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「新型コロナ 感染拡大とどう向き合う」(視点・論点)

国際医療福祉大学 教授 和田 耕治 

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新型コロナウイルスのパンデミックから2年が過ぎる中で、ワクチンや薬なども手に入るようになりました。しかし、オミクロン株の出現により、現在のワクチンでは、時間が経つと効果が減弱することも分かりました。そのため、3回目だけでなく、4回目のワクチン接種をどうするかということも今年の内に考えなければならなくなっています。
今回は、新型コロナウイルスの今後の見通しと、求められる対策についてお話させていただきます。

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短期的には、オミクロン株のBA2系統という今年の1月から2月に流行していたオミクロン株よりもさらに広がりやすいウイルスが主流となります。年度の始まりや連休などで多くの人が集うような接触機会が増加することで今後も感染拡大はあると考えています。
60歳未満では感染しても重症化や死亡するリスクは、ワクチンを接種していたり、基礎疾患がなければ、デルタ株以前よりもかなり低くなりました。しかし、今後、社会で感染が広がることを容認して、感染する人が増加した際に課題になるのは、医療機関の中での感染の広がりです。例えば、骨折をした、出産をする、虫垂炎で手術が急に必要になる。こうしたことは若い方でも起こりえることです。そうした際に、入院や手術の前に検査をすると新型コロナウイルスに感染しているという人は、地域での感染拡大の中では増えます。
陽性と分かると、医療者は防護服を着て、医療行為を行う必要があり、そうした対応ができないということで、転院先を探すことにもなります。また、入院時には検査で陰性だとわかってもその後に発症した場合には、大部屋であれば他の方に感染が広がることがあります。医療を必要とする社会的にも弱い立場の方をどう守っていくのかということが当面課題になります。そのため、できる限り感染は抑えていくということが求められます。

中長期で考えると、いつかはわかりませんが、オミクロン株よりもさらに感染が広がりやすく、またワクチンによって獲得された免疫の効果がさらに下がるような変異株が出現することを想定しなければなりません。これまでの新型コロナウイルスの株に感染したとしても免疫が十分に獲得できず、感染しうるようなことがオミクロン株でも起きましたので、今後もそうした変異株がでるたびにパンデミックは起こりえます。
さらに、インフルエンザは2年にわたって日本で流行しませんでしたが世界の中には脈々と感染の鎖はつながっており、いずれ日本に入ってきた際には、特に子供たちの免疫が低下していますのでこれまでにない大きな流行を起こす可能性があります。中長期的には10年から40年周期であると言われる新型のインフルエンザの出現も忘れてはなりません。

では、今後に向けてどのように備えていけばいいのでしょうか。

 まずは、この2年間の対応について振り返りをすること、そして改善をすることです。 日本は、この20年間において、国際的な感染症からある意味守られてきました。2003年ごろ話題になったSARS(重症急性呼吸器症候群)も2012年以降話題になったMERS(中東呼吸器症候群)、2014年頃西アフリカで流行したエボラ出血熱、これらは国内では1例も報告されていません。幸いなことではありますが、これらの感染症で痛い目にあった近隣のアジアの国々ではその経験から教訓を得て、この20年間に様々な形での取組をしてきました。
 今こそ、感染症ならびに災害なども含めた健康を守る危機管理体制のあり方として国、都道府県、市町村がどう協力して被害を最少化できるのかについて具体的な取組が必要です。さらには、医療機関や企業、そして市民なども含めて、それぞれがどう対応し、協力するかといったことも含めていく必要があります。

国や自治体レベルでみると様々な意思決定やそれに基づく資金や資源の配分を行うのですが、いつ、誰が、どうやっても難しいことです。例えば、1人あたりに平等に配分するのか、それとも困っている人や格差を考慮して公正に配分するのか。また、限られたワクチンを最初に高齢者を優先するのか、子供を優先するのか。最後は政治の力で、決めなければなりませんが、私たちの間でもいろいろと考えて、時にはお互いに助け合うことも必要です。
2年間に経験したように、波によって社会へのインパクトが異なるなかで、柔軟で機動的な対応が必要であることがわかりました。個人の人材育成という点から、地域での組織や自治体が線、そしてさらには面として有機的な連携を普段からどう維持していくのかというそもそものあり方を含めて考えて実行しなければなりません。それを可能にして、進めるための法的な枠組みも必要です。

最後に、私たちの生活について考えます。
この2年間、リスクの高い場所や行動について、避けてくださいということで市民の皆様には生活において「引き算」をしていただくような行動制限を求めてきました。今後は、学校や幼稚園保育園、冠婚葬祭など、私たちの文化や生活の場に不可欠な場面については、足し算型として「こうしたらできる」、「これはしてよい」という情報発信が求められます。

足し算型の情報伝達は難しいので工夫が必要です。「こうしたらできる」には様々な条件が伴います。飲食であれば、体調確認、人数、時間、空気の換気などです。また場面の数も数え切れないほどあります。引き算型の情報伝達の方が、歯切れが良く、わかりやすいです。例えば、3密を避けてくださいといったメッセージです。一方で、足し算型は歯切れが悪く、文章が長くなりややわかりにくいです。

学校行事、冠婚葬祭、そしてこれまでも課題になっている高齢者施設などのお子さんやお孫さんとの面会などについては積極的に前向きな情報発信をしていく必要があります。特にこうした場面は感染リスクがそれほど高い場面ではなかったりします。昨年の後半、日本でも感染が少し落ち着いた時期がありました。そのとき、大人は飲み会や会食ができたのに、小学生は給食を黙食することしかできなかったり、施設に入所している高齢者が家族に会えなかったりしました。また、念のためということで行われている過剰な感染対策も継続されており、それは、やめてよいという発信も必要です。これからある入学式や授業参観なども保護者の参加者数を減らすという対策をしていることがありますが、気をつけながらですが、お子さんとの大事な時間を過ごせるようにしていただきたいです。

現場で対策を緩和したり、変えたりする際は、なにかと慎重になりがちです。なぜなら、責任をだれがとるのかが課題になるからです。高齢者施設でも気をつけて面会をしていても、感染する事例があれば担当者や施設が責められる。また、対策を緩和するとした際に反対する声は、顧客やサービスの受け手ではなく、むしろ内部の職員からだったりします。それは、決して悪意ではなく、心配や不安であったり、批判を恐れていたり、ということもあります。感染者が最近少し多い幼稚園や保育園や小学校などもこうした課題に直面しています。

 間違いをしないことは大事なことですが、その感染対策が、個人や組織での個別のまたは全体として本当に効果があるのか。目先の正しさのようなものにとらわれすぎて、なにか大切なことを失っていないかといった振り返りも必要です。リスクをゼロにすることを目指さないということも必要でしょう。本当に大事なことは、先延ばしにせず、できるようにしていく、足し算による社会活動の再開に向けた取組が今求められます。

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