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くらし☆解説 「どうなった?身を切る改革」

太田 真嗣  解説委員

くらし☆解説です。今月から消費税率が8%に引き上げられましたが、増税を決めた際、「政治の身を切る改革」として打ち出された、衆議院の議員定数の削減は、いまだ実現していません。
太田解説委員とお伝えします。
 
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Q、衆議院議員の定数削減問題をめぐって激しいやり取りが行われたのは、平成24年11月、
当時の野田総理大臣と自民党の安倍総裁との党首討論でしたね。

A、はい。あの時、定数削減が声高に訴えられたのには、大きく2つの狙いがありました。
消費税率の引き上げに国民の理解を得るため、まず、▼国会自らが身を切る改革を行って『政治の姿勢』をアピールする。そして、▼『政治にかかるコストを削減する』ということです。しかし、削減は未だ実現していませんから、現状では、政治姿勢をアピールするどころか、むしろ、逆に政治不信に拍車をかけていると言わざるをえません。
 
Q、本当にそうですね。

A、一方、コストの面はどうかと言うと、一応、定数削減が実現するまで、国会議員の歳費を20%
カットすることになっていて、年間30億円あまりが削減されています。『一応』とつけたのは、法律で決まっているのは、今月末までで、その後はハッキリしていないからです。しかし、法律には、期限が切れた後も「必要な措置をとる」とありますから、引き続きこれが守られるのか、厳しくチェックしていく必要があります。
 
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Q、さて、政治の「身を切る改革」ですが、そもそも、国会議員1人あたり、どのくらいの税金が使われているのですか?

A、国会議員の歳費は、法律で決まっていて、議長・副議長は別ですが、ボーナスをあわせて
2106万円。いまは、20%削減されていますから1685万円です。これが、基本的に政治家個人に支給されている分です。
 
Q、でも、この他にも、色々、あるんですよね?
 
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A、そうです。使い道の報告義務がない、『文書通信交通滞在費』が、年1200万円。また、個人にではなく政党などに支給されますが、法案を作るための費用として、『立法事務費』が、1人あたり
年780万円支給されます。さらに、議員は、公設の秘書を3人まで使えます。秘書給与は、在職年数によって変わりますが、もっとも少ない人でもボーナスを含め、3人で1900万ぐらいです。この他、議員には、JRのパスなども配られますから、ざっくり言って、1人当たり、少なくとも年間6000万円ぐらいかかる。逆に言えば、議員を1人削減すれば、そのぐらいの予算が浮くことになります。
 
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Q、これだけでも、相当な金額ですけど、この他に政党助成金もあるんですよね。

A、毎年、およそ320億円が使われています。
ただ、政党助成金は、人口をもとに、1人250円ずつという計算で、まず総額が決まり、それが各党に配られる仕組みです。ですから、例えば、共産党は、この仕組みに反対で、政党助成金を受け取っていませんが、その分が、総額から減る訳ではありません。
 
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Q、仮に議員の数が減っても、他の議員の分に回ることになるのですね。

A、そうです。つまり定数を削減しても、歳出の削減にはつながりません。ですから、定数の削減を政治のコストの問題として考えるのであれば、先ほどの歳費や手当なども含め、こうした仕組み全体も見直す必要があるのではないでしょうか。
ところで、日本の国会議員は、他の国に比べて多いと思いますか?

Q、削減が必要と言われているのですから、多いのではないですか?

A、実は、必ずしもそうではないのです。日本の衆議院にあたる、主な国の下院と比較してみましょう。
 
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議員数だけを見ると、そんなに変わらない印象もありますが、これを人口100万人あたりの議員数で見ますと、▼アメリカは、1.4人と確かに少ないのですが、むしろ例外で、▼ドイツは、7.2人、▼イギリスは、10.3人などと、▼日本の3.8人は、世界の中でも、人口に対しては少ない方です。もちろん、国ごとに事情が違うので単純には比較できませんし、少ない人数できちんと仕事をしてくれたら、それが一番ですが、一方で、これ以上、議員の数を減らすと、国民の声、とりわけ過疎化が進む地方の声などが、ますます政治に届きにくくなるという心配もあります。ですから、単に議員をどんどん減らせば良いという訳ではなく、そうしたことへのバランスもしっかり考えないといけません。
 
Q、なるほど。そこで定数削減をめぐる各党の議論ですが、いま、どのような状況ですか?

A、これまで30回以上、議論してきましたが、結論は出ず、衆議院議長のもとで、改めて協議することになっています。テーマは、「当事者同士では話がつかないので、有識者など、第3者による検討機関を作って議論してもらったらどうか」ということです。自民党や民主党など、多くの党は賛成していますが、共産党と社民党は反対しています。
 
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Q、仮に、第3者機関で...となれば、議論は進むでしょうか?

A、そう簡単にはいかないと思います。ポイントは2つあります。ひとつは、▼第3者機関で協議して、きちんと意見がまとまるのか。そして、▼仮にまとまったとしても、各政党がそれに従うのかという点です。ひとつ目の意見がどうなるかは、メンバーよって左右されますから、まず、第三者機関のメンバーをどういった顔ぶれにするかも難しい課題です。
 
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Q、それに、各党が従うかも重要ですよね。

A、その通りです。改革案が出来きても、最終的に法律を決めるのは国会です。
しかし、▼自民・公明両党などは、「比例代表のみ削減」、▼民主党など5党は、「小選挙区も含めた削減」、そして、▼共産・社民両党は、「削減そのものに反対」という立場です。
 
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3者機関の結論をどう扱うか、事前にしっかり決めておかないと、政治の場に戻ってきた時に、またこの議論が蒸し返されることになりかねません。
 
Q、なかなか難しそうですが、消費増税とセットで改革すると約束していた訳ですから、きちんと守ってほしいですね。

A、そうですね。「政治は、信なくば立たず」とよく言われますが、約束が守れないようでは、政治は、いつまでたっても国民から信用されません。特に最近では、また「政治とカネ」の問題が大きくクローズアップされ、政治への信頼がさらに揺らいでいます。ここで、身を切る改革をきちんとしなければ、政治は、本当に国民から見放される。そうした強い危機感を持って、各党は、協議に臨んでもらいたいと思います。
 

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