2010年09月02日 (木)アジアを読む 「ようやく再開 中東和平交渉の課題」
【冒頭映像】
長らく中断していたイスラエルとパレスチナの首脳どうしの和平交渉が、
アメリカのオバマ大統領の仲介で、
2日、ワシントンで、1年8か月ぶりに再開されます。
イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長は、
1日、オバマ大統領と個別に会談したほか、
エジプトのムバラク大統領やヨルダンのアブドラ国王も現地入りし、
和平交渉を支援する姿勢です。
しかし、ヨルダン川西岸では、31日、イスラム原理主義組織ハマスが
ユダヤ人入植者4人を殺害するなど、
和平交渉の妨害を狙った事件が相次いでいます。
一方、イスラエル政府は、これまで10か月間凍結してきた
ヨルダン川西岸での入植活動を今月下旬以降再開する姿勢をみせており、
パレスチナ側は、入植活動が再開されれば、交渉の打ち切りも辞さない構えです。
現地の最新情勢も合わせて、中東和平交渉の課題を分析します。
『ようやく再開 中東和平交渉の課題』
(岩渕 梢 キャスター)
ここからは、出川展恒解説委員とともに進めていきます。
よろしくお願いします。
Q1:
中東和平交渉、再開まで、ずいぶん時間がかかりましたね。
(出川展恒 解説委員)
A1:
はい。
イスラエルとパレスチナの直接交渉は、
おととし12月のイスラエル軍によるガザ地区への大規模攻撃で中断して以来で、
1年8か月ぶりです。
中東和平の実現を、外交の最重要課題と位置づける
アメリカのオバマ大統領の強い働きかけで、
ようやく再開の運びとなりました。
イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長は、
2日、アメリカのクリントン国務長官を交えた三者会談に臨みます。
これを前に、オバマ大統領は、1日、ホワイトハウスで記者会見し、
中東和平の仲介に全力で取り組む決意を明らかにしました。
【アメリカ オバマ大統領】
「アメリカは中東和平への努力を全力で支援し、
交渉に積極的に関与してゆく」。
オバマ大統領は、さらに、ネタニヤフ首相、アッバス議長、
エジプトのムバラク大統領、ヨルダンのアブドラ国王と、
それぞれ個別の会談を行い、
和平実現のため、それぞれが最善を尽くすよう、要請しました。
(岩渕)
Q2:
その和平交渉ですが、今後の見通しは。
(出川)
A2:
「前途多難」のひと言です。
和平交渉の最終目標は、パレスチナ人の独立国家をつくり、
イスラエルと平和共存させること、すなわち、「二国家共存」です。
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ところが、領土の画定、聖地エルサレムの帰属、パレスチナ難民の扱いなど、
これから解決しなければならない課題は、いずれも難問ばかりです。
仲介するオバマ大統領は、1年以内の和平合意をめざしています。
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実は、私は先週、現地で話を聞いてきたのですが、
イスラエル側、パレスチナ側ともに、楽観的な見方は、ひとつもありませんでした。
双方の政治アナリストの発言をお聞きください。
【イスラエル人政治アナリスト ジャベダンファール氏】
「1年以内にすべての問題が解決する可能性は、極めて低いと思います。
どんなに交渉がうまく行っても、
パレスチナ国家の領土画定が、精いっぱいでしょう。
パレスチナ難民やエルサレムの帰属問題は、もっと時間がかかります」。
【パレスチナ人政治アナリスト アブデルハディ氏】
「アッバス議長は、自らの政治生命は、和平の道しかないと信じています。
解決の可能性が1%でも、行かざるを得ません。
ネタニヤフ首相が譲歩しないことは、誰もがわかっています。
アッバス議長は、ワシントンに呼びつけられたようなものです」。
(岩渕)
Q3:
なるほど、双方とも、厳しい見方をしていますね。
(出川)
A3:
はい。
オバマ大統領は、
「1年間の交渉期限で、すべての問題を決着させる」と述べていますが、
それが本当に可能だと考えている人には会えませんでした。
双方の主張の隔たりはあまりに大きく、不信感は根深く、
この先、交渉を続けてゆけるかどうかさえ、危ぶまれる状況です。
そして、いま、最大の障害となっているのは、
「ユダヤ人入植地」の問題です。
直接交渉の再開を前に、ヨルダン川西岸地区で、
ユダヤ人入植者が銃撃される事件が、2日連続で起きたことは、
何よりも、それを物語っています。
(岩渕)
Q4:
ユダヤ人入植地の問題について、簡単に説明してください。
(出川)
A4:
イスラエルは、1967年の第3次中東戦争で占領した土地に、
ユダヤ人入植地を次々と建設し、実効支配しました。
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このうち、ガザ地区については、5年前、イスラエル軍が撤退し、
入植地もすべて撤去したのですが、ヨルダン川西岸地区には、
現在、130カ所以上の入植地があり、拡大を続けています。
入植者の数も増え続け、およそ30万人となっています。
また、パレスチナ側が「将来の独立国家の首都」と位置づける
東エルサレムについては、イスラエルが一方的に併合を宣言し、
入植地の建設と拡大を重ねています。
いわゆる「東エルサレムのユダヤ化」を進めています。
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そもそも、占領地に入植地や入植住宅を建設するのは、国際法違反です。
これまでに結ばれた和平合意も、イスラエル側に入植地の建設中止を求めています。
(岩渕)
Q5:
イスラエル側は、今、入植地の問題にどう対応しているのですか。
(出川)
A5:
イスラエルのネタニヤフ首相は、オバマ大統領の求めに応じて、
ヨルダン川西岸の入植地については、10か月間、住宅建設を凍結してきました。
しかし、自ら決めた凍結期間が切れる今月26日以降は、建設を再開する構えです。
これは、ネタニヤフ首相が、
入植者をはじめ、右派勢力の支持者からの圧力にさらされているからです。
(岩渕)
Q6:
これに対し、パレスチナ側の姿勢はどうなのですか。
(出川)
A6:
強い警戒感や反発を示しています。
パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長は、
イスラエル側が入植活動を再開するなら、
直ちに和平交渉を打ち切ると警告しています。
【パレスチナ暫定自治政府 アッバス議長】
「イスラエルが入植活動を続けるなら、
それがどんな形であれ、和平交渉は崩壊する。
すべての責任はイスラエル政府にある」。
パレスチナ人は、こんなたとえ話をします。
「パレスチナ国家」の領土の範囲を交渉で決める前に、
イスラエル側が入植活動を進めているのは、まるで、
「1枚のピザを、どう分けあうかを話し合う前に、
相手方が、ピザを食べ始めているようなものだ」
これがパレスチナ側の言い分です。
(岩渕)
Q7:
入植地の問題に、仲介役のオバマ大統領は、
どう対応していますか。
(出川)
A7:
オバマ大統領は、就任当初と比べますと、しだいにイスラエル寄りになっています。
今回、ネタニヤフ首相から、入植活動をやめさせる約束をとりつけないまま、
アッバス議長に対しては、首脳会談のテーブルにつくよう、
相当強い圧力をかけたようです。
オバマ大統領としては、苦戦が予想される11月の中間選挙を前に、
最重要テーマとしてきた中東和平の実現に、道筋をつけたかったのだと思います。
姿勢がイスラエル寄りになってきているのは、
中間選挙でユダヤ人票を失いたくないという本音が働いたためと見られます。
しかし、そんなことでは、中東和平の実現は望めません。
(岩渕)
Q8:
和平交渉の難しさ、ほかには、どんな問題があるのでしょうか。
(出川)
A8:
パレスチナ側の分裂状態が続いているのも、きわめて深刻な問題です。
とくに、イスラエルとの和平に強硬に反対している
イスラム組織「ハマス」の存在です。
ハマスは、3年前から、ガザ地区を実効支配しており、
アッバス議長が率いる暫定自治政府の統治は、ガザ地区には及ばなくなっています。
ハマスは、直接交渉の再開に応じたアッバス議長を非難し、
「われわれは、交渉の結果には縛られない」と主張しています。
そして、31日、ヨルダン川西岸で、ユダヤ人入植者4人が銃撃され、
死亡した事件については、ハマスの武装組織の名で、犯行声明が出ています。
いずれにしても、和平合意をつくり、それを実行するには、
ハマスやガザ地区をどうするのかという問題に行き着くのです。
(岩渕)
Q9:
和平交渉が再開しても、これからが本当に大変なんですね。
(出川)
A9:
その通りです。
直接交渉の再開になんとかこぎ着けたものの、
交渉を進展させ、解決に導くための条件が整っていません。
単に「首脳どうしの写真撮影」で終わってしまうと危惧する声もあります。
なかでも、ユダヤ人入植地の問題は、
これまでの和平の努力をご破算にしかねない、「時限爆弾」のような存在です。
オバマ大統領には、「和平の公正な仲介役」としての責任を忘れず、
強い指導力を発揮してもらいたいと思います。
(岩渕)
ありがとうございました。
きょうは、中東和平の実現に向けた
イスラエルとパレスチナの直接交渉の課題について、
出川解説委員に聞きました。
投稿者:出川 展恒 | 投稿時間:18:32
