2009年11月19日 (木)アジアを読む 「どうなる在日米軍再編問題」
(冒頭VTR)
発足から2か月の鳩山政権が抱える難問。衆議院選挙で「見直しの方向で臨む」と訴えた在日アメリカ軍の再編計画の扱いが、大きな焦点になっています。
先週、就任後、初めて日本を訪れたアメリカのオバマ大統領は、これまでの日米合意の
着実な実施を求めましたが、鳩山総理大臣は明確な方針を示しませんでした。
「緊密で対等な日米同盟関係」を目指す鳩山総理。自民党政権と同じことはしたくないという思いが、逆に政権の前途に影を落とし始めています。
「どうなる在日米軍再編問題」
Q1:先週13日に行われた日米首脳会談では「早期に結論を出す」ことで一致したはずでしたが、その翌日には鳩山総理が「年末までにと約束したわけではない」と発言していて、どうもズレがあるようですね?
A1:そうなんです。オバマ大統領は、自分達も政権交代したけれども、再検討した結果、前のブッシュ政権当時の日米合意の内容が双方にとってベストだと結論づけた。
だから日本側も再検討を行った上で、できるだけ早く小泉政権当時の合意を引き継いで欲しいと求めたわけです。
これに対し鳩山総理は首脳会談や直後の共同記者会見で「これまでの日米合意を重く受け止めている。閣僚レベルの日米作業部会で早期に結論を出したい」と述べました。
ところが、その翌日には記者団に対し「オバマ大統領にすれば、『日米合意が前提だ』という思いもあるだろうが、それならばわざわざ日米で作業部会をつくる必要もない。答えが決まっているのであれば意味がない」と発言したんです。
Q2:首脳会談で接点を探る姿勢をにじませていたのと、少々違ったわけですね?
A2:それで民主党の関係者からも、少なからぬ不安を感じるという声が出始めたんです。
確かに鳩山さんは首脳会談でも「先の衆議院選挙で沖縄県外や国外への移設を訴えたのも事実で、沖縄県民の期待が強まっている」と、政権の基本姿勢を伝えています。
ただ、それと同時に「時間がたてば解決が難しくなることも理解している」と述べていましたので、鳩山総理は首脳会談をきっかけに徐々に軟着陸に向かうのではないかという受け止めがありました。
しかし、鳩山さんにはそのつもりがないようで、民主党内でも戸惑いが出ているんです。
Q3:首脳会談から4日後のおととい、日米の閣僚級の作業部会がスタートしましたね?
A3:はい。ただ閣僚級とは言っても閣僚は日本側だけで、アメリカ側はルース駐日大使とグレグソン国防次官補、つまり国務長官と国防長官の代理でした。
野党の自民党などからは「これで対等な関係を目指すなどと言えるのか」と揶揄する声が出ていました。
このため岡田外務大臣も、最終決着の時は閣僚同士で話し合いをするつもりだと釈明せざるを得なかったんです。
Q4:作業部会の初会合の結果、どういう見通しになっているんですか?
A4:まだまだ、流動的です。アメリカ側は普天間基地の代替施設を、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸に建設するという現在の計画が進まなければ、海兵隊の一部をグアム島に移転させる計画を前に進めることはできないという立場を繰り返しました。
これに対し岡田外務大臣は普天間基地の嘉手納基地への統合など、移設計画の見直しを模索する考えを示しましたけれども、北澤防衛大臣はアメリカ側の主張を尊重する形で年内に結論を出すべきだという考えを示しました。
Q5:画面にありますように、小泉-ブッシュ時代にまとまった日米合意は、様々な内容が一つのパッケージになっていたんでしたね?
A5:そうなんです。その中でも大きな柱が、▼普天間基地の代替施設建設。▼海兵隊の司令部機能のグアム島への移転。▼そして、海軍の空母艦載機の拠点を神奈川県の厚木基地から山口県の岩国基地に移す計画でして、いずれも5年後の2014年を計画完了の期限にしているんです。
この再編計画は、「基地周辺の負担軽減」と「アメリカ軍の抑止力の維持」という二つの目的を共に充たすものとして合意したんです。
Q6:その抑止力の維持ということに関係すると思いますが、アメリカにとって日本の基地、とりわけ沖縄の基地が重要なのはどうしてなんですか?
A6:今の東アジアの現状を見ると、北朝鮮が軍事的な挑発を繰り返し、中国は猛烈なスピードで軍事力を増強しています。安全保障上、不安定な地域に他なりません。
ですから、沖縄を中心とする日本の基地は、これまでも、これからも、アメリカにとってアジアに睨みをきかせるための要であり続けるということです。
さらに言えば21世紀に入って進んでいるアメリカ軍の世界規模での再編の特徴は、テロのような予測できない脅威にも柔軟に対応するために、広い地域に散らばっている部隊を、できるだけ少ない地点に重点配備し、組織や指揮命令系統も統合しようというものです。
アジア太平洋地域では、部隊を日本、グアム、ハワイの三地点に重点的に配備し、それぞれの部隊が機能を補い合いながら一体となって活動する体制を目指しています。
沖縄の基地は、この三角形の三つの頂点の一つに他ならないわけです。
Q7:アメリカ側とすれば、同盟関係を強化しようというならば、まず在日米軍の再編で、これまでの合意を引き継いでくれということなんですね?
A7:そういうことです。鳩山総理は「日米同盟を深化させる」と言っていますが、どうも軍事面での協力に積極的でない点に、今の日米間のずれの原因があるようです。
鳩山総理は「緊密で対等な日米関係」について、先月26日の所信表明演説で「同盟関係が世界の平和と安全に果たせる役割や具体的な行動指針を、日本側からも積極的に提言し、協力していけるような関係」と説明しました。
これをどう見るかですが、太平洋戦争後の冷戦時代に固まった日米安保体制よりも、21世紀の国際社会での新たな協力を重視したいというメッセージなのでしょう。
そこには日米同盟の土台にあたる在日アメリカ軍の存在を、できるだけ小さなものにしたいという発想を感じます。
まさにそこが、アメリカ側の認識と相容れない点ですし、日本国内の安全保障の専門家達から「現実を甘く見ている」と指摘される点です。
Q8:東アジアの現実との向き合い方が、今一つはっきりしないようにも見えますね?
A8:そうですね。鳩山総理は就任以来、東アジア共同体構想を掲げてアジア重視の外交を打ち出していますが、先日の日米首脳会談後の会見では、日米関係こそが東アジア共同体の基軸になるんだと強調していました。
しかし一方で在日米軍基地の扱いを決めることができない今の姿というのは、オバマ政権との間で東アジアの安全保障環境に対する認識の落差があまりにも大きいことの現れと言わざるを得ません。
Q9:鳩山総理は、在日アメリカ軍に対して、どういう考えを持っているんでしょう?
A9:鳩山総理は、かつて民主党をつくって間もない頃、もう10年以上前ですが、「日本国内に外国軍隊が駐留しているのはおかしい」という考えを示したことがあります。
おそらく今もその気持ちは変わっていないのでしょう。私は野党の立場で様々な可能性を巡って議論をするのは重要なことだと思います。
ただし政権を担う立場でそれを口にしたら、その瞬間に日米関係は揺らぎます。
政権交代で、鳩山政権が進める税金の使い方の見直しには多くの国民が声援を送っていますが、外交・安全保障の問題は自分達の取り組みだけでは現実を変えることはできません。
東アジアの実情に即した判断の積み重ねが「日米の対等な同盟関係」を作る上でも欠かせないと思います。
投稿者:島田 敏男 | 投稿時間:18:09
