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くらし☆解説 「女性の活躍と"103万円130万円の壁"」

飯野 奈津子  解説委員

<前説>
くらし☆解説です。きょうのテーマは、女性の活躍と103万円と130万円の壁についてです。政府は、この二つの壁が女性の活躍を阻んでいるとして、制度の見直しに向けた検討を始めることになりました。担当は飯野解説委員です。

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Q1 まず、103万円と130万円の壁ってどういうことですか?
 

A1 103万円と130万円というのは、パートで働く妻の年収なのですが、この二つの壁が、女性の働く意欲をそいでいると、指摘されているんです。

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どうしてかというと、年収が103万円を超えたり、130万円以上になったりすると、世帯の手取りの額が減ってしまうことがあるからです。働いても手取りが減ってしまうのなら、この壁を超えない範囲で仕事をとどめておこうという人が出ているのです。


Q2 そういえば、年末になると、パートで働く人たちの間で、今年はあと何時間働けるといった会話が交わされているのをよく耳にします。

A2 しかし、少子高齢化が進んで働き手の数が減り続けていますから、これからはそうした女性たちの力を借りなければ、日本の経済は立ち行かなくなると、危機感が広がっています。
そこで、働く意欲のある女性たちが、壁を意識しなくても働けるようにと、二つの壁に関わる制度の見直しについて、政府内で検討を始めることになったのです。


Q3 具体的には、どんな制度の見直しが検討されることになるのですか?

A3 税制と社会保障に関わる制度です。こうした制度は専業主婦世帯が多かった時代に作られたものです。妻の内助の功を評価して、妻があまり働いていない場合に、家計を助けるような仕組みになっています。妻は働かなくても安心ですよということだったのですが、それが今は働くと損になるということになっているのです。その制度の見直しのポイント、

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▲ひとつは、103万円の壁に関わる、配偶者控除の見直しです。
配偶者控除は、妻の年収が103万円以下なら、夫の税金を軽くする制度です。その控除を縮小したり廃止したりできないかということです。家計を助ける部分を小さくしようということです。
▲もうひとつが、130万円の壁に関わる、年金や医療保険の保険料を払う年収の基準です。サラリーマン世帯の妻の年収が130万円未満なら、夫の扶養家族とされて、保険料を払わなくてもすむ仕組みになっています。その年収基準を引き下げたりできないかということです。


Q4 妻があまり働いていないと家計を助けるということは、たくさん働くとその助けがなくなるということですよね。

Q4 そういうことです。それがどういうことなのか。夫がサラリーマンで、妻がパート勤めの世帯を例にみてみます。

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これは、103万円と130万円の壁によって、世帯としての手取額がどう変化するかを示したグラフです。
まず、妻が働いて年収が103万円のところで手取り額が下がります。これは、夫が勤める企業が支給している配偶者手当てが受け取れなくなるからです。配偶者手当ては、企業の60%から80%程度が支給していて、妻の年収が103万円を超えるかどうかで、支給を決めるところが少なくないからです。


Q5 これは直接的には、先ほどの税制と社会保障制度には関係ないんですね。

A5 直接関係はありませんが、税制との関わりで妻の年収103万円を基準に配偶者手当を支給する企業が多いということです。
▲次に130万円のところで手取り額が下がります。これは、先ほどの社会保障制度に関わる部分で、年金や医療保険の保険料の負担が発生するポイントです。今の制度では、妻の年収が130万円未満なら、保険料を払わなくてもいいけれど、130万円以上になると妻が自分で保険料を払わなくてはならない。だから手取り額が減ってしまうのです。
▲そして、妻の年収が103万円を超えてから、世帯の手取り額の傾斜が緩くなります。手取り額の増え方が小さくなるということです。これは、妻の年収が103万円を超えると、本人に所得税がかかる上に、先ほどの税制に関わる配偶者控除を受けられなくなることの影響です。配偶者手当のようにがくんと手取りが減るわけではありませんが、受け取る額が少なくなるということです。


Q6 こんなふうに、手取りの額に影響が出るから、影響が出ない範囲内で仕事をとどめようという人が出ているわけですね。

Q6 そういうことです。それともうひとつ、配偶者控除については、別の観点から問題があるという指摘もあります。経済的に余裕のある人を優遇する制度だという批判です。

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 これは、給与収入別に配偶者控除を受けている人の割合を示したものです。
ごらんのように、年収が低い人はあまり配偶者控除を受けていませんが、年収が高くなると、60%を超えています。年収が低い人は独身が多いということもあるでしょうが、経済的に余裕がなければ共働きでも、壁など気にしていられない。働かざるを得ないということもあると思います。
税制は、高所得の人に多く税金を払ってもらって、所得格差を小さくする狙いがありますが、配偶者控除は逆に所得格差を広げているというわけです。


Q7 配偶者控除も含め、政府が検討を始める制度の見直しは、進みそうですか。

A7 先ほど制度の見直しのポイントをあげました。こうした制度の見直し論は10年以上前から何度も浮上しながら、棚上げされてきただけに、そう簡単ではないと思います。

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 専業主婦世帯が多かった時代にできた制度で、今は共働き世帯の方が多くなっていますが、今もこうした制度の対象になっている人は少なくありません。配偶者控除を受けている人はおよそ1400万人、保険料を払わなくて済んでいる人も960万人います。制度を見直すとなると、こうした人たちに新たに税金や保険料を払ってもらうことになる。負担を求めることになるので、政府内にも慎重な意見がありますし、妻の内助の功を考えて、家族の助け合いの役割を正しく評価する必要があるという意見も聞かれます。女性の活躍をはばむ壁を取り除くというと聞こえはいいですが、結局は負担増ということですから、そう簡単には納得してもらえないと思います。


Q8 悩ましいですね。この問題をどう考えればいいのでしょうか。

A8 これからの日本の社会は、人口が減って、少子高齢化も一層進んでいくので、経済活動や社会保障制度の支え手として、働く意欲のある女性が思いっきり仕事ができるように、制度を見直すことは必要だと思います。ただし、103万と130万円の壁の内側にいる人の中には、子育てや介護があるので働きたくても働けないという人もいますから、制度を見直すにしても、そうした人たちへの手当ては欠かせません。見直しでねん出した財源を、そうした人たちに回すなど、納得できる財源の使い道を示すことが必要だと思います。


Q9 しかも、税制などの制度を見直すだけで、女性が活躍できるわけでもありませんよね。

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A9 そうですね。安心して働くことができる環境づくりが何より大事だと思います。仕事と育児や介護を両立できるよう、保育や介護のサービスを充実させたり、長時間労働を余儀なくされている労働環境を改善したり、希望すればパートから正社員になれるような柔軟な働き方を広げたり。そして、男性も家庭と仕事を両立できるよう、社会全体の意識を変えていくことが重要だと思います。そうした環境を整えずに、負担だけしてくださいというのでは、国民の納得は得られないのではないでしょうか。
日本の将来にとって女性の労働力が必要だというのなら、安心して働ける環境づくりも、しっかり進めてほしいと思います。

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