NHK 解説委員室

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「100歳 ピアノと共に」(視点・論点)

ピアニスト 室井 摩耶子

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♪~「エリーゼのために」演奏

その時はまだ戦争でしたから、いくつかな、やっぱり二十歳ぐらいじゃないかしら。

Q  戦争中でみんな音楽聞くことができない状態でしたよね

まあね。だけどね、できない状態っていうんであきらめちゃってる人とそれから音楽聞きたいっていう人と両方あったんですけどね、その中でまああたしなんかは自分が専門家ですからだからその中でそういう風にいろんなことを考え出して弾いてみた。そうするとね、人が感激してくれるものっていうのはね、やっぱし本物なんですね。だから私は本物の味とよく言うんですけど、ものごとの本物というのかな、ことばの味のすごさ、そういうものがだんだんだんだんすごくなってくるっていうのはよくわかりますけど、時間かかりますねえ。

♪~「エリーゼのために」演奏

よくよく考えたらねえ、私にはピアノっていう音楽っていうものがあるわけでしょう。だけどなかなか音楽を百歳ぐらいまでちゃんとやってるという人は少ないんですよね。
とにかくピアノに夢中になってるというだけが健康なんですよね。それで勝手に、勝手にじゃおかしいけど、一日一日が重なってきて100歳になったというそれだけの感じです。

ベートーベンがここで何を言ってんだろう、何が言いたいんだろうなあ、なんてことだとか、モーツァルトだとかね、そんな連中と会話をして毎日毎日過ごしてました。

Q  モーツァルトとかベートーベンとどうやって会話するんですか

結局、音楽って何っていいますとね、音で紡ぎあげた詩なんですね。ですから音楽語と私は言うんですけど、その音楽語をしきりに探っていると、なるほどこういうことも言いたかったんだろうな、こんな美しい音の扱いをしてるな、考えられないぐらいすごいなあなんて、そんなことばっかり思ってました。
まあはっきり言えばピアノが物語っている、物語っているその物語がすごいんですよ。こういう風に音と音を組み合わせると、こういう美しさが出てくるなんて言うのがね、まず最近になって出てくるのね。そうすると私は何を考えて弾いてたんだろうなんて思ったりします。
やっぱり音楽ですからね、音で聞かなきゃわかんないと思うんでうけどね。

♪~「エリーゼのために」演奏

良く皆さんも経験なさると思うんですけどね、おひさまがこう窓のカーテンをねパーッと明るくすることあるでしょう。

♪~「エリーゼのために」演奏

ここでパーッと光が入りました、あ、お日様が出たんだな。
(音楽が)お話ししてますでしょ。そういう美しさがあるんだよ、そういう詩なんだよということをね、聞かせるととても子供喜ぶのね。で子どもというのは、大人よりもそういうことに非常に敏感に反応してくれるわけです。
ここから違う風景になるのね。

♪~「エリーゼのために」演奏

こういうお話をね、その音から引き出していく、引き出していくと同時にね、これを人にお聞かせしなくちゃいけない。聞こうという人が待ってるわけね。
聞いている方々がね、「きれいでしたよとっても素敵でしたよ」っておっしゃってくださって、あとで電話がかかってきて、「電車の中に乗っててもまだあの音が響いてんですよ、うち帰ってもまだ響いてんですよ」て言われて、私はそうなるとそれこそ、あー素敵だと思うわけね。というのがピアニストのやることなんですよ。

(私が)音楽をやる、音楽を聴く人は感激する素敵だなと思って聴くでしょ。そうするととてもいい気持ち、いい気持ちって言ったら言葉がおかしいですけど本当に感激するのね。そうするともうコロナが邪魔してることなんてね、すっかり忘れてるわけよ。それでコロナにいうのね。
「あのねえコロナさん、あなたが邪魔したいとおもうならやったっていいわよ、だけどね、ベートーベンがここで表現して私たちにくれたものっていうのはそんなものとは全然違うのよ。いてもいいわよ。あなたたち勝手にやりたいことやりなさい。邪魔したいと思うならしてみたらいいわ。だけどねベートーベンの言葉っていうのはそんなことじゃ邪魔されないから、私は平気。」なんてこと言ってるわけですよ。

♪~「エリーゼのために」演奏

今日一日いい気分でいてください。

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