2008年02月16日 (土)土曜解説 「中国製ギョーザ事件」
(兼清アナ)
2月16日の土曜解説です。きょうは、私たち消費者にも大きな衝撃を与えている「中国製ギョーザ中毒事件」を取り上げます。
(神志名解説委員長)
この事件、事実関係の調査や捜査が続いており、まだまだ、謎の多い事件です。そこで、事実関係の解明は、どこまで進んでいるのか。
今回の事件では、何が問われているのか。この二つの点に絞って点検し、「事件の全体像」を探ってみたいと思います。
(神志名解説委員長)
スタジオは「食の安全や農業問題」などが専門の合瀬解説委員と、「中国」が専門で、中国の食品工場などの取材経験もある加藤解説委員です。
まず、今回の「事件の意味やどんな点に注目しているのか」聞いておきたい。<合瀬さん>は、食の安全の視点から、どこに注目していますか?
(合瀬解説委員)
中国製冷凍ギョーザには、130ppmという高い濃度の殺虫剤成分が混入していました。通常残留農薬といえば、多くても1~2ppm程度ですから、いかに高い成分だったかということがわかると思います。現在、日本で中毒を起こしたのは10人にとどまっているが、一つ間違えたら大量の犠牲者が出る危険な問題だったわけです。これをまず認識しなければならないと思います。
警察では、誰かが故意に殺虫剤成分を混入させたのか事件なのか、それとも製造途中での単純な混入事故なのか?両面から捜査を進めていますが、もし誰かが故意に混入したとすれば一種の食品テロですから、これまでの表示の問題などとレベルの違う、危機管理の問題としてとらえる必要があると思います。
(兼清アナ)
加藤さん、この事件、中国にとっても衝撃は大きい問題ではなかったのでしょうか?
(加藤解説委員)
中国にとって、ことしは、北京オリンピックがありますから、きわめて重要な年です。その中で今回の事件が起きたことで、中国の食の安全に関する国際的な信頼は、大きく傷ついてしまったと思います。事件の原因解明を、いたずらに長引かせれば、夏のオリンピックに向けて、国際社会での中国に対する不信感はいっそう高まると思います。
ですから、中国は、今回の事件をことさら個別の事件であると強調し、中国の食品の安全性全体を損なう問題ではないという立場を示しています。
私は、仮に、人為的に有害物質が混入されたとした場合、それが、単なる個人的な恨みによるものなのか。それとも、工場側の労務管理に対する不満、あるいは反日といった、より根の深い問題なのかという点。そこがちょっと気になります。
[Ⅰ]謎の解明は進んだか?
(神志名解説委員長)
それでは、第1の柱、「謎の解明は、どこまで進んだか?」その事実関係から見ていきたいと思います。合瀬さん、これまでのところ、日本側は、殺虫剤成分の混入は中国側で起きたと見ているわけですね。
(合瀬解説委員) ★P(被害など現状)
そうです。一連の事件の経緯を見てみますと、高い濃度の殺虫剤成分が検出されたのは、福島や兵庫、大阪それに千葉などで見つかった5ヶ所、合わせて12袋の冷凍ギョーザからです。一方、中毒が確認された人は10人で、この問題が公表された後、5000件の問い合わせがあり、2800人以上が身体の不調を都道府県などに訴えていたんですが、今のところ、中毒症状は認められていません。
警察が注目しているのは、大阪枚方市で見つかった、未開封のギョーザなのです。このギョーザの袋の内側と皮からメタミドホスが見つかっているのです。
しかも国内で見つかった殺虫剤成分を精密に検査したところ、日本国内ではあり得ない不純物が含まれていたのです。こうしたことから警察では、日本国内ではなく、中国の工場の製造過程で混入したとの見方を強めているのです。
Q2(兼清アナ)
加藤さん、中国側は、中国で混入されたとは認めていないんですね?
(加藤解説委員)
認めていないとも認めているともいえない、複雑で微妙な立場をとっているといえると思います。
中国では、現在、主に二つの機関が、別個にこの問題を取り調べる形をとっているのです。
ひとつは、食品の安全管理の立場からの国家品質監督総局が調査しています。
もうひとつは、刑事事件という立場から犯罪の可能性を前提にした警察当局の捜査です。
このうち、国家品質監督総局の方は、「生産から輸出に到る過程で、人為的に破壊行為が行われた可能性はほとんどない」との見解を示しました。この部分だけ聞くと、中国は、殺虫剤の成分が中国国内で混入されことを完全に否定したとも聞こえるのですが、実は、そうではありません。
国家品質監督総局は、自分たちが監督指導する範囲である「安全管理のシステムそれ自体は問題なかった」という見解を述べたに過ぎないわけです。
一方、警察当局の方は、旧正月の期間中から、工場に頻繁に出入りし、積極的な捜査活動を行っているのです。警察当局は、工場の勤務状況をしるした書類や監視カメラが撮影したビデオ映像などを押収していますし、また、多くの関係者から事情聴取も行っていると見られているのです。
中国の警察は、むしろ、中国国内で混入された可能性も含めて、またその疑いがあるとみて、積極的に捜査しているのではないかと思います。
ただ、犯罪を立件するためには、日本における被害状況を把握する必要があり、日本の警察の協力を求めているというわけなのです。
Q3(神志名解説委員長)
日本の感覚では、国家品質監督総局と警察当局の見方に矛盾があるように思えるが、どうなのですか?
(加藤解説委員)
実は、これを別々に独立させて調べさせていることに、大きな意味があると思います。つまりそうすることで、今回の事件は、食品の安全性に対するシステム的な問題によるものではないということを強調する意図があるのではないかと思います。
国家品質監督総局の方も、警察当局がこの事件を非常に重視していることを強調しているのです。つまり、この事件は警察マターだということで、実は、工場側も、きのう記者会見して、「自分たちは被害者だ」と言い出したのです。
これは、仮に、誰かが工場内で、毒物を混入したとしても、責任は犯人にあるんだ、工場の食の安全管理とは、関係ないとの立場を示したものとだということを示したのではないかと思います。
混入の原因は?
Q4(神志名解説委員長)
最も知りたい点は、混入は、どうして起きたのかという点です。今回の事件、新たな殺虫剤の成分が発見されたり、そうした成分が包装の表面や内部で発見されたり複雑ですが、混入したとすれば、どういったことが考えられるのですか?
(合瀬解説委員) ★P(被害など現状)
殺虫剤成分がギョーザの本体部分から出てきたということ。それに袋の内側と外側から出てきたということを考えますと、工場での袋詰めの作業で入ったのではないかと見られているのです。
これは天洋食品の工場内の見取り図です。工場は一階と二階にわかれており、2階ではギョーザの皮を作ったり、野菜をカットしたり、また挽肉と合わせてギョーザを整形する作業が行われます。整形され蒸されたギョーザは、一階に運ばれ、冷凍されて、袋詰めされます。
JTによりますと、包装工程には30人から50人ほどが作業に当たっていると言います。それぞれの作業では班長が、作業員の様子を見守り、さらに品質管理員が工程全体を見回っていました。これだけ人が沢山いた状況で、本当に殺虫剤成分を混入できるのか疑う人も国内にはいるのです。
(加藤解説委員)
実は、その点については注目点があるのです。
これは、これまでに殺虫剤の成分が検出されたギョーザと、事件が大々的に報道される前に、問題の餃子を食べて体調を崩したという健康被害の訴えがあったケースの一覧です。
もちろん、すべて同じ原因であるとは言い切れませんが、共通点がありまして、ごらんのように、その製造日が、日曜や土曜、祝日に集中しているのです。
実は、土日や祝日は、普通の日と比べて生産量も少なく、働いている人の数も少なかったといわれています。普段の日であれば、管理態勢は、完璧だったとしても、土日や祝日の態勢に問題がなかったのかどうか、気がかりです。
Q7(神志名解説委員長)
中国の国家品質監督総局の副総局長が、日本政府調査団との会談で「中日関係の発展を望まない少数の分子が過激な手段に出たのかもしれない」という趣旨の発言をした点は、どう見たらいいのですか?
(加藤解説委員)
確かに、あの工場で作られていた冷凍食品は、ほとんどが、日本向けであり、実際に包装しているパッケージも日本語で書かれていましたから、そこに有害物質を入れれば被害を受けるのは日本人であることは、誰でもわかっていたはずです。だから、もし誰かが毒を入れたとするなら、その人に日本人を攻撃する意図があったということは否定できないと思います。
ただ、あの時中国当局が、ああいう発言をしたのは、去年春の温家宝首相の訪日、そして年末の福田総理大臣の訪中で、日中関係が大きく好転している時に、水を差されたような形でおきているので、それを妨害しようという意図があったという感じになった気持ちもわかります。
でも、具体的な根拠や思い当たるテロ組織などがあって、そのような発言になったのではないと思います。
Q8(兼清アナ)
番組の冒頭で、工場側の労働環境について注目したいという発言がありましたが、実際に、この工場で働いている人たちの労働環境などは、どうだったのでしょうか?
(加藤解説委員)
実際に、問題の工場で働いている人や、かつて働いていた人の話を総合すると、労働環境は、かなりきついものだったといえると思います。衛生管理の面では、しっかりしていたようだが、一日に13時間以上、連日休みなく働かされるケースが多かったのです。
ギョーザは手作りで作りますが、大体、一日一人4000個から5000個作っていたというのです。けっこう大変なのです。腕や肩などを痛める人も出ていたというのです。
休みも返上して働かせられたり、突然工場の都合で休みになったり、かなり不規則な勤務もあったようです。
しかも、給料は、出来高払いで、一日、目いっぱい働いても40元から50元(500円~600円)程度ということで、農村では、けっして悪くないお金ですが、突然解雇されるケースがあったり、工場が休みになったりするケースもあったようです。
Q9(兼清アナ)
きちんと休みも取れずに、一日4000個も5000個も作るというのはきつい仕事ですね?
(加藤解説委員)
同じ作業を延々とやるわけですから大変だと思いますが、中国では、こうした勤務管理は、けっして特別なものではないと思います。むしろ、あの工場は、模範的だとみなされてきたといわれています。
これは一般論ですが、これまで、中国では、労働集約型の企業では、コストを低く抑えるため、いかにして安い賃金で大勢の労働者を雇うかが、競争に生き残るひとつのポイントだったのです。
もし誰かが賃金のベースアップを求めた場合は、その人を解雇して、別に、低い賃金でも働く出稼ぎ労働者をどんどん採用してきたというようなことがあったわけです。それでは、労働者の権利が守られないということで、中国政府は、今年初めから、労働者の権利を守る労働契約法をスタートさせ、そう簡単に解雇できないシステムを作ったのです。だた、この法律の施行を事前に知った経営者の中には、去年のうちに、駆け込み解雇というのでしょうか、問題になりそうな労働者を、去年のうちに解雇する傾向があったとも言われているのです。
実際、今回問題が起きているギョーザ工場でも、去年末に突然解雇された10数人が、会社を訴える準備をしているという証言もあるのです。
今回の事件が、もし、そうした社会背景が原因であるのだとすれば、決して、個別の事件としてだけ捕らえることは難しいと思います。
日本企業の対応は?
Q10(神志名解説委員長)
中国側の事情を見てきましたが、合瀬さん、今回の事件、日本の企業も製品の発注から輸入、流通まで幅広く関係していることを知ったが、対応は問題なかったのでしょうか?
(合瀬解説委員)
これは、大いに問題があったといわざるを得ないと思います。 有害物質が海外から進入してきた場合、いち早く危害物質を特定し、流通を止めること。これがなにより重要です。ところが今回のケースでは、危険を知らせる警告が何度もあったのに、それを見逃したことがわかっているのです。
まず商品を販売した日本生協連では、10月に2度にわたって「アルコールや薬品の臭い」がするというクレームを受け取っていましたが、そのままにしていたのです。
また輸入したジェイティフーズにも、異臭など11件苦情が寄せられていましたが、農薬の検査は行わず、回収も行わなかったことがわかっています。
事件が発覚してからも、対応は遅れました。1度目は12月28日。最初の親子が腹痛を訴え入院しました。二人がギョウザの「臭いがおかしい」と訴えたにもかかわらず、生協は微生物や味覚の検査をしただけで、原因は特定できないとしていました。
1月5日にも問題が起きたのですが、結局回収を決断したのは、最初の被害者から1ヶ月以上たった今月29日。警察から新たに5人が入院した連絡を受けてからでした。
国内では、食中毒が年間1000件ほど起こっているのですが、多くはノロウイルスなど微生物による食中毒なのです。まさか殺虫剤成分がという思いこみが対応を遅らせたとも言えます。
行政の対応は?
Q11(神志名解説委員長)
もう一つ、気になったのは、行政の対応。中毒事件の発生から公表まで1か月もかかっていて、対応が遅い印象を受けたのですが、どうですか?
(合瀬解説委員)
行政も縦割りで、横の連携がとれていなかったのです。まずは12月の28日に生協から保健所に中毒発生を知らせるメールが送られていたが、見たのは1月の4日。保健所自身も検査はしていなかったのです。
1月5日の兵庫県の事例では一家3人が中毒症状に陥り、警察はその事実をつかんでいたのですが、公表しなかったのです。実は、事件ではないかと思ったのです。厚生労働省は輸入品が原因と見られる中毒については、国に報告するように求めているが、兵庫県はこれを行わなかったということです。今回は、兵庫県と東京都、警察と保健所、自治体と厚生労働省などの情報の連絡がうまくいかず、被害の拡大を抑えることは出来なかったのです。極めて危機感を欠いた対応だったといわざるを得ないと思います。
(加藤解説委員)
中国側も、実は、先月末になってようやくこの事件に気づいたのです。私たちもこれを取材している時に、工場の関係者は、「そんなことはありえない」というばかりで、驚いた感じだったのです。つまり現地の工場は、先月末まで、何も知らずに、1ヶ月近く、冷凍食品を作り続け、日本に送り出してきたというわけで、どうして、もっと早く、生産工場の方に連絡が行かなかったのかという、日中間の連絡の悪さも際立ったと思います。
(兼清アナ)
ここまで、中国製ギョーザ事件の事実関係について、点検してみました。
○ブリッジ・VTR
[Ⅱ]中国製ギョーザ事件 問われる点
(1)「食品の安全検査」
Q1(神志名解説委員長)
これまでの経過や問題点などは、よくわかりました。そこで、後半はそうした点を踏まえて、何が問われているのかを考えてみたい。第1に知りたい点は、「食品の安全管理の在り方」。合瀬さん、具体的にどこが問われているのですか?
(合瀬解説委員) ★P「冷凍ギョーザ製造の流れ」
輸入食品の安全性を確保するためには、
▼現地での対応、
▼水際での検査。それに
▼国内での対応の3つが必要だとされているのです。
ひとつひとつ見てゆきますと、まず現地での対応、これが十分でなかったということです。
これは今回の冷凍ギョーザの製造の流れです。生協ブランドで販売するものも、企画やコストの設計を行うのはジェイティフーズなのです。現場では商社の「双日食料」が生産方法の指導などを行い、それで天洋食品が製造を行うという、そうした役割分担をしていました。
工場の安全管理については、双日食料が天洋を指導していましたが、残留農薬の検査は年一回、工場でやった結果を天洋食品から報告させ、チェックしていただけで、駐在員は置いていませんでした。NHKがこうした輸入を取り扱う企業にアンケートをとったところ、3分の1は、現地に駐在員を置いていないということなのです。
Q2(兼清アナ)
やはり輸入食品の場合は、どういう状況でその食品が作られているかが知りたいのですが、加藤さん、現地での対応はどうだったのでしょうか。
(加藤解説委員)
中国では、国内で、これまでも、農薬などが食品に混入して、中毒患者が出たり、なくなったりするケースが、結構、起きていました。また、野菜に農薬が残留していることも、よくあった。そんな状況で、日本向けの食品を生産するということは、よけい、材料から加工の工程まで、特別に神経をとがらせるべきであったと思うのです。そのあたりが少し足りなかったと思います。
中国自身が、去年起きた一連の問題で、食の安全を確保するための指導を強化してきた。具体的には、去年8月から4ヶ月間を、特別の強化期間として、食品製造企業に対して、検査態勢を強化するよう指導監督してきました。
実際に、守れなかった企業など1187件を摘発し、1480人を検挙した。
30万もあるといわれる少人数の零細企業も整理統合を進めてきたといわれています。
北京オリンピックを控えているので、安全管理のレベルはかなり底上げされてきかなという印象だったのですが、しかし、今回の事件が起きたことで、そのイメージも吹き飛んでしまったという感じがします。
Q4(神志名解説委員長)
次の段階である「日本での水際での作戦」については、何が問われているのですか?
(合瀬解説委員)
日本では6年前に中国産の冷凍ホウレンソウが、大きな問題になったことから、それ以降、検査態勢を強化し、有害物質を含んだ食品が国内に流通させない、強い対応を取ってきました。
ところが検査が行われるのは、全体の10%あまり。それも生鮮野菜や冷凍ホウレンソウのような加工度の低い食品が中心で、ギョウザのように様々な具材を使う加工品は、農薬の検査は、行われていませんでした。
国では加工食品にも残留農薬検査を行うことを検討するとしています。しかし検疫は基本的に抜き取り検査です。ピンポイントで毒物を混入された場合、対応できないということも考えておかなければならないと思います。
Q5(兼清アナ)
そして「国内での対応」ですが、これまでの話で、行政などの対応がバラバラといった問題点の指摘があったが、いま政府は、どうしようとしているのでしょうか?
(合瀬解説委員)
消費者行政推進会議というのを立ち上げ、情報を一元的にあつめる新たな組織作りの検討を始めています。被害の拡大を食い止めるには、まずは、いち早く有害物質を特定して、商品を止めることなのです。そのためには、情報が必要なのです。
これは自民党が議論のたたき台として示しているものです。現在食の安全を守る取り組みは農林水産省や、厚生労働省などがばらばらに行い、情報も、それぞれが集めていました。
新たな組織は、消費者からの情報を一元化して収集し、整理、分析して、政策に生かしていこうというものです。今回の問題が、こうした組織間の情報伝達に大きな課題を残し、被害を広げたことを考えると、見直しは当然だと思います。
(2)「食の海外依存」
Q7(神志名解説委員長)
次に「食の海外依存」をどうするかということ。日本は食料の海外依存度が高いと言われてきたが、中国への依存は、どうなっているのですか?
(合瀬解説委員)
日本は、食糧の自給率が39%ということで、中国への食の依存というのも、年々増えているのです。厚生労働省によりますと、平成18年の輸入届けで、件数190万件のうち3分の1が中国からのものなのです。しいたけやにんにくといった生鮮食料品から、今回の冷凍食品のような加工品まで、いまや中国からの輸入なしには私たちの食卓は成り立たないというほどなのです。
加工品の内容も変わってきていまして、かつては塩に漬けた漬け物原料などが多かったのですが、その後、それが冷凍さ、さらに最近では今回のギョーザのように、最終製品にまで仕上げるなど加工度が上がってきているのです。
中国は人件費も安いし、日本と同じような農産物も採れるものですから、原料の調達もやりやすいというのが大きな理由なのです。
Q8(兼清アナ)
消費者としては、その食品がどこで作られているのかを、まず表示で知るわけですが、表示方法のあり方というものを、見直す必要はないのでしょうか?
(合瀬解説委員)
現在、生鮮食品や海外で作られた加工食品には原産地表示が義務付けられているのです。ところが問題は、原材料を海外から輸入して、国内で作ったものなのです。そうしたものには、それぞれの原産地の表示はされていません。
袋にたくさんのものを書いて、かえってわからなくなるという議論もあるのですが、自治体の中には、そうした海外の原材料の原産地表示もすべてやるべきだという動きもあります。
(3)「日中の捜査協力」
Q10(神志名解説委員長)
最後に「日中の捜査協力」ですが、どういう風に日本側は、考えているのですか?
(合瀬解説委員)
日中両国は去年12月、外交ルートを通さなくても、お互いの捜査当局が、直接情報をやりとりできる「日中刑事共助条約」に調印したのですが、まだ国会の手続きが終わっていないのです。このため従来通りの外交ルートでの対応をせざるを得ないのです。ただ、中国側が自国に都合の悪い情報をどこまで出すのか、疑問視する声もあります。
そこで、日本の警察当局としては、日本国内で見つかった殺虫剤成分を細かく検査した結果などを中国側に送り、その情報をもとに捜査協力を強く迫ることを考えているようです。
Q11(神志名解説委員長)
中国側の考え方は,どうですか?
(加藤解説委員)
中国は、ことし春の胡錦涛主席訪日で、日中関係改善の動きにさらに弾みをつけたいと考えている。今回の事件が原因で、好転しつつある日中関係の流れを損ないたくないというのが、中国の本音だと思います。
ただ事件をうやむやのままにしてしまいますと、中国に対する日本の国民感情というものは、さらに不信感が高まるということもわかっていると思います。
ですから中国が、事件解決に向けて、日本の警察などと協力したいという積極的な姿勢を重ねて示しているというわけなのです。やはり日中関係改善のためには、この問題を解決しなくてはいけないという考えも十分あるのだと思います。
Q12(神志名解説委員長)
合瀬さんは、今後の取り組み方について、どういう点が重要になってきますか?
(合瀬解説委員)
今回の問題を見てよくわかったのは、日本の食を守るシステムが、毒物の混入に対して極めて無防備だったことです。
実は、世界保険機構WHOが、2002年に、「食へのテロ。その防止と対応のためのガイドライン」を発表し、食品テロの脅威は、決して想像上のものではなく、緊急に対応すべき問題であると、警告しています。
中国製ギョーザへの殺虫剤成分混入が、故意によるものか、または製造過程での事故か、まだはっきりはしていないのですが、ただ、故意であったとしたら、私たちは今後、安心して食べ物を食べることは出来なくなります。故意の毒物混入に対する対策を早急に作ることが緊急の課題として浮かび上がっていると思います。
(神志名解説委員長)
お聞きいただきましたように、今回の事件は、事実関係の解明が基本です。
中でも「危険物質の混入の原因の解明」に日中双方が全力をあげてもらいたい。
もう一つは、食品の危機管理。単なる組織づくりよりも「危険情報の共有と迅速な対応ができる体制」。この点にしっかり取り組んでもらいたいと思います。
投稿者:加藤 青延 | 投稿時間:18:00
