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「オミクロン株の第6波を乗り越えるために」(視点・論点)

東邦大学 教授 舘田 一博 

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年明けからオミクロン株による感染拡大が全国でみられており、これまでの感染者数の最多を更新する状態が続いています。1月22日には全国の感染者数が5万人を超えたことが報じられました。この第6波はどこまで拡大するのか、いつまで続くのか、そして我々はどのように感染対策を続けていけばよいのか。今までに分かっているオミクロン株の特徴とともにお話ししてみたいと思います。

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 こちらがオミクロン株の重要な特徴です。
 海外での感染状況からもわかるように、この変異株は従来株、デルタ株に比べて大変高い感染性を有しています。また、感染してから発症するまでの期間、いわゆる潜伏期間は約3日、人から人に感染が広がる時間、世代時間も約2日と短いということが明らかとなっています。感染してから3日で発症、2日で次の人に感染を起こすということを繰り返す中で、今みられている爆発的な感染の増加が生じています。
 また、オミクロン株はウイルス表面のスパイク蛋白の変異により、ワクチンの効果に抵抗性を獲得しやすいことも重要です。このために、ワクチン接種から時間が経った人に感染を起こす、いわゆるブレイクスルー感染を起こしやすいことが特徴です。
ただ、幸いなことに、これまでの得られている成績からオミクロン株による感染症では重症化の頻度は低い、病原性は低いということが明らかになっています。
ただし、油断することはできません。爆発的な感染増加が続くと、医療現場だけでなく、社会機能にまで影響を与える可能性も出てきました。また幼児・小児における感染増加にも注意しなければなりません。

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 ご覧いただいているのは日本の状況です。
今まさに第6波の真っただ中にいる状況で、これまでで最多の感染者数が報告されています。ただ、これまでのところ死亡数の増加はみられてきていません。しかし、これから感染者数がさらに増加することが予想される中で、死亡数がどのように推移していくのかを注意深く見ていく必要があります。

 オミクロン株への置き換わりのスピードは早く、昨年12月に見られ出してから、今年の1月半ばにはほぼ全てが置き換わってしまったことが報告されています。

それでは、オミクロン株の病原性、重症化のリスクはどのようになっているのでしょうか。
アルファ株、デルタ株、オミクロン株における肺炎合併の頻度を比較したところ、全年代ではアルファ株で1.14、デルタ株で0.73であったものが、オミクロン株では0.12と肺炎合併の頻度が低下していることが分かります。この結果は、オミクロン株では重症化リスクが低くなっているということ示します。
しかし、高齢者や免疫不全、特にワクチン接種を受けていない人においては、感染者数の爆発的な増加が起きると、一定数の重症例が見られるようになることに注意しておかなければなりません。

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この図では、オミクロン株感染で引き起こされる医療逼迫と社会機能麻痺の流れをお示ししています。今、日本でみられているような爆発的な感染者数の増加が続くと、左にありますように、医療現場において病床確保の問題、医療従事者の欠勤、また一般医療体制への負荷の増大などにより医療の逼迫が進行します。一方、右側にありますように、社会全体でみても、エッセンシャルワーカーにおける感染者あるいは濃厚接触者が増加することにより、交通、物流などのインフラが障害を受け、社会不安が増幅することになります。
そして、これらが持続することにより、最終的には医療崩壊、社会機能不全となってしまいます。如何にして、このような事態を起こさないで第6波を乗り越えられるかが、重要な課題となっています。

 感染を抑制するための対策としては、3回目のワクチン接種、いわゆるブースター接種が重要です。国は当初、原則、2回目の接種から8か月を経過した人に3回目接種を進めるという方針でしたが、現在では前倒し接種が進んでいます。
準備が出来ている自治体では、8か月から7か月、さらに6ヵ月というように前倒しが進んでいます。自治体の混乱が生じないよう、6ヵ月を経過した人、特に高齢者や免疫不全などの重症化リスクの高い人へ3回目接種を速やかに進めていくことが重要です。

 そしてオミクロン株のもう一つの注意点は、小児における感染者数の増加がみられる点です。欧米ではすでにその傾向が顕著になっています。ほとんどの小児感染例は軽症ですが、基礎疾患を持つような子供においては重症化リスクが高まるということに注意しなければなりません。

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オミクロン株による第6波を乗り越えるために、私たちが注意しなければいけないポイントをまとめてみました。
大事なことは、オミクロン株であっても、感染のリスク要因はこれまでのウイルスと変わりありません。大人数で集まる機会、マスク無し、おしゃべり、長時間などが重要なリスクとなります。
オミクロン株では爆発的な感染者数の増加がみられるので、その感染を抑えるためには、今まで以上に、メリハリをつけた行動抑制、特に社会経済への副作用を最小限にする対策が必要になってきます。
 食事や飲酒は依然として重要なリスクです。出来るだけそのリスクを減少させるためには、少人数で、いつも会っている仲間と、短時間、第三者認証を受けているお店で、というように一人一人がリスクを減少させることがカギとなります。
また、3回目のワクチン接種は重要です。これを行うことにより、オミクロン株の感染を抑制できることが報告されています。
さらに、爆発的な感染者の増加がみられる中で、お年寄りや免疫不全などの重症化しやすい人をどのように守っていくのかが重要になります。限られた医療資源をいかに効果的に活用していくかを考えていかなければなりません。

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 リスク減少を最大限に、社会経済への副作用を最小限に、という視点のシェーマをお示ししました。
社会全体の人の動きを人流として考えることが出来ます。人流を止めることにより感染が抑えられることは間違いありません。ただしその場合、社会経済への副作用は甚大となります。家庭から職場や学校、あるいは帰省や旅行による人流の感染リスクは限定的です。ただし、そこからさらにリスクの高い場面や場所にいけば、感染を抑えることが難しくなります。人流全体を止めるという副作用の強い対策は最小限に、よりリスクの高い場所への対策、例えば高リスクの場における人数制限やマスク着用、換気の徹底などを行うことにより、より効果的な、より副作用の少ない対策がとれるものと思われます。

第6波はいつ頃まで続くのでしょうか。残念ながら、明確な答えはありません。しかし、1月20日のアドバイザリーボードで、「早ければ2週間前後にはピークを迎えるのではないか」、という推定も出されました。爆発的なオミクロン株の感染者数の増加の中で、私たちはこれまでの基本的な感染対策の徹底と継続を行っていくことが重要です。
また、一人一人がリスクの高い行動を控えることが必要です。
オミクロン株による感染症は、リスク因子をもっていない人にとっては、そのほとんどが“かぜ”様の症状で回復することが明らかになっています。
そのような中で、どのようにして重症化リスクの高い人達を守っていくのか、その特徴を理解した感染対策を考えていくことが重要になります。

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