くらし☆解説 「パンの消費額 コメを逆転」2012年06月21日 (木) 

合瀬 宏毅  解説委員

岩渕)こんにちは。くらし☆解説、今日のテーマは食生活「パンの消費額 コメを逆転」、合瀬宏毅(おおせひろき)解説委員です。

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合瀬)岩渕さん、今日の朝食は何を食べましたか?

岩渕)パンを食べてきました。

合瀬)私はご飯党ですが、実は先日発表された総務省の家計調査で去年、1世帯当たりのコメの消費額が、パンに追い越されたことが分かりました。そこで今日は消費の逆転から見える食生活の変化と、日本の農業に与える影響についてお話ししたいと思います。

岩渕)家計調査でのコメの消費額どうなっているのですか?

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合瀬)こちらをご覧ください。これはコメとパンの一世帯あたりの支出が年間でどのくらいあったのか示したグラフです。
まずコメですが、1990年には6万2554円の支出があったのが、年々低下し、去年はついに2万7780円まで下がりました。
一方パンですが、1990年には2万6122円だった支出額は徐々に伸びて2万8368円と、ついにコメの支出額を抜いてしまった。
私たちの食卓は日本型食生活と言われ、ご飯を中心にお味噌汁と副菜で構成されてきたのですが、そういう家庭も少なくなりつつあるということです。
 
岩渕)これを見るとパンが伸びたというより、コメが下がったということですね。

合瀬)そうですね。ここ20年ほどで食費全体も減っているのですが、パンやめん類は減っていません。コメの一人負けの状況です。
コメの消費額が減った要因を見てみると、まず食べる量が減っている。1世帯あたりのコメの消費量は90年の年間126キログラムから、82キロと3分の2になっています。
さらに食べる量が減っているので、価格も下がっている。この間、コメの価格は30%以上下がっています。
消費額というのは食べる量と価格の積算ですから、両方が相まって消費減少に歯止めがかからない状況になっています。
 
岩渕)コメを作っている農家の人たちは大変ですね。 

合瀬)そうですね。日本のコメ農家は110万戸に登り、国内産の占める割合はほぼ100%です。それに対して小麦は90%近くがオーストラリアなど海外産。日本農業はコメ生産を核に組み立てられてきましたから、農家は大変困ってしまう。
かつては消費が減るのはコメの値段が高いからとされていたのですが、すでに1キロクラムあたりの価格は、コメはパンの半分ほどに下がっている。それでもコメが選ばれていないことに、農業団体などは深刻に受け止めています。
 
岩渕)ではなぜコメを食べなくなってしまったのでしょうか?

合瀬)理由は三つあります。

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一つは食べるものが豊富になってきたということ。パンやパスタなどの麺類、穀物以外でもお肉や加工食品など、日本は世界でも最も食材の豊かな地域だといわれる。食べるものがお米だけという時代ではない。
二つ目は作るために時間がかかるということ。例えばパンはそのまま、もしくは焼くだけで食べることが出来ますが、ご飯は研いだり、炊いたり、よそったりと準備に手間がかかるだけでなく、炊飯器を洗ったりと後片付けも時間がかかる。
さらにご飯は太るというイメージがある。ご飯中心の食生活は実はカロリー的にはパン主体より低いのですが、太るというイメージが、特に若い女性に根強い。若い人たちの中にはサラダを主体にした食生活を送る人たちもいます。
 
岩渕)確かにご飯を作るのにいろいろ手間はかかりますよね。

合瀬)現代人は忙しい。子供たちは塾やお稽古事で忙しいし、お母さんたちは自分の趣味の時間もある。さらに夫婦共働きも増えています。
これは大手食品メーカーが全国の主婦1800人に聞いたアンケートです。

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これによると平日の朝ご飯作りに掛ける時間、10分くらいと応える人が42%。2000年に比べて15ポイントほど多く、年々増えている。30分以上掛けている人は30%にも満たない。
こうした主婦にとって時間も手間もかかるご飯は、敬遠されがちですよね。
 
岩渕)お米はこのまま減り続けていくのでしょうか?

合瀬)今後高齢化で食べる量が少なくなることを考えれば、ご飯の消費は減ることはあっても増えることはないというのが専門家の見方です。日本人はコメを食べるべきだという精神論だけではでは、どうにもならないところに来ています。
ただ誤解もいろいろあります。
 
岩渕)どういうことですか?

合瀬)先ほどのコメは太りやすいということですが、これは文部科学省が出している日本食品標準成分表のデータ。

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ご飯とパンに含まれる脂質や塩分を比べたところ、カロリーはご飯が100グラムあたり168キロカロリーに対し、パンは264キロカロリー。クロワッサンでは448カロリーある。
脂肪分、塩分を比べてもご飯よりパンがずっと多い。これはご飯が水分を加えて炊くだけに対し、パンやクロワッサンがバターやマーガリン、ショートニングを加えて作るため、脂質やカロリーは高くなるということがあります。
 
岩渕)それなのになぜご飯を食べると太るというイメージが付いたのでしょうか?

合瀬)炭水化物自身が取り過ぎると太りやすいとされていますので、その代表格としてコメが嫌われたのではないかと考える専門家もいます。
農林水産省ではコメ中心の食事が健康に良いことをアピールしてきたのですが、現状を見る限りほとんどうまくいっていません。
 
岩渕)農家も対応が迫られますよね。

合瀬)日本の農家も対応してはいます。

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一つは日本での小麦生産の拡大です。もともと雨の多い日本では質の高い小麦は作りにくいと言われていたのですが、最近は変わりつつあります。
例えば北海道では、種を蒔く時期をずらす栽培技術が開発されて、良質のパン用小麦が出来るようになりました。「ハルユタカ」という小麦で作ったパンは大変な人気です。
また福岡などではラーメン専用の小麦、「ラー麦」が開発されて、ご当地ラーメンの麺用として需要を伸ばしています。
 
岩渕)日本の農業も変わっているのですね。

合瀬)さらに最近はコメをパンや麺に加工するコメ粉の生産も増えてきました。2008年に566トンだったコメ粉用のコメは、去年は70倍の4万トンにまで増えた。
ただその量は輸入小麦からすると微々たるもので、今後コメを使った加工品をどれだけ作れるかが、農家生き残りのカギとなっています。
 
岩渕)私たちはこの問題をどう考えれば良いのでしょうか。

合瀬)日本の食料自給率は年々減り続けて現在39%。その大きな要因がコメを食べなくなったこと。
何をどう食べるか、極めて個人的な問題だが、その行方が日本農業の行方を大きく左右することも確か。今後、日本の農業がどうなるのか、実は私たち消費者がカギを握っているということ。ということで私はご飯を食べます。