えて最近は160万トンと40年で8倍にも増えている。
なかでもインドネシアや韓国、パプアニューギニアなどが漁獲量を大きく伸ばしている。
カツオと言えば一本つりを思い浮かべるが、最近は漁業探知機、それに人工浮き漁礁、これはカツオが流木などに付くという習性を利用する機器ですが、こうした漁具が次々と開発され、それを巻き網で一網打尽にする、きわめて効率的な漁業が可能になった。
いまやこの地域で獲れるカツオの漁は太平洋全体の86%を占めるようになってきている。
 
岩渕)そんなに取っているのですか?

そうですね。かつてはこの地域でカツオを捕っていたのは、日本だけで、主にカツオ節用だった。ところが世界での水産物に対する需要が増え、いまでは多くの国が、カツオ漁に進出して缶詰やペットフードなどに加工している。
水産物は豚肉などと違って宗教的にも問題ありませんし、ヘルシーだということで需要も高い。
 
岩渕)規制はしないのですか?

それが今後の課題です。この地域のカツオ・マグロ資源については、国際機関がこれを規制しているのですが、3年前に行った資源評価では、資源量は豊富で乱獲状態には無いと、結論づけている。
 
岩渕)まだ沢山いると言うわけですね。

ただ日本に北上してくるカツオは確実に減っている。国際機関では今年8月に、各国の専門家が集まって資源状態を評価し直すことになっています。日本としては、こうした厳しい状況を反映した評価を求め、対応を迫ることになると思います。
 
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岩渕)カツオがとれなくなると困りますよね。

日本にとっては大問題です。日本人にとって、カツオは初鰹という鮮魚としてだけでなく、かつお節など日本のだし文化と密接に関わる重要な食材です。
とはいってもそのカツオの需要が世界で伸びて、日本が独占できないことも事実。日本はカツオを多く消費する国として、カツオの資源評価を積極的に行い、資源が減少しているようなら、管理強化を呼びかけていくことが必要だと思います。
 

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