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ピックアップ@アジア 「過激派との関係断絶を 孤立深めるパキスタン」2011年10月17日 (月)
山内 聡彦 解説委員
(冒頭VTR)
アフガニスタン戦争が始まって10年。カブールでは先月、アメリカ大使館などが襲撃され、16人が死亡しました。アメリカはパキスタンの情報機関とつながりがある過激派の犯行だとして、パキスタン政府に対し過激派との関係を断つよう強く求めました。
▼アメリカ、オバマ大統領ON
「パキスタンの軍と情報機関がやっかいな勢力と一定の関係を持っているのは疑いない。/我々は国益に照らし両国関係を絶えず見直していく」。
その1週間後、今度はタリバンとの和平の窓口役となっていたアフガニスタンのラバニ元大統領が自爆テロを受けて殺害されました。アフガニスタン政府はパキスタン人の犯行だとして、パキスタン政府を非難しています。
▼ラバニ元大統領暗殺捜査委員会、ジア報道官ON
「パキスタンの情報機関がこの暗殺事件に関与しているのは明らかだ」。
この2つの事件でパキスタンと、アメリカやアフガニスタンとの関係が急速に悪化しています。過激派との関係をめぐって、孤立を深めるパキスタンの情勢を考えます。
「過激派との関係断絶を 孤立深めるパキスタン」
(吉井歌奈子キャスター)
Q1:パキスタンとアメリカとの関係はなぜ悪化しているのですか?
(山内聡彦解説委員)
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A:パキスタンはアフガニスタンと国境を接し、テロとの戦いの最前線でアメリカに協力している非常に重要な国です。しかし、5月にパキスタンに潜伏していたアルカイダのビンラディン容疑者がアメリカ軍に殺害されたことなどでパキスタンとアメリカの関係は悪化していました。それをさらに悪化させたのが、先月13日、アフガニスタンの首都カブールでアメリカ大使館などが過激派に襲撃された事件です。アメリカ大使館ではロケット弾6発が撃ち込まれ、20時間にもわたって銃撃戦が続き、あわせて16人が死亡しました。過激派が持っていた携帯電話などから、彼らがタリバンの強硬派の「ハッカーニ・ネットワーク」に属し、パキスタンの情報機関と連絡を取っていたことが分かりました。パキスタンの情報機関とつながりのある過激派の犯行という可能性が強まったことで、アメリカとパキスタンの関係はこの10年間で最悪の状態に落ち込みました。
(吉井)
Q2:問題の過激派とはどんな勢力なのですか?
(山内)
A:ハッカーニ・ネットワークはパキスタンの国境地帯に拠点を持つタリバンの強硬派です。ここから国境を越えて、アフガニスタンの東部や首都カブールで欧米の施設に攻撃を繰り返しています。ジャラルディン・ハッカーニという司令官に率いられていることから「ハッカーニ・ネットワーク」と呼ばれています。ハッカーニ司令官は1980年代にイスラム戦士としてソビエト軍と戦い、その後、タリバンの系列に入り、パキスタンの情報機関やアルカイダとつながりがあるとされています。メンバーは1万人から1万5000人と見られ、パキスタンではなく、もっぱらアフガニスタンで攻撃を行っています。カブールでは、今年6月に外国人が多く泊まるインターコンチネンタル・ホテルが、また3年前にはインド大使館がこのハッカーニ・ネットワークの大規模な攻撃を受けています。
(吉井)
Q3:アメリカ政府はどう対応したのですか?
(山内)
A:注目を集めたのがアメリカ軍の制服組のトップ、マレン統合参謀本部議長が先月22日、議会上院の公聴会でパキスタン政府を厳しく非難したことです。マレン議長は、ハッカーニ・ネットワークはパキスタンの情報機関の支持を受けてアメリカ軍を攻撃していると非難し、パキスタン政府に過激派との関係を断つよう強く要求しました。
▼アメリカ、マレン統合参謀本部議長ON
「ハッカーニ・ネットワークはパキスタン軍の情報機関の紛れもない一部だ。情報機関の支持を受け、彼らはアメリカ大使館などへの攻撃を行っている」。
アメリカ政府はパキスタン政府が過激派との関係を断たなければ、制裁としてすでに実施している援助の凍結を今の8億ドルからさらに拡大する考えを示唆しています。
(吉井)
Q4:パキスタン政府はどう対応しているのですか?
(山内)
A:パキスタン政府は過激派との関係を全面的に否定し、アメリカの圧力に強く反発しています。ギラニ首相はすべての政党を集めた会議を2年半ぶりに召集し、対応を協議しました。その結果、アメリカの批判は根拠がないとして、過激派に対する軍事作戦に踏み切るようにというアメリカの要求を拒否することを決定しました。
▼パキスタン、ギラニ首相ON
「ハッカーニとの共謀や代理戦争というアメリカの主張は受け入れられない。/パキスタンの対テロ作戦への真剣な取り組みを疑うべきではない」。
パキスタンでは各地でアメリカへの抗議行動を起きるなど、国民の間に再び強い反米感情が広がっています。パキスタンの実権を握る軍もアメリカの主張は根拠がないと強く反発しています。その一方で軍の内部ではアメリカへの対応が弱腰だとして指導部への不満も出ています。
(吉井)
Q5:パキスタンとアフガニスタンとの関係も悪化しているようですね?
(山内)
A:そのきっかけになったのが、先月20日、アフガニスタンのラバニ元大統領がカブールの自宅で自爆テロを受けて殺害されたことです。ラバニ氏はタリバンとの和平の窓口役を務めていたため、今後の和平交渉に大きな支障が出ると見られています。アフガニスタン政府は事件はパキスタンで計画され、パキスタン人によって実行されたとして、パキスタン政府を強く非難しています。しかし、パキスタン政府は事件への関わりを否定し、捜査への協力も拒否しています。
▼ラバニ元大統領暗殺捜査委員会、ジア報道官ON
「パキスタンの情報機関がこの暗殺事件に関与しているのは明らかだ。だから、彼らは我々と面と向かって話そうとしないのだ」。
(吉井)
Q6:アフガニスタンはパキスタンにどう対応するつもりでしょうか?
(山内)
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A:アフガニスタンのカルザイ大統領は今月初め、パキスタンのライバル・インドを訪問し、パキスタンをけん制する動きに出ました。アフガニスタンとインドは戦略的パートナーシップを結び、テロ対策などの安全保障面の協力を強めることで合意しました。インドとの関係を格上げすることでパキスタンに圧力をかける狙いがあると見られています。またカルザイ大統領はタリバンとの対話は当面行わず、和平についてタリバンとつながりのあるパキスタンへ政府に直接働きかけていく考えを明らかにしました。
▼アフガニスタン、カルザイ大統領ON
「我々はタリバンとは対話はしない。/同じ暴力という重荷を抱えているアフガニスタンとパキスタンが話し合うのが論理的だ」。
カルザイ大統領としてはパキスタン政府にタリバンへの影響力を行使するよう促すことで、こう着している和平の動きを打開する狙いがあると思います。
(吉井)
Q7:パキスタン政府が過激派との関係を断ちきれないのはなぜでしょうか?
(山内)
A:パキスタンにとって最も重要なことは、インドに対抗すると同時に、背後に隣接するアフガニスタンでの安全を確保することです。例えばアフガニスタンのカルザイ政権がパキスタンに対して敵対的な姿勢を取らないようにすること、またインドがアフガニスタンで復興開発などを通じて影響力を強めるのを阻止することが重要です。そのための切り札の1つが過激派のハッカーニ・ネットワークと関係を保つことです。彼らを通じて、アフガニスタンの和平協議に影響を与え、インドやアメリカの動きをけん制したいという思惑があります。またパキスタンでは反米感情が強い一方で、同じ民族の過激派を大きな脅威と見なさない傾向があります。特にハッカーニ・ネットワークはパキスタンではテロを行っていないこともあり、パキスタン政府は国境地帯にある彼らの拠点に対して軍事作戦は実施しないとしています。
(吉井)
Q8:パキスタンとアメリカなどとの対立は今後どんな影響があるでしょうか?
(山内)
A:アメリカ軍の撤退開始などアフガニスタン戦争の終結に向けた動きに大きな影響を与える恐れがあります。アメリカにとってテロとの戦いでパキスタンとの同盟関係を維持することは死活的に重要です。しかし、パキスタンに圧力をかけすぎれば国内の混乱を招きかねず、かけなければ過激派の取り締まりは実施されないままという大きなジレンマがあります。一方パキスタン政府にとっても、アメリカの圧力に屈すれば国民の反発を招きかねないだけに、今後も過激派との関係を断ち切ることはないという見方が有力です。同時にアメリカからの莫大な援助は重要で、パキスタンとしては対テロ作戦に全力を尽くすという姿勢をとり続けるものと見られます。パキスタンはアメリカ軍の撤退後の地政学的な情勢を考慮しながらこうした二股をかけたような戦略を取っているだけに、過激派に対する対応は今後も大きくは変わらないだろうと見られています。
